知的障害の初診日・認定日について

障害年金の初診日と認定日にはいくつかのルールがあります。


その中のひとつに「知的障害の初診日は出生日であり、認定日は20歳の成人時である。」というルールがあります(以前のブログでも簡単に紹介させていただいています)。


しかし、知的障害の診断名と知能検査の結果さえあれば、直ちに上記のような運用になるわけではないというケースを紹介します。


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問題になったケースは、50歳を過ぎてから知的障害での障害年金の申請にチャレンジすることになったケースでした。


この方は、19歳の頃に初めて精神的な症状を訴えて病院に行きました。


しかし、このときは知能検査を受けたという記録はなく、傷病名も「統合失調症」との診断を受けていました。


また、このときは1年足らずで通院を辞めていました。


もしこの統合失調症の傷病名で申請すると、遡及請求をすることは不可能です(統合失調症で遡及請求をするためには初診日の1年半後の状態が記載された診断書が必要になるのですが、今回のケースではその頃には通院をすでに辞めているため)。


一方で、この依頼者のケースでは、幼少期のエピソードなどから、先天的な知的障害の可能性が疑われました。


もし知的障害の傷病名で申請できれば、上記のとおり、初診日は出生日、認定日は20歳の成人時になり、その頃ならまだ通院していたので、当時の診断書を作成してもらうことで遡及請求ができる余地がありました。そして、もしこれが認められれば遡って400万円近くを受給できる可能性がありました。


そこで、50歳を過ぎてからではありますが知能検査を実施したところ、知能指数の低下が確認され、重度の知的障害と診断されました。


主治医の協力もあり、障害年金の診断書も知的障害の傷病名で書いてもらうことができ、さらに20歳の頃の状態を記載した診断書も作成してもらうことができました。


これで、遡及請求のための書類は整ったはず・・・でした。


しかし、実際に申請を出してみると、年金機構から待ったがかかりました。


年金機構の判断は「知的障害での遡及請求は認められない」というもので、理由を要約すると「検査で判明した知能低下は統合失調症の影響であり、先天的な知的障害があったとは認められない。したがって、初診日は統合失調症で初めて病院に行った日である。」というものでした。


確かに、医学的には、統合失調症患者の多くは知能指数の低下が認められるという研究結果もあるようです。


さらにこの依頼者の場合、上記のとおり知能検査を受けたのは50歳を超えてからでした。


そのため、年金機構が「この知能検査の結果だけでは生まれつき知的障害があったという証明にはならない」と判断したのも、理解できなくはありません。


このケースのように、年金機構の審査は実質的な内容にまで及んでおり、その審査結果によっては、いわゆる教科書的なルールとは違った判断が下ることがあります。


さて、このまま年金機構の判断に従うと、遡及請求は不可能となり、最大400万円近くを諦めなければいけません。


年金機構が判断したのだからもう仕方ないのではと思ってしまうかもしれません。しかし、ある意味ではここからが弁護士の腕の見せ所といえます。


長くなりましたので、次回のブログにて私がこの事態にどう対応したのか、その結果はどうだったのかをご紹介したいと思います。


医師が障害年金の診断書を書いてくれない

障害年金の申請のためには医師が作成する診断書が必要になります。


逆に言えば、診断書を入手できなければ障害年金の申請はできないことになります。


しかし、医師に診断書の作成をお願いしたのに、診断書を書いてくれないというケースがあります。相談に乗っていると、いくつかのパターンがあるように思います。


①「症状が軽いので書けない」といわれた


本来、症状が軽いのか重いのか、年金を受給できるかできないかの判断は、最終的には年金事務所が行うことであり、医師が診断書の作成段階で門前払いにする理由にはなりません。


しかし、医師からこのように言われてしまって申請をあきらめてしまうという方は少なくないようです。


②「当時の主治医が退職していないから書けない」といわれた


遡及請求のために過去の状態の診断書を書いてもらいたい場合によく問題となります。


多くの場合は、もし病院にカルテが残っているならそのカルテの記載に基づいて現在在籍している医師に書いてもらいますが、後述する医師法上の義務は実際に診察した先生には及ばないので法律上強制することができません。


また、当時のカルテの内容が不十分だったりすると。「カルテに書いていないことは書けない」と断られてしまうおそれがあります。


③「専門医ではないので書けない」といわれた


大学病院や総合病院で検査して病気が発覚したが、治療自体は近所の町医者で治療している場合などに出くわすケースです。


そう言われたのでいざ大病院の先生にお願いしたら、「普段治療している町医者の先生の方がよく状態を知っているはずだからそっちに書いてもらうように」とたらいまわしにされてしまうパターンもあります・・・


④理由はよくわからないけど書いてくれない


身も蓋もない話ですが、実際相談を受けているとこういうケースは多かったりします。


実際の理由はわかりませんが、障害年金の診断書は記載しないといけない内容も多く、経験の少ない先生だとどう書いていいかわからないとか、多忙な先生だと書く時間がない(基本的に日中は診察があるので、ほとんどの医師は夜に残業して書いています)とか、診断書の内容が認定に大きく影響してくるので、受給できなかった場合にクレームが来るのを避けたい、といった理由で書きたくないという先生もいるのではないかと勝手に想像しています。


診断書の作成に関して法律はどうなっているかというと、医師法19条2項は、患者から診断書の交付を求められた場合は正当な理由なく拒むことはできないとされています。


とはいっても、弁護士が声高に「作成義務があるんだ!」と法律を盾にしてなんとか書いてもらったとしても、形式的な体裁だけ整えられた診断書が出来上がってくるだけで、肝心の内容はあまりいい出来でないということは少なくありません。


普段の問診では伝えきれていない症状や日常生活の支障をしっかりとお伝えして、医師に理解してもらうことが大事だと考えています。


そのためには、症状等をまとめたメモなどを用意してお渡しするなどの作戦が考えられます。


また、診断書のポイントがよくわかっていない医師もいるので、その場合は弁護士から何が重要なのかを説明したりすることもあります(押しつけがましい説明は不快に思う先生もいるので、誤解を招かないように慎重かつ丁寧な対応が必要です)。


弁護士法人心の障害年金申請サポートは診断書の作成段階からサポートさせていただくことも可能なので、もし診断書の作成を断られてしまっても、諦めないでまずはご相談いただければと思います。


初診日が未成年の頃の場合の障害年金申請

障害年金の申請において、初診日が未成年の頃だった場合は、成人(20歳)以降に初診日があった場合と比べて、いくつか異なる点があり、申請の際には注意が必要です。


まず、初診日が未成年の頃の場合は、年金の納付要件は不要になります。


これは、そもそも未成年の場合は原則として年金の加入資格がないからです。


次に、原則として障害基礎年金での申請となります。


障害基礎年金の場合、受給対象になるのは1級・2級相当の障害に限定されるため、受給のためには比較的重い症状が求められることになります。


ただし、未成年のときから就労していて会社の厚生年金に加入しており、それ以降に初診日がある場合は障害厚生年金での申請が可能です。


また、初診日が未成年の場合、一定の収入があると、障害年金の支給額が半額になったり停止されたりする場合があります。


障害認定日についても、原則は初診日から1年半後は認定日になりますが、1年半経過時点においてもまだ20歳に達していない場合は、20歳になった時が障害認定日になります。


初診日が未成年の頃の場合は、年金の納付要件が免除される反面、支給条件の関係等で不利になることがあります。


一方で、成人以降が初診日とされてしまうとそもそも年金の納付要件を満たすことができず障害年金を受給できない場合に、未成年の頃が初診日であると証明することで、納付要件を免除されたおかげで救済されるというケースもあります。


たとえば、成人以降に受診して精神の障害が発覚し、受診時点では納付要件を満たしていなかったケースで、詳しい検査の結果、知的障害もあることが発覚し、未成年の障害であるとして障害年金を受給することができたケースなどがあります(※知的障害は、受診が20歳以降であっても、例外的に出生時が初診日として取り扱われます)。


また、支給基準とは別の問題として、成人後しばらく経ってから障害年金を申請しようと思ったら、初診日が未成年の頃だったため、昔過ぎて資料が揃えられなくて困っているという話もよく聞きます。

未成年の頃からの障害をお持ちの方は申請の際に難しい問題が生じることがあるので、申請前に弁護士にご相談いただくとよいでしょう。


生活保護と障害年金

病気やケガで仕事ができなくなり生活保護を受けているという方から、障害年金の申請について相談を受けることがあります。


生活保護費と障害年金は、両方を同時に満額受け取ることはできません。



たとえば、生活保護受給額が月13万円、障害年金受給額が10万円だとすると、最終的にお手元に残る金額は13万円+10万円=23万円ではありません。



この場合は、障害年金からは10万円、生活保護からは13万円-10万円=3万円もらえる計算になり、合計でもらえる金額は13万円と変わらないことになります。



ただし、障害年金に該当する場合は生活保護の障害者加算がもらえるため、住んでいる地域に応じて1~2万円程度加算されるメリットがあります。



生活保護の場合、悩ましいのが障害年金申請を代行させていただく際の弁護士費用についてです。


当法人の場合、障害年金の申請代行は成功報酬制で引き受けさせていただくことが多く、通常は数か月分が初回入金分としてまとめて支給されるので、そこからお支払いをしていただくことを想定しています。



しかしながら、生活保護の場合、この初回入金分は収入扱いとなるため原則として市町村に返還しなければならず、お手元に残すことができません。



ただ、市町村によりけりですが、障害年金を申請するための弁護士費用は収入を得るための必要経費であったという理屈で、弁護士費用相当額の返還を免除してくれる場合があります。



たとえば、初回入金分が30万円、弁護士費用が15万円の場合ですと、弁護士費用を払った後の30万円-15万円=15万円分だけ市町村に返還すればよいということになります。



この場合は、弁護士費用は事実上市町村が負担するような形となり、依頼者の負担はゼロということになり大変助かります。



医師でも時々間違うことがある、という話

ひとつ前のブログで、人工関節は(例外はあるが)原則として障害年金3級が認められるという話題に触れました。


障害年金を扱う弁護士からすると、初歩的な知識といえるでしょう。


一方で、人工関節の置換手術を受けた方から「医師から障害年金の対象にならないと言われたが本当か?」という相談を結構な頻度で受けることがあります。


結論から言うと、この医師の説明は間違っています。ちゃんと対象になります。


間違っているのですが、では「こんな初歩的なことも医師は知らないのか?」と苦言を呈すべきかというと、実はそうもいかない経緯があります。


障害年金に類する障害者福祉制度の代表的なものとして、障害者手帳制度があります。


この障害者手帳制度においては、2014年4月の認定基準改正により、人工関節の置換手術を受けただけでは障害者手帳の対象にはならない運用に変わりました。


従来認定されていたものが認定されなくなるというなかなかインパクトのある改正内容であったため、医師が患者に間違った案内をしないよう、医師会でも周知が徹底されたようです。


その結果、おそらく多くの医師に「人工関節は障害には該当しない」という認識が強く刷り込まれたものと推測されます。


しかし、この運用変更はあくまで障害者手帳だけのもので、障害年金においては依然として認定対象のまま現在に至っています。


つまり、「人工関節は障害者手帳の対象にはならないが、障害年金の対象にはなる」が正しい認識というわけです(ややこしいですよね・・・)。


障害年金や障害者手帳の等級認定基準は度々更新されており、その結果、障害年金と手帳との間で認定基準に差異が生じたり、逆に両者の基準が統一されたりする事態が起こっています。


ブログ冒頭のような医師による制度への誤解のために、てっきり自分は障害年金の基準に該当しないと思って申請を諦めてしまった方もおそらくいるのではないかと思われます。


とはいえ、すべての医師にこういった改正・変更を追いかけ続けるよう求めるのは、実際問題なかなか酷な話です。その時間があるなら自身の医学知識や治療技術の向上に時間を使いたいというのが医師の本音でしょう。


だからこそ、こういった相談は医師だけでなく弁護士等の専門家にご相談いただくことが大切です。


私は障害年金を取り扱う弁護士である以上、こういった基準変更は熟知していなければいけませんので、日々勉強と情報収集に努めています。


障害年金の等級の見込みなどについては、医師の見解も大事ではありますが弁護士の方が正確に回答できるという場合も少なくないので、まずはお気軽に相談いただければと思います。


障害年金の認定基準には多くの原則と例外がある

障害年金の受給資格を得るためには、一定程度の障害の状態が必要となります。


そのため、障害の状態が軽いか重いかを判断するうえで、日常生活の支障や病院での検査結果の数値などは重要な要素となっており、診断書に正確に反映してもらわないと、適切な認定を受けることができないという難しさがあります。


一方で、いくつかの類型においては、そういった障害の状態の軽重があまり問題にならないものがあります。


具体例として、ペースメーカーの埋め込み手術や、人工関節・人工骨頭の置換術を行っている場合がそれに該当します。


これらの類型では、現実の日常生活への支障や関節の可動域制限の有無は不問で、上記のような手術を行っているのかどうかで等級を判断されることになります。


ネットで「障害年金 人工関節」などと検索していただくと、原則として3級が受給されると説明しているホームページも多いです。


そのため、こういった類型では特に専門家に相談せずに自分で手続を進めても簡単に受給できるのではないかと思われる方もいらっしゃるようです。


ただし、これらにも落とし穴はあります。あくまで「原則として」受給できるのであって、いくつかの例外があります。


その例外のひとつを紹介します。肘関節に人工骨頭を入れた場合です。


肘関節は上腕骨と尺骨、橈骨の組み合わせでできています。


このうち、上腕骨もしくは尺骨を人工骨頭に置換した場合は問題なく3級が受給できます。


一方で、橈骨を人工骨頭に置換した場合は、3級の対象とならないという運用とされています。


この運用は日本年金機構もホームページにも(ひっそりと)告知されています。


https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/01.pdf


ただ、多くのホームページでは書略されている内容で、もしかしたらこの運用を知らないという社労士等もいるのではないかと思います。


このような思わぬ落とし穴が多いので、障害年金に関しては本当に詳しい弁護士や社労士に相談することが大事です。


障害年金の受給資格を得るための「納付要件」とは?


障害年金を受給するためには一定の要件があり、そのうちのひとつに、今までちゃんと年金を納めていたかどうかという「納付要件」がございます。




まず、①初診日の前々月からさかのぼって1年間年金を納めているなら、納付要件はクリアとなります。



たとえば、令和5年1月に初めて病院に行ったという場合には、その前々月である令和4年11月からさかのぼって令和3年12月までの期間の年金を納めている必要があります。



次に、仮に直近1年間で年金を納めていない期間があった場合でも、②年金加入から初診日の前々月までを通算して3分の2以上年金を納めているのであれば、納付要件はクリアとなります。



具体的には、令和元年1月に成人して年金の加入が始まり、令和5年1月に初めて病院に行ったという場合には、令和元年1月から令和4年11月までの47カ月間を通じて3分の2以上の月の年金を納めていれば大丈夫ということになります。



注意が必要なのが、この納付要件をクリアするためには、初診日までに年金を納めておく必要があり、初診日以降に追納したとしても受給資格は得られないということです。



たとえば、初診日の令和5年1月時点では年金保険料の未納があり、令和5年2月に未納していた保険料を追納した場合は、条件クリアとはならないということになります。



イメージとしては、ガンになった後にガン保険に加入して保険料を納めても、加入前に発症したガンに対して保険が下りないのと似ているかもしれません。



上記の納付要件との関係で、病院に行くタイミング等がわずかに遅れたために障害年金が受給できないというケースもあります。



たとえば、「1年間勤務した職場でのパワハラのため退職、しばらく自宅で休養したが回復せず、3カ月ほど経って初めて病院に受診、うつ病と診断された。退職後の3カ月は収入もないため年金保険料を納めていなかった・・・」などというのはよくあるケースかと思いますが、この場合は直近1年間の納付要件をクリアできないことになってしまいます。



しかし、上記のケースでもし退職してすぐに病院を受診していた場合には、1年間の保険料納付という要件はクリアとなり、問題なく受給資格を得られるはずでした。



さらにいうと、在職中に受診していれば、障害厚生年金の対象となり、手厚い保障を受けられていた可能性もあります。



障害年金の申請にあたってはこのような落とし穴も多く、事前に障害年金を扱う弁護士にご相談いただければと思います。


障害年金における「社会的治癒」とは


障害年金の申請を考えている方の中には、過去に病気を発症して通院していたがいつのまにか通院しなくなり、しばらく経ってからまた症状が悪化して通院を再開したという人が少なからずいらっしゃいます。



障害年金の場合、初めて病院に通ったのがいつなのか(初診日)が大事になりますが、この場合、初診日はいつになるでしょうか。



最初に通院した日でしょうか。それとも通院を再開した日でしょうか。



原則としては、医学的な因果関係があるならばそれは一連一体の病気であり、最初の通院が初診日となります。



しかしながら、医学的には一連一体の病気(=医学的には治癒していない)であっても、一定の条件下においては、一度社会的に治癒したものと扱い、両者を別々の病気として扱う場合があります。



これを社会的治癒といいます。



社会的治癒が認められる条件は、明確に定まっているわけではありませんが、



・長期間治療行為(通院や服薬など)を行っていないこと



・通院の空白期間中、社会復帰(就労など)を果たしていること



などの事情を踏まえて総合的に判断するとされています。



どの程度の期間通院をしていなければ社会的治癒に該当するのかは、傷病の性質などに応じてケースバイケースになります。



また、単に経済的理由であったりとか病院が嫌いで通院していないようなケースですと、社会的治癒は認められません。



この社会的治癒が認められると、通院を再開した時が初診日となります。



そのため、たとえば最初の通院を初診日とされてしまうと納付要件を満たさず申請できないケースとか、もしくは昔過ぎて記録が残っておらず初診の証明が不可能であるようなケースで、初回的治癒を主張することで救済されることがあります。



一方、社会的治癒の判断は最終的には日本年金機構側で行うため、こちらが望んでいないのに社会的治癒であると判断されることもあるので注意が必要です。



その場合、たとえば通院再開が最近でまだ1年6か月を経過していないから申請を見合わせないといけなくなるなどの不都合が生じることもあります。



社会的治癒の可否は専門的な判断が必要になりますので、過去に通院の空白期間があるような方は障害年金に詳しい弁護士の相談してみてはいかがでしょうか。

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初診日の病院にカルテが残っていない場合の対処法


障害年金の申請に際しては、申請しようとしている病気やケガの初診日を必ず明らかにしないといけません。



そのため、原則として初診でかかった病院に「受診状況証明書」という書類を作成していただく必要があります。



それにもかかわらず、初診日がずっと昔で、すでにカルテを破棄していて作成不能な場合や、病院そのものが閉院してしまっているという場合があります。その結果、障害年金の請求を諦めてしまう人もいるようです。



しかし、このような状況であっても、まだ障害年金の請求を諦めるのははやいです。



初診の病院で受診状況証明書を作成できない場合でも、別の方法で初診日を明らかにすることができれば、障害年金の申請は可能です。



初診の証明の代替手段としては、次の病院のカルテを用いるという方法が考えられます。



たとえば、次の病院に初診の病院からの紹介状が残っていたりとか、カルテに「〇年△月頃、××病院受診、その後当院に転院」などと記録されている場合には、初診の証明ができる可能性があります。



また、お手元に初診の病院の診察券や領収書、当時の診断書が残っているなら、その内容次第で初診の証明に使える場合があります。



そのほか、過去に障害者手帳の申請をしていた場合、都道府県や市町村にそのとき提出した診断書が残っていれば、開示請求を行ってこれを入手することで証拠として使える場合があります。



また、閉院した病院であっても、5年間は管理責任者がカルテを保管する義務を負っています。そのため、当時の院長などが別の病院に移っているなど消息が追える場合は、閉院していてもカルテを入手できる可能性があります。



弁護士であれば、弁護士会照会制度などの弁護士特有の権限を駆使して、一般の方や社労士ができない方法で証拠資料の収集を行うことも可能です。



初診日の証明でつまづいてしまったときは、弁護士に相談していただければ解決方法が見つかるもしれません。


精神の障害で、障害年金の対象となる病名・ならない病名


ひと言で「精神障害」といっても色々な病名があります。


その病名によって、障害年金の対象となるもの・ならないものがあることはご存じでしょうか。


精神の障害が障害年金の対象となるかならないかは、原則として、「ICD-10」という病気の診断カテゴリーの分類によって区別することとされています。


たとえば、うつ病や双極性障害、統合失調症、発達障害などは、障害年金の対象となります。


一方、適応障害やパニック障害、不安障害、人格障害などは、原則として障害年金の対象にならないとされています。


実際のところ、目に見えない精神の障害をうつ病などと診断するのか適応障害などと診断するのか、その区別は必ずしも明確ではないこともあります。


とはいえ、障害年金の審査においては、どちらの病名がつくか次第で、障害年金の対象となるのかならないのか、まさに天国と地獄のように結果が分かれてしまうのが難しいところです。


もっとも、対象となる病名で診断されていなかったからといって、障害年金の申請をすぐ諦めるべきではありません。


たとえば、当初は適応障害などと診断されていたが、病気が悪化し、うつ病や統合失調症と診断されるに足りる状態に至っている場合もあります。


その場合は、医師があらためて障害年金の対象疾患として診断書を書いてくれるのであれば問題はありません。


また、診断名自体は対象とならない病名であったとしても、病気の実態からして、うつなどの精神病の症状を示している場合には、例外的に障害年金の対象となる可能性があります。


ただし、障害年金は医師の診断書を中心とした書面審査が原則になるので、診断名や病気の実態をしっかりと診断書に反映してもらう必要があります。


医師は必ずしも障害年金の制度や審査基準などを熟知しているわけではありません。


そのため、患者本人や代理人弁護士から適切に働きかけをしなければ、きちんとした診断書を作成いただけないことがあります。


弁護士法人心では、診断書の作成段階からアドバイス・サポートを行っております。 自分の病気が対象になるのかどうかもわからないという段階であっても、障害年金の申請を考えている方はまずはお気軽にご相談いただければと思います。

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障害年金の遡及請求


障害年金は、原則として初診日から1年6か月後(「認定日」といいます。)に支給申請することができるようになります。



もっとも、障害年金の制度をそもそも知らなかったり、その当時は体調が悪くて身動きが取れないなど、障害認定日にすぐ申請できないことが少なくありません。



私が今まで対応してきた障害年金のご相談も、初診から1年6か月以上経ってから申請したいというケースが半分以上という印象です。



このようなケースでも、遡及請求という方法を使えば、過去にさかのぼって年金を請求するよう請求することができます。



遡及請求が認められれば、最大で過去5年間の障害年金をまとめて支給することができます。



一度に300万円以上支給されることも多くあります。



ただし、遡及請求を行う上でハードルになるのが、初診から1年6か月後時点の診断書を入手することです。



当時通院した病院にカルテ等の記録が残っていれば、その記録に基づいて書いてもらえる可能性があります。



しかし、カルテの保管期間は法律で5年間とされており、時間が経ちすぎているとカルテが破棄されてしまっているおそれがあります。



また、カルテが残っていても、その記載が必ずしも完璧とは限りません。



障害年金は専用の診断書を書いてもらう必要があり、記載事項は多岐にわたります。



医師としては、治療に必要な範囲でカルテを残すのであって、障害年金の診断書を書くために記録を残すのではありません。



そのため、診断書に必要な記載が漏れており、このような場合には医師としては「記録にない事項は書けない」と断れてしまうおそれがあります。



また、遡及請求の制度上の問題点として、あくまで認定日時点の症状で判断するので、認定日時点だとまだ症状は軽かったが、その後に悪化したようなケースでは、遡及請求は認められません。



遡及請求は過去の資料が必須であり、手続き自体も難しいため、弁護士等の専門家のサポートがないとなかなかうまく進められないケースが少なくありません。



長い間障害に苦しんでいるという方は、悩まず早めに弁護士に相談することをおすすめします。


働いていたら障害年金は受給できない?

障害年金のご質問・ご相談で多いものとして、「自分は働いているけど、障害年金を受給することはできるのか?」というものがあります。

日本年金機構のホームページを見ると、障害年金の認定基準について以下のような記載があります。

障害の程度1級
他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできないほどの障害の状態です。身のまわりのことはかろうじてできるものの、それ以上の活動はできない方(または行うことを制限されている方)、入院や在宅介護を必要とし、活動の範囲がベッドの周辺に限られるような方が、1級に相当します。

障害の程度2級
必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても、日常生活は極めて困難で、労働によって収入を得ることができないほどの障害です。例えば、家庭内で軽食をつくるなどの軽い活動はできても、それ以上重い活動はできない方(または行うことを制限されている方)、入院や在宅で、活動の範囲が病院内・家屋内に限られるような方が2級に相当します。

障害の程度3級
労働が著しい制限を受ける、または、労働に著しい制限を加えることを必要とするような状態です。日常生活にはほとんど支障はないが、労働については制限がある方が3級に相当します。

(以上、日本年金機構のホームページより)

これだけ見ると、一番症状が軽いとされる3級でも、「労働が著しい制限を受ける」状態でないといけないように読めます。

そのため、「働いていると障害年金は受給できない」と思ってあきらめてしまう方が少なくないようです。

もっとも、実際は、障害年金は働いているからと言って必ずしも受給できなくなるとは限りません。

たとえば、うつ病や双極性障害といった精神の障害では、「労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを十分確認したうえで日常生活を判断する」ものとされています。

ただし、障害年金は書面審査が原則であるため、診断書や病歴・就労状況等申立書に上記の就労状況がきちんと言及されていないと、症状が過小評価されてしまうおそれがあります。

こういったケースでは、障害年金申請の前に、診断書や病歴・就労状況等申立書等に不備がないか、障害年金に精通する弁護士に相談することをおすすめします。

障害年金の請求は1年6か月待たないといけないのか


障害年金の請求をするためには、原則として初診の日から1年6か月の経過を待つ必要があります。



ただし、症状や治療の内容によっては、1年6か月を待たずに請求することが可能な場合があります。



たとえば、事故で手足を切断することになってしまった場合などは、手術を行った時点で、もうそこから1年6か月経とうが手足が生えてくるということはあり得ないため、その時点から障害年金を請求することができます。



同様に、人口関節や心臓にペースメーカーを入れた場合なども、手術を行った時点から請求することが可能です。



また、脳梗塞・脳出血によって身体マヒが残るなど身体の機能障害が残ってしまった場合は、初診から6か月経過し、かつ主治医がこれ以上改善の見込みが乏しい(症状固定)と判断した場合は、その時点から請求することができます。



この他にもいくつかの例外があります。



このような認定日の例外は、遡及請求(障害年金を過去にさかのぼって請求すること)を行う際にも重要になってくることがあります。



遡及請求の場合には認定日の診断書を過去の記録に基づいて書いてもらう必要にありますが、たとえば、初診から1年6か月が経つ前に人工関節の手術をして、医師から「もうこれ以上はリハビリをしても良くならないから」といわれて通院をやめてしまった場合に、「1年6か月の時点では通院していないから当時の診断書を書いてもらうことはできない」と判断して遡及請求を諦めてしまう方がいらっしゃいました。



この場合は、人工関節の手術をした日の病状を診断書に書いてもらえれば、問題なく遡及請求をすることができます。



実は、診断書を作成する医師も、このような例外があることをよく理解していないことが少なくありません。



そのため、患者に間違った案内をして請求の機会を逃してしまったり、診断書が書ける時期ではないと誤解しているため、患者からの作成依頼を拒否されてしまうことがあったりします(医師も悪気があってやっているわけではなく、本当に知らなくて間違った対応をしていることがほとんどです)。



そのようなケースでは、弁護士が病院との間に入り、制度の内容を説明することで診断書を作成してもらえることも少なくありません(複雑な制度の話なので、患者が問診のときに説明してもうまく伝わらなかったり、医師が聞く耳を持ってくれないということが結構あります。。。)。



障害年金の請求は専門的な内容が多いので、手続を進める際は、弁護士にご依頼いただくことが確実かつスムーズです。


障害年金等級の併合認定

弁護士の伊藤です。


今回は障害年金の併合認定について,少しお話したいと思います。


すでに障害を抱えている場合に,別の障害も発症してしまうというケースがあります。


たとえば,うつ病が発症している状態で事故に遭い,片腕が動かせなくなってしまった場合(一上肢の用を全廃したもの)などです。


この場合,2つの障害がそれぞれ2級相当であったとしても,2級の障害年金が2つ支給されるわけではありません(支給金額が2倍になるわけではありません)。


もっとも,複数の障害をかかえている場合,日常生活や仕事への影響は,障害が一つだけの場合と比べて大きいことが通常です。


そこで,複数の障害が認められる場合は,障害の内容にもよりますが併合認定を行うことで,より上位の等級が認められることがあります。


上述のケースだと,うつ病の2級と,一上肢の用を全廃したものの2級とが併合認定され,1級の等級が認められます。


この場合,2級の認定と比べて,障害年金の支給額も増えることとなります。


併合認定は,


・複数の障害について,まとめて障害年金の初回申請するケース,


・すでに障害年金を支給中に,後発の障害についても追加で申請して上位の等級を目指すケース,


・前発の障害で一度障害基礎年金を申請していたが支給に至らなかったケースで,後発の障害が加わることで初めて支給の対象となる可能性があるケース


など,いくつかパターンが考えられます。


ケースによって,申請の方法や注意すべき点が変わってくることがあります。


また,複数の障害が認められれば,すべてのケースで自動的に上位の等級に繰り上がるわけではありません。


障害の内容や程度にもよってくるところなどで注意が必要です。


併合認定の基準は以下の厚生労働省のホームページにガイドラインが公開されています。

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12501000-Nenkinkyoku-Soumuka/0000054720_1_4_3.pdf


複数のケガや病気の症状で日常生活や仕事に支障がある方は,併合認定によりより高い等級の認定を受けられる可能性があります。


すでに一度障害年金の認定を受けており,等級が変わることはないと思って申請していない方や,過去に不支給決定がされて,障害年金の申請をあきらめてしまっている方も少なくないようです。


自分や家族が該当するかもしれないと思った方は,障害年金に精通する弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

障害年金の種類と金額

1 障害年金は大きく分けて2種類ある


 障害年金には、①障害基礎年金と、②障害厚生年金の2種類があります。


 どちらが支給対象になるかは、初診日に加入していた年金制度によって決まります。


2 障害基礎年金


 障害基礎年金は、初診日に国民年金に加入している方、たとえば、自営業者、学生、専業主婦などが対象となります。


 障害基礎年金は1級と2級の等級が設定されています。


 障害基礎年金の支給金額は定額です。加入年数にかかわらず、等級が同じであれば、だれもが同じ金額をもらえます。


 具体的には、1級の場合は年額97万7125円、2級の場合には年額78万170 0円となります。


 また、障害年金の受給者に生計を維持されている子供がいる場合には、子の加算も受けることができます。


 子の加算については、子ども2人までは1人につき22万4900円、子ども3人目からは1人につき7万5000円の加算となります。


3 障害厚生年金


 障害厚生年金は、初診日に厚生年金に加入している方、たとえば会社員や公務員などが対象となります。


 障害厚生年金は1級・2級・3級の等級が設定されています。


 障害厚生年金の支給金額は、平均報酬月額(それまでもらっていた報酬額)や加入月数によって計算されます。


 1級の場合は、2級・3級の場合の1.25倍の金額が支給されます。


 また、等級が2級以上でかつ配偶者がいる場合には、22万4900円の加給年金額が加算されます(65歳未満で年収が830万円未満の場合に限ります)。


4 障害年金は弁護士に相談を


 このように、障害年金はいくつかの種類と金額に分かれており、自分はどの対象となるか、支給金額はいくらになりそうなのか、そもそも支給の可能性があるのかどうかなどは、専門家である弁護士に相談してみることをおすすめします。

知的障害と障害年金


障害年金は、身体障害やうつ病などの精神障害などの他にも、先天的な知的障害も支給の対象になる場合があります。

本日は、知的障害で障害年金を申請するうえでのポイントをご説明いたします。

1 初診日

原則として、障害年金の申請には、初めて病院で診断を受けた日(初診日)がいつであるかが明らかでないといけません。

しかし、例外的な取り扱いとして、知的障害は先天的なものと考えられているので、初診日は原則として出生の日とされます。

そのため、初診日の証明は原則として不要となります。

2 障害認定日

知的障害の場合は、20歳の誕生日の前日が障害認定日となります。

3 納付要件

障害年金の支給を受けるためには、初診日までに一定の保険料を納めている必要がありますが、初診日が20歳より前の場合は、保険料の納付は不要となります。

知的障害の場合は、初診日は出生の日とされる関係で必然的に20歳前の初診日となりますから、納付要件も不要となります。

ただし、知的障害の場合は、20歳を過ぎて就職し厚生年金に加入していたとしていたとしても障害厚生年金の支給の対象にはならず、障害基礎年金のみが支給の対象となることに注意が必要です。

4 知的障害で障害年金が支給されるかの基準

障害基礎年金には等級が1級もしくは2級のみしかなく、障害厚生年金の場合には比較的軽度の場合に認められる3級が存在しないので、ある程度の日常生活や社会生活の支障が求められることになります。

1級ないし2級に該当するか、もしくは非該当になるかの判断は、一定の目安はありますが、様々な要素を考慮したうえで、障害認定審査委員が専門的な判断に基づき、総合的に判断するものとされています。

5 療育手帳との関係

知的障害を持っている場合、自治体から療育手帳の交付を受けている方も少なくありません。

療育手帳の制度は障害年金の制度と完全に別物となりますので、療育手帳の交付を受けている=障害年金が支給されるというわけではありません。

もっとも、「精神障害に係る等級判定ガイドライン」によれば、療育手帳の有無や区分を考慮するものとされており、療育手帳の判定区分が中度以上(知能指数がおおむね50以下)の場合は、1級また2級の可能性を検討し、それより軽度の区分である場合は、不適応行動等により日常生活に著しい制限が認められる場合は、2級の可能性を検討するものとされています。

知的障害の場合は、四肢の欠損などの身体障害と比べると明確な基準がない分、申請の際には様々な資料を他覚的に検討する必要があります。

ご自身やご家族が知的障害を抱えており、障害年金の申請を考えている方は、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士による障害年金申請のサポート


障害年金は公的年金のひとつで、病気やケガのために就労や日常生活に支障があるときに支給を受けることができます。

障害年金の特徴として、その病気やケガになった原因は問われません。

たとえば、労災保険は仕事中や通勤中の事故、自賠責保険は交通事故でないと受給することができませんが、障害年金にはそのような制限がありません。

令和2年度の統計によると、日本全国の障害のある人は964万7000人に上り、年々増加傾向にあります。(令和2年度障害者白書より)。
https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/r02hakusho/zenbun/siryo_02.html

このような障害を抱える人の生活の保障は、大きな社会的な課題のひとつになっているといえます。

一方で、その生活保障の中核となる障害年金の受給者数は、令和元年度時点で221万1000人にとどまっています(令和元年度厚生年金保険・国民年報事業年報より)。
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/toukei/nenpou/2008/dl/gaiyou_r01.pdf

つまり、障害者の700万人以上が、障害年金を受給できていないままということになります。

その原因としては、障害年金の申請手続の煩雑さがあると思われます。

障害年金の申請には、医師に診断書の作成を依頼するほか、病歴や就労状況の報告書、加入している年金の種類によって異なる申請書などを作成して提出する必要があります。

病気やケガで疲弊している方には、少なからぬ負担であると思われます。

また、障害年金を受給するためには一定の要件があり、診断書の記載内容が不十分・不適切であったため、本来受給の要件を満たすべき障害が認定されなかったというケースも多くあると推測されます。

適切な認定を受けるためには、診断書の作成から申請の手続きまで、専門家のサポートがとても重要であるといえます。

そこで、弁護士法人心は、この障害年金の問題を集中的に取り扱う「障害年金チーム」を結成し、障害年金に関するご相談や申請代行などのサポートをさせていただいております。

障害年金は過去に受給できたはずの金額を遡って請求できる可能性もあり、その場合は時効で権利が消滅することのないよう、できるだけ早めに申請を行う必要があります。

障害年金の申請を考えている方は、お気軽にご相談いただければと思います。