自動車損害賠償責任保障法(自賠法)の特殊な仕組み①

 

自動車損害賠償責任保障法(自賠法)は,交通事故特有の法律です。

 

弁護士の中でも,交通事故を多く取り扱わないような弁護士なら,その仕組みや特殊な取り扱いなど,詳しく理解していないということも少なくありません。

 

今回は,その自賠法の特殊な仕組みについて,ひとつ取り上げたいと思います。

 

ただ,なかなかに説明が難しいので,少し趣向を変えて問題形式でお送りしたいと思います。

 

ゴールデンウィークでも東京はコロナウイルスで自粛要請中ですが,暇つぶしに?考えていただけば幸いです。

 

【事例】

 

Aは自転車で走行中,信号のある交差点を青信号だったので直進進入したところ,信号を無視して突っ込んできたB車に出合い頭で衝突して,ケガを負った。

 

Aは,自転車の修理代,着衣や携行品が壊れるなどの物的損害が10万円,ケガについても,治療費や休業補償,慰謝料等で200万円の損害を負った。

 

Aは合計210万円の損害をBに請求した。

 

ところが,Bは「自分は青信号で交差点に進入した。赤信号で進入したのはAだ」と主張し,逆にB車の修理代50万円と,Bも軽いケガを負ったとして,治療費等で20万円,合計70万円の損害を請求してきた。

 

交差点に目撃者や防犯カメラはなく,警察が捜査したが,どちらが信号無視したかはわからなかった。

 

この場合,A・B双方の請求はどちらが認められるのか?どちらも認められないのか?

 

 

本来,損害賠償請求の大原則を定める民法709条は,請求が認められる要件として,加害者に過失があることが必要としています。

 

そして,加害者に過失があったこと,今回のケースでは信号無視をしたかどうかを,被害者側で証明する必要があります。

 

すると,どちらが信号無視したのかわからない場合は,双方ともに相手に過失があることを証明できなかったことになり,双方の請求が否定されることになります。

 

しかし,交通事故においては,自賠法の規定が適用される結果,上記とは異なる結論が導き出されることになります。

 

結論から言うと,Aの請求は200万円認められる一方で,Bの請求は1円も認められないことになります。

 

 

・・・なぜこのような結論になるかは,次回のブログで詳しくご説明したいと思います。