ライプニッツ係数とは

みなさんは「ライプニッツ係数」という用語をご存じでしょうか。

 

ライプニッツ係数とは、交通事故などの人身障害事件における損害賠償のなかで、長期に発生する将来の介護費用や就労機会喪失や減少による逸失利益など、時間と関係する賠償金を一時金に換算する計算方法です。

 

交通事故に遭った場合に相手に請求できる賠償内容は、すでに発生した損害だけに限られず、将来発生するであろう損害も請求できる場合があります。

 

代表的なものとしては、後遺障害が残ってしまった場合に、働く能力が下がってしまい、将来の収入が減少されることが見込まれる場合の、本来得られるはずだった収入(逸失利益)などがあります。

 

逸失利益が存在する場合に、たとえば1年間あたり100万円の減収が5年続くようなケースを想定すると、100万円×5年=500万円の賠償が請求できそうですが、裁判所はそのような考え方をとっていません。

 

なぜかというと、損害賠償請求が認められると、5年間かけて得られる500万円を前倒しでもらえることができるため、この500万円を資産運用するなどして増やすことができれば、事故に遭わなかった時と比べて、事故に遭ったことで5年後に逆に儲かってしまうという事態が生じ得ることになります。

 

裁判所は、そのような結果にならないよう、運用益も含めてトータルで500万円になるよう調整(「中間利息控除」といいます)を行うこととしており、その計算に用いるのがライプニッツ係数です。

 

ライプニッツ係数は法定利率を基準に設定されており、現在の日本の法定利率は5%なので、これを前提にライプニッツ係数は設定されています。

 

たとえば、5年のライプニッツ係数は4.3295であり、さきほどの例でいうと、100万円の減収が5年続く人の損害賠償額は、100万円×5年ではなく、100万円×4.3295=432万9500円であると裁判所は考えます。

 

私のような交通事故、特に後遺障害を数多く取り扱う弁護士だと、見慣れない人には数字の羅列にしか見えないライプニッツ係数も、3年だと2.7232、5年だと4.3295・・・という具合によく使う年数の値は暗記してしまっています。

 

ところで、2020年4月から民法改正により法定利率が変更され、法低利率に基づいて計算されるライプニッツ係数も、これに伴い一新されることとなります。

 

法定利率が下がるとライプニッツ係数は大きくなります。

 

たとえば5年のライプニッツ係数は法定利率が3%だと4.580となり、さきほどの例だと、賠償金額は432万9500円から458万円と20万以上増えることとなります。

 

従来の数字の暗記が全く役に立たなくなるのは残念ですが、交通事故被害者にとっては非常に有利な変更となっているので、新しいライプニッツ係数を武器に交通事故案件に取り組んでいきたいと思います。