知的障害と障害年金


障害年金は、身体障害やうつ病などの精神障害などの他にも、先天的な知的障害も支給の対象になる場合があります。

本日は、知的障害で障害年金を申請するうえでのポイントをご説明いたします。

1 初診日

原則として、障害年金の申請には、初めて病院で診断を受けた日(初診日)がいつであるかが明らかでないといけません。

しかし、例外的な取り扱いとして、知的障害は先天的なものと考えられているので、初診日は原則として出生の日とされます。

そのため、初診日の証明は原則として不要となります。

2 障害認定日

知的障害の場合は、20歳の誕生日の前日が障害認定日となります。

3 納付要件

障害年金の支給を受けるためには、初診日までに一定の保険料を納めている必要がありますが、初診日が20歳より前の場合は、保険料の納付は不要となります。

知的障害の場合は、初診日は出生の日とされる関係で必然的に20歳前の初診日となりますから、納付要件も不要となります。

ただし、知的障害の場合は、20歳を過ぎて就職し厚生年金に加入していたとしていたとしても障害厚生年金の支給の対象にはならず、障害基礎年金のみが支給の対象となることに注意が必要です。

4 知的障害で障害年金が支給されるかの基準

障害基礎年金には等級が1級もしくは2級のみしかなく、障害厚生年金の場合には比較的軽度の場合に認められる3級が存在しないので、ある程度の日常生活や社会生活の支障が求められることになります。

1級ないし2級に該当するか、もしくは非該当になるかの判断は、一定の目安はありますが、様々な要素を考慮したうえで、障害認定審査委員が専門的な判断に基づき、総合的に判断するものとされています。

5 療育手帳との関係

知的障害を持っている場合、自治体から療育手帳の交付を受けている方も少なくありません。

療育手帳の制度は障害年金の制度と完全に別物となりますので、療育手帳の交付を受けている=障害年金が支給されるというわけではありません。

もっとも、「精神障害に係る等級判定ガイドライン」によれば、療育手帳の有無や区分を考慮するものとされており、療育手帳の判定区分が中度以上(知能指数がおおむね50以下)の場合は、1級また2級の可能性を検討し、それより軽度の区分である場合は、不適応行動等により日常生活に著しい制限が認められる場合は、2級の可能性を検討するものとされています。

知的障害の場合は、四肢の欠損などの身体障害と比べると明確な基準がない分、申請の際には様々な資料を他覚的に検討する必要があります。

ご自身やご家族が知的障害を抱えており、障害年金の申請を考えている方は、弁護士に相談することをおすすめします。