保険会社による治療費の打ち切りについて①

 東京の弁護士の伊藤です。  

 

 当事務所では,多くの交通事故案件のご相談を承っておりますが,ご相談の中でも,保険会社による治療費の打ち切りのお悩みは多く寄せられています。  

 

 今回は,この治療費の打ち切りについてお話させていただきたいと思います。

 

 交通事故に遭われた場合,その治療費は,多くの場合保険会社が医療機関に直接支払い,被害者は窓口負担なく通院できます。

 

 これを保険会社による「内払い」とか「一括対応」と呼ばれます。

 

 しかし,通院開始からしばらくたった後,保険会社から被害者に対し,「治療費の内払いは〇月×日までとさせていただきます。」というような話をしてきて,それ以降治療費の支払いを打ち切ってくることがあります。

 

 保険会社の治療費の支払いが打ち切られてしまうと,被害者は,通院した際は治療費を自分で病院に支払わなくてはならなくなります。

 

 このとき,「自分は被害者なのに,加害者側である保険会社が治療費の支払いを拒むなんて許されるの?」と疑問や憤りを覚える方も少なくないと思います。

 

 実は,法律的には,治療費は一旦被害者が病院に支払った後,それを事後的に損害の賠償として加害者側の保険会社に請求する,というのが原則の流れとなっています。

 

 ですので,保険会社による治療費の内払いは,法律の定めとは別の,いわば保険会社の自主的なサービスというべきものなのです。

 

 そのため,保険会社による治療費の内払いは,法律的に強制されるものではなく,保険会社の判断で打ち切ることも許されてしまいます。

 

 治療費の支払いが打ち切られてしまった場合は,法律の原則に戻り,被害者が一旦治療費を病院に支払い,後から保険会社に治療費分のお金を請求することとなります。

 

 誤解されている方も多いかもしれませんが,治療費の支払いが打ち切られたからといって,その後の治療費がすべて自己負担となり,まったく保険会社に請求できなくなるということではありません。

 

 もちろん,通院して治療を続けることが禁止されるわけでもありません。

 

 しかし,後から請求できるといっても,一旦は治療費を払わなければいけないのは,被害者にとって大きな負担となることが少なくありません。

 

 また,「どうせ後から請求を受けるなら,保険会社はなぜ途中で治療費の支払いをやめるの?」という疑問を持つ方もいると思います。

 

 なぜ保険会社は治療費の支払いを打ち切ってくるのか?

 打ち切りを回避するには,治療費の負担を減らすにはどうしたらいいか?  

 

 これらの疑問については,次回以降のブログでお話したいと思います。