少し特殊な後遺障害の異議申し立て②

前回のブログの続きとなります。

 

最終的な等級が変わらないのに、なぜ異議の申し立てをする必要があったのでしょうか。

 

これには、被害者の逸失利益を計算する際に用いる「労働能力喪失率」が大きく関わってきます。

 

労働能力喪失率は、等級に応じてある程度の目安が決まっており、等級が高いほど重篤な症状であるとして、労働能力喪失率の目安も高くなります。

 

たとえば、8級相当だと45%、9級だと35%、一番低い14級だと5%・・・という具合です。

 

ただ、あくまでこれは目安なので、残存した後遺障害の内容や特性に応じて、具体的に判断しないといけません。

 

今回労働能力喪失率の関係で注目しないといけないのは、顔面の醜状障害です。

 

醜状障害は、傷こそ残るものの、何か身体が動かせなくなるわけではないので、容貌が重視されるような職業(たとえばモデルや俳優など)でない場合には、労働能力には影響がないと判断されてしまう可能性があります。

 

そのため、異議前のままだと、認定された等級は8級相当でも、労働能力に影響があるのは実質的には左手関節の可動域制限(12級相当)だけで、喪失率は14%程度だろうという反論を相手に許すことになります。

 

一方、異議申し立て後は、外貌醜状を抜きにしても左親指と左手関節の可動域制限で9級相当の後遺障害が残っていると評価することができます。

 

そのため、仮に外貌醜状を加えた8級相当の労働能力喪失率が認められないとしても、少なくとも9級相当(35%)の労働能力喪失率が認められるべきとの再反論が可能となります。

 

12級(14%)と9級(35%)では労働能力喪失率に2倍以上の差が生じることになり、得られる賠償金額も大きく変わっていくことになります。

 

今回は、異議申し立てにより追加で左親指の後遺障害が認められ、外貌醜状を抜きにしても9級相当という狙い通りの結果を得ることができました。

 

交通事故に精通していない弁護士だと、このような労働能力喪失率の違いを見落とし、同じ8級だからと異議の申し立てを怠った結果、少ない賠償金しか獲得できないという事態も起こり得ます。

 

交通事故に被害に遭われ、すでに後遺障害の認定も終わっているという方も、交通事故に精通する弁護士に相談することをおすすめします。