八重洲さくら通り

こんにちは。弁護士の伊藤です。

3月も終わりになり,東京もようやく春めいた暖かさになってまいりました。

 

私の所属する弁護士法人心東京駅法律事務所のすぐ近くにある「八重洲さくら通り」は,その名のとおり桜の名所であります。

今の季節,近くに勤務するサラリーマンから外国人観光客まで,こぞってカメラを掲げて美しい桜並木の写真を撮っています。

 

桜の写真を撮ろうとする人の中には,いいアングルで撮影するため,車道の真ん中まで立ち入ってカメラを構えている人も少なくありません。

 

しかし,この八重洲さくら通り,けして交通量が多いわけではないのですが,まったく車が入れない道路でもありません。

 

写真に夢中で車に轢かれたりしないか,交通事故を集中的に取り扱う私は気が気でなりません。

 

もし,このような車道の中に立ち入った歩行者が車と接触した場合,立ち入った歩行者と車を運転していた運転手のどちらが悪いか,いわゆる過失割合の問題が生じてきます。

 

過失割合については,過去の裁判例等に基づいて認定基準をまとめた,「別冊判例タイムズ38号」という書籍があります。

この書籍の基準を参照すると,車道通行が許されていない場合に歩行者が車道の真ん中を通行している場合,歩行者の過失は30%,車両の運転手の過失は70%が基本となるとされています。

本来,歩行者が車道に立ち入るのはとても危険な行為なのですが,それでも車両の運転手の責任の方が重いと考えられています。

 

もちろん,この歩行者30:車70という過失割合は,あくまで参考とすべき割合ということで,具体的な事情によっては,過失が重くなったり軽くなったりすることはありえます。

 

たとえば,「道路の真ん中で立ち止まって写真を撮るという行為は,歩行者にとっての本来の道路の利用方法(移動,横断)とは全く異なる利用方法であり,危険な行為である」と考えれば,歩行者の過失は重いと考えることもできます。

 

一方で,「写真を撮るために立ち止まっている人の方が,動いている歩行者よりも発見や回避は容易である」として,むしろ車の運転手の過失は一層重いと考えることもできそうです。

 

このように,共通の事実を取り上げても全く異なる評価が可能なので,過失の争いは混迷を極めることが多く,弁護士も頭を悩ませる問題の一つであります。

 

とはいえ,歩行者と車の運転手のどっちの過失が重い軽いとかではなく,そもそも交通事故は起きないことが何よりです。

 

よく注意を払い,交通ルールも守って,ぜひ八重洲の桜を楽しんでいただければと思います。