令和7年5月、脱毛サロン大手のミュゼプラチナムが破産するというニュースがありました。
従業員の給与の未払いや大量の未消化の施術回数券を残したままの破産だと報道されており、大きな影響が予想されます。
法律的な視点で見ると、今回のミュゼの破産で特徴的なのは、「債権者破産」という方法で破産の申し立てが行われたことです。
通常、破産の申し立てを行うのは負債の返済ができなくなった会社や個人自身であることが多いです。
しかし、実は、法律上は破産の申し立ては債務者だけでなく債権者から申し立てることもできます(破産法18条)。これが「債権者破産」と呼ばれるものです。
今回の場合だと、賃金が未払いになっているミュゼの従業員が破産の申し立てを行ったとのことです。
制度上は債権者が破産の申し立てを行うことができるとされていますが、実際に債権者が破産の申し立てを行うというのは、かなりレアケースです。
破産の申し立てを行う場合は、裁判所に手続きに必要な費用を予納金として納める必要があり、これは破産の申し立てを行った人が納めないといけません。
また、自己破産の申し立ては弁護士に依頼することが一般的なので、その弁護士費用もかかることになります。
すると、債権者からすれば自分の貸したお金や売掛金がまともに払われていないのに、そこからさらに破産手続の費用まで負担しないといけないことになり、踏んだり蹴ったりです。
その結果、破産者から財産の分配が受けられて債権が回収できればいいのですが、破産手続の費用を負担した債権者がそのご褒美として優先的に財産の分配を受けられるということも別にありません。
そのため、債権者から破産の申し立てをするメリットが乏しいことが多く、あまり利用がないのだと思われます。
もっとも、今回ミュゼの破産を申し立てた従業員の有する賃金債権は、誰が破産の申し立てをしたかに関係なく、一定の範囲で優先的に配当を受けることができます。
そのため、債権回収の見込みがあるならば手間や時間、費用をかけてもやるメリットがあると判断して、債権者破産の申し立てに踏み切ったのかもしれません。
また、債権者に対する配当の原資は、当然ながらミュゼの保有している財産が対象です。しかし、このまま赤字経営が続くとどんどんその財産が目減りしていってしまう可能性があります。
それを防止するためにいち早く債権者から申し立てを行い、会社財産を破産管財人の管理下に置くという目的もあったのかもしれません。