勤務弁護士と労働基準法の関係

 私の所属している弁護士法人心のホームページの集合写真が更新されました。

 おかげさまで,新しい弁護士やスタッフが数多く加わったため,集合写真の人数もだいぶ増えました。

 弁護士事務所というより,まさに会社という感じです。

 

 これだけ多くのスタッフがいれば,その労務管理というのは労働基準法をはじめとする法律に従って適切に行わなければいけません。

 

 さて,それでは,私のような弁護士の場合は,労働基準法などの法律は適用されるのでしょうか。

 気になる方もいらっしゃるかもしれません。

 

 弁護士と事務所との契約形態は,雇用契約もしくは業務委託契約という形式で取り交わされているところが大半だと思われます。

 弁護士法人心の場合は,雇用契約という形で契約を結んでおり,労働基準法の適用を念頭に置いています。

 なお,業務委託契約で事務所と契約している弁護士だからといって労働基準法の適用がないとは限りません。

 労働基準法の適用される「労働者」とは,職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいいます(労働基準法9条)。

 具体的な判断基準はいつかこのブログで取り上げたいと思いますが,いずれにしろ,弁護士にも労働基準法の適用はありえるということになります。

 

 もっとも,弁護士の仕事の内容や働き方は,やはり普通のサラリーマンとは異なりますので,職務の実情に合わせた法律の適用や労務管理が必要です。

 当事務所の場合,弁護士は専門業務型裁量労働制(労働基準法38条の3)を採用しています。

 たとえば,弁護士の労働時間については,終電間際まで書類を作る日もあれば,午前は裁判所に出廷して事務所に出勤するのは午後からという日もあったりと,弁護士の裁量でかなり不規則なのですが,裁量労働制を採用することで柔軟な労働管理が可能となります。

 ただし,近時の働き方改革の一環として,2019年4月1日から,使用者側には労働者の労働時間の把握義務が明文化されました(労働安全衛生法66条の8の3)。これは裁量労働制の場合にも適用されます。

 当事務所では,もともと秘書や法律スタッフの労働時間を1分単位で把握していましたが,今年の4月からは弁護士の労働時間の把握も務めるようになりました。

 

 今回は弁護士の働き方や労働法との関係について,当事務所の場合ということで少しだけお話させていただきました。

 弁護士に限らず多様な働き方が想定される時代で,会社の労務管理は一層重要になってきております。

 会社を経営している方は,自分の会社の労務管理が間違っていないか,弁護士に相談してみるのもよいかもしれません。

交通事故と保険金の不正請求の問題

 弁護士法人心は,突然の事故に遭ってしまった交通事故被害者の支援・救済のため,日々多くの交通事故案件を取り扱わせていただいております。

 

 しかし,ニュースや裁判例を見ると,「悪意ある被害者」というものも,どうやら一定数存在するようです。

 それが,交通事故の保険金の不正請求問題です。

 注意喚起の上でも今回のブログで取り上げたいと思います。

 

1 問題となっている不正請求の一例

 

① 通院日数の水増し

 保険金の不正請求で多く聞くケースが,通院日数の水増しです。

 保険会社が算定する交通事故の慰謝料は,通院日数を考慮して決定されています。

 そのため,被害者がもらう慰謝料を増やすために,整形外科や接骨院と結託して,通院日数を水増しして保険会社に請求するケースが存在します。

 これは,治療を行ったことにして治療代を保険会社に請求しようと考える整形外科や接骨院の方から水増しを持ちかけられるケースもあるようです。

 

② 詐病

 実際はもう回復しているのに,通院や休業を続けて補償を受け取ろうとするケースです。

 

③ 交通費の虚偽申告

 タクシー代を除き,交通費は領収書等を提出しなくても経路等を申告すれば請求することが可能です。

 これを悪用して,実際は自転車や自動車で通院したのに,公共交通機関を利用したとして運賃を請求するケースです。

 

④ 自作自演の事故

 これはかなり極端なケースではあります。

 たとえば,自損事故を起こした場合,運転手は事故を起こした本人なので,ケガをしても自賠責保険を使うことはできませんが,同乗者が怪我をした場合は,保険金の支払い対象となります。

 そこで,運転手と同乗者とで共謀して,同乗者が事故で怪我をしたことにして保険金を請求しようとするケースがあります。

 

2 不正請求の取り締まりは強化されている

 近年は,保険会社もこのような不正請求の取り締まりを強化しています。

 たとえば,①のケースでは,不審に思った保険会社が探偵に依頼して整形外科の前に張り込みさせ,通院していないのに通院したものとして請求していたことが発覚したというケースが報じられました。

 また,②のケースでは,体が痛くて仕事ができないと保険会社に話して休業補償をもらっていた被害者が,休日に元気にスポーツに興じているところをSNSに投稿して発覚したケースなどがありました。

 不正請求は驚くほど簡単に発覚してしまうものです。

 

3 不正請求は犯罪です!

 不正請求は,保険金を不正にだまし取ろうとするものであり,詐欺罪に該当します。最大で懲役10年という処罰が課せられることのある重大な犯罪です。

 不正請求が発覚した場合,上記のような刑事処罰に処される可能性があり,また,治療費含め,保険会社から受け取った一切の金銭の返還を求められることもあります。

 間違っても,不正請求に手を染めるようなことだけはしないでいただきたいと思います。

事故車両の評価損について

 東京も梅雨入りとなり,カラッとしない天気が続きますね。

 

 本日は,保険会社と揉めることも多い「評価損」についてお話したいと思います。

 

1 評価損とは

 交通事故によって車両が損傷してしまった場合,修理しても事故車扱いとなり,下取り価格が安くなるとディーラーから言われることは少なくありません。

 この車両の評価の低下という損害,いわゆる「評価損」について,加害者に賠償を求めることができる場合があります。

 

 車両を修理しても機能や外観が元通りにならなかった場合は,車両の価値が下がっていることは明らかなので,評価損は認めてもらいやすい傾向にあります。

 

 一方,修理した結果,元通りになったという場合,車両の客観的な価値は回復しているはずということになります(場合によっては,古い中古車の場合,部品を交換したらその部分は新品になるので,客観的な価値は上昇するのでは?とも考えられます)。

 すると,ディーラーの下取り価格が安いのは,ディーラーの査定が客観的な価値と比べて不当なだけで,加害者がその下落分の賠償を負うべきなのかという問題もあるかと思います。

 とはいえ,事故車扱いになった場合に中古市場価格が下がるのは社会通念化しているともいえ,裁判所や法律家は両者のバランス等も考え,主に次の3点を重視して,評価損を認めるかどうか判断する傾向にあります。

 

2 評価損の判断基準

① 修復歴がつく修理内容かどうか

 車両のフレーム等重要部分が損傷し修理した場合,修復歴が付くことになります。この「修復歴」は単なる「事故歴」とは別概念ということになります。

 単なる事故歴は表示する必要はないのに対し,修復歴の有無は,自動車業における表示に関する公正競争規約及び同中古車に関する施行規則15条に基づいて表示することになっており,この表示がある車両は,やはり中古市場においては取引価格が下がる傾向にあるので,評価損を認めてもらうための一つの材料となります。

 

② 新車購入後から交通事故に遭うまでの期間

 新車と中古車とで比べると,新車の方が評価損を認めてくれやすい傾向にあります。

 他方で,新車購入から1年以上たつと,評価損の認定率は下がる傾向にあります。

 

③ 車両の購入価格

 外国車や国産高級車など,購入金額が大きい方が評価損が認められやすい傾向にあります。

 

3 評価損として認められる金額

 評価損を金銭的に換算するのは困難なことが多く,裁判例では,修理代の10~30%程度の範疇で認める傾向が強いといえます。

 単純に下取り価格の減少分をそのまま認めることはほぼないといえます。

 

 

 評価損については,認められるかどうか,認められるとしてもいくらぐらいが妥当な金額なのかは難しい問題が多いので,一度弁護士に相談してみることをおすすめします。

交通事故に遭ったとき,警察には人身事故で届け出るべきか

 東京もだいぶ暑くなってきました。

 職業柄,クールビズといってもどこまで軽装で仕事してよいか,悩ましい季節です。

 私は,裁判所に出廷するときやお客様にお会いするときは,夏でもネクタイは締める派です。

 

 さて,今日は交通事故に遭った際,警察への届け出はどうすべきかについてお話したいと思います。

 

 交通事故に遭ったとき,警察官から人身事故として届け出るかどうか被害者に確認を求められることがあります。

 事故直後のバタバタしているときなので,深く考えないで警察にお任せしたり,必要な手続きを怠ったままにしてしまう場合は多くあります。

 ですが,交通事故に遭ってケガをした場合は,基本的には人身事故に切り替えることをおすすめさせていただいています。

 

1 人身事故扱いにするメリット

 

⑴ 実況見分調書が作成される

 人身事故扱いにした場合,警察では現場の実況見分を行い,事故の詳細を記録した実況見分調書を作成します。

 過失割合に争いがあるときなど,事故の態様が問題になったとき,実況見分調書の記載は有力な証拠となります。

 

⑵ ケガが軽く見られることを防止する

 物件事故扱いのままですと,軽い事故だと思われてしまい,長期の治療が必要な場合に疑いの目を向けられたりすることがあります。

 また,自賠責保険に治療費の請求をしたり,後遺障害の認定を求める際には,原則として警察で人身事故扱いになっていることが必要です。

 

2 人身事故扱いにするデメリット

 人身事故扱いにするデメリットとしては,自身にも過失がある場合です。

 この場合,被害者であっても,一定の運転義務違反があるとして,免許の点数の減点など不利益を被ってしまうことがあります。

 

3 人身事故への切り替え方法

 警察に人身事故として処理してもらうためには,事故によってケガをしたことを証明するために,医師の診断書を警察に提出する必要があります。

 

4 人身事故への切り替えることのできる期限

 事故直後に人身事故の届け出を出さなかった場合でも,後から診断書を提出することで人身事故に切り替えることは可能です。

 法律上,人身事故に切り替えることのできる期限というものはありません。

 ただ,あまりに時間が経過していると,警察も難色を示すことはあります。

 また,事故から時間がたって人身事故扱いとしたことで,実況見分の実施時期も事故から時間がたっている場合,実況見分調書の証拠としての価値も低く見積もらざるを得ないことがあります。

 ですので,人身事故の届け出は早めにするに越したことはありません。

 

 

 警察への届け出に限らず,交通事故においては初期対応が想像以上に大事になります。

 ですので,その対応については早期のうちに弁護士の無料相談をおすすめします。

 弁護士法人心東京駅法律事務所では交通事故に力を入れて取り組んでおります。

交通事故に関する交通費の取り扱い

 

 

今回は,交通事故の被害に派生して発生する,通院等にかかる交通費の取り扱いについてお話したいと思います。

 

 

交通事故によりケガを負った場合,病院や接骨院に通院して治療を続けることが必要不可欠となります。

近所の病院であればいいですが,自宅から少し離れたところに通院する場合,交通費がかかってしまうこともあります。

この場合でも,通院のために必要な交通費は,相手方保険会社に請求することが可能です。

 

ただし,相手方保険会社に請求できるのは,交通費を支出することが必要かつ相当であることが条件となります。

そのため,後述するタクシー代の要否や,遠回りになるようなルートで通院した場合,理由もなく遠隔地の病院に通院している場合(例えば,地方に住んでいるのに東京の病院に通う場合など)には, 必要性・相当性が疑われることがあるので注意が必要です。

 

 

①バスや電車などの公共交通機関を利用した場合

 

バスや電車などの公共交通機関を利用して通院した場合も,実費を請求することができます。

どのような経路で通院したかを申告すれば,通常は領収書の提出やICカードの履歴の提出まで求められることはありません。

 

②自家用車を利用した場合

 

自家用車で通院をした場合でも,ガソリン代として,1キロメートルあたり15円を請求することが可能です。

 

また,有料駐車場を利用し,駐車場代が発生する場合には,実費を請求することができます。

ただし,その場合は相手方保険会社から駐車場代の領収書の提出を求められるので,必ず領収書を保管しておく必要があります。

 

③タクシーを利用した場合

 

タクシーを利用して通院した場合も交通費として請求が可能ですが,タクシーを利用して通院する必要性・相当性がなければ,領収書があっても認めてくれないことがあります。

 

たとえば,足を骨折していてバスや電車の乗り降りができないようなケースなどは,比較的タクシー利用が認めてもらいやすいです。

 

一方,ケガが軽い場合や,腕を骨折してしまったがそ他は無事で歩行に支障がない場合,事故から長期間が立ってもうだいぶ身体が回復しているはずなのにタクシーを利用している場合などは,タクシー代の支払いは認められない可能性が高いといえます。

 

 

また,通院以外の交通費についても認めてられる可能性があります。

 

④通勤のための交通費

 

たとえば,普段は自転車で通勤していた人が,交通事故に遭ったことで体への負担が大きくなり,電車やバスでの通勤を余儀なくされる場合があります。

 

この場合,必要性・相当性のある交通費の支出であるとして,相手方保険会社に請求できる可能性があります。

 

⑤家族の通院費

 

ケガをした本人以外で,家族が通院に付き添うために交通費が発生することがあります。

 

家族が通院に付き添う必要がある場合,たとえば,ケガをした本人が児童や高齢者である場合やけがが重傷で付き添って身の回りの世話をする必要がある場合などは,家族の交通費が認められる可能性があります。

 

一方,単なるお見舞いのために病院を訪れるような場合には,なかなか認めてもらえない傾向にあります。

 

⑥警察署に行くための交通費

 

警察署で事情聴取に応じたり,事故に関する届出を出しに行く際などに交通費が発生することがあります。

 

確かに事故さえなければ被らなくて済むはずの支出ではありますが,これは交通事故の当事者に課せられた義務であるため,損害賠償の対象とはなりません。

 

 

保険会社は,公共交通機関の料金やガソリン代は比較的緩やかに交通費を認めてくれますが,タクシー代や通院以外にかかった交通費はなかなか認めてくれず,トラブルになることも少なくありません。

 

交通事故に関する交通費のことでお悩みやお困りになった場合は,一度弁護士に相談してみることをおすすめします。

八重洲さくら通り

こんにちは。弁護士の伊藤です。

3月も終わりになり,東京もようやく春めいた暖かさになってまいりました。

 

私の所属する弁護士法人心東京駅法律事務所のすぐ近くにある「八重洲さくら通り」は,その名のとおり桜の名所であります。

今の季節,近くに勤務するサラリーマンから外国人観光客まで,こぞってカメラを掲げて美しい桜並木の写真を撮っています。

 

桜の写真を撮ろうとする人の中には,いいアングルで撮影するため,車道の真ん中まで立ち入ってカメラを構えている人も少なくありません。

 

しかし,この八重洲さくら通り,けして交通量が多いわけではないのですが,まったく車が入れない道路でもありません。

 

写真に夢中で車に轢かれたりしないか,交通事故を集中的に取り扱う私は気が気でなりません。

 

もし,このような車道の中に立ち入った歩行者が車と接触した場合,立ち入った歩行者と車を運転していた運転手のどちらが悪いか,いわゆる過失割合の問題が生じてきます。

 

過失割合については,過去の裁判例等に基づいて認定基準をまとめた,「別冊判例タイムズ38号」という書籍があります。

この書籍の基準を参照すると,車道通行が許されていない場合に歩行者が車道の真ん中を通行している場合,歩行者の過失は30%,車両の運転手の過失は70%が基本となるとされています。

本来,歩行者が車道に立ち入るのはとても危険な行為なのですが,それでも車両の運転手の責任の方が重いと考えられています。

 

もちろん,この歩行者30:車70という過失割合は,あくまで参考とすべき割合ということで,具体的な事情によっては,過失が重くなったり軽くなったりすることはありえます。

 

たとえば,「道路の真ん中で立ち止まって写真を撮るという行為は,歩行者にとっての本来の道路の利用方法(移動,横断)とは全く異なる利用方法であり,危険な行為である」と考えれば,歩行者の過失は重いと考えることもできます。

 

一方で,「写真を撮るために立ち止まっている人の方が,動いている歩行者よりも発見や回避は容易である」として,むしろ車の運転手の過失は一層重いと考えることもできそうです。

 

このように,共通の事実を取り上げても全く異なる評価が可能なので,過失の争いは混迷を極めることが多く,弁護士も頭を悩ませる問題の一つであります。

 

とはいえ,歩行者と車の運転手のどっちの過失が重い軽いとかではなく,そもそも交通事故は起きないことが何よりです。

 

よく注意を払い,交通ルールも守って,ぜひ八重洲の桜を楽しんでいただければと思います。

交通事故治療の通院時の注意点

 

 こんにちは。東京の弁護士の伊藤です。

 

 今回は,交通事故に遭った際の通院時の注意点についてお話いたします。

 

 どうやら,交通事故に詳しくない弁護士事務所では,交通事故に遭った被害者に対して,「保険会社と医師の言う通りに通院しておけば大丈夫」という,いい加減なアドバイスをするところが少なくないようです。

 そして,言われるがままに漫然と通院した結果,十分な治療や賠償が受けられずに困っているという相談が結構な頻度で寄せられます。

 

 そのため,最低限の注意点をお伝えさせていただければと思います。

 

1 事故直後すぐに病院に行くこと

 まず,事故に遭った場合は,すぐに病院や整形外科に通うことが必要不可欠となります。

 事故から病院での初診が1週間以上空いてしまうと,そのケガが本当に交通事故によるものかわからなくなってしまい,ケガの補償がまったくもらえなくなってしまうこともあります。

 仮に交通事故によるケガであると認めてもらったとしても,「1週間病院に行かなくても我慢できるケガなんだ」と症状を軽く見られてしまうことは間違いありません。

 

2 医師にはしっかり症状を伝えること

 医師には,自分の症状を正確に伝え,診断書やカルテにしっかり記録してもらいましょう。

 交通事故のケガは,一般的には事故直後が症状が一番重いはずと考えられています。

 そのため,事故直後に訴えていなかった痛みをあとになって医師に伝えても,事故と関係なく発生したものだと判断されてしまうことがあります。

 また,痛みのある箇所を伝え忘れると,医師は完治したと思い,治療の必要はもうないと誤解してしまうおそれがあります。

 

3 通院先について

 基本的には,整形外科のほか,接骨院(整骨院)などに通院して治療を行うこととなります。

 これらは,国家資格である医師や柔道整復師による治療となるため,治療の必要性が認められる限り,原則として治療費の支払いの対象となります。

 一方,民間療法である整体やカイロプラクティックなどは,一部例外を除いて治療費の支払いの対象とならないことがほとんどなので,注意が必要です。

 

4 通院のペース

 整形外科の医師の診察は,最低でも月に1回,30日期間を空けないように受診することが非常に重要です。

 保険会社は,医師の書く診断書をもとに被害者の身体の状態を把握しています。

 医師の診断がないと,被害者のケガが治ったのか,今後も治療を続ける必要があるのかわからなくなってしまい,以降の治療費は,因果関係が不明であるとして支払いを拒まれてしまう危険が高まります。

 

5 精密検査の重要性

 多くの場合ではレントゲン程度は撮りますが,それに加えて,CTやMRIなどの精密検査をはやめに受けておくことをおすすめします。

 治療の方針を決めるうえでも役立ちますし,「医師が精密検査は必要ないと判断する程度の軽いケガだ」という誤解を招かないためにも重要となります。

 

 

 通院の際の注意点をしっかり押さえて通院した人と,そうでない人では,治療を受けられる期間や最終的にもらえる賠償金の金額が大きく変わってくることも少なくありません。

 

 そのため,早い段階から弁護士に相談して具体的なアドバイスを受けておくことが大事です。

交通事故紛争処理センターの利用

 

 今年もよろしくお願いいたします。

 東京の弁護士の伊藤です。

 

 今回は交通事故の賠償問題の解決方法についてお話させていただきたいと思います。

 

 交通事故の賠償問題は,保険会社と話し合い,和解によって解決するケースが最も多く,かつ,それが一番望ましいものではあります。

 

 ただ,どうしても当事者のどちらかが話し合いでは納得いかず,和解できないことがあります。

 

 その場合に,裁判を起こして,裁判所の判断を仰ぐことも一つの選択肢です。

 

 しかし,そのほかの有力な解決手段として,交通事故紛争処理センターに和解のあっせんを申し立てるという方法があります。

 

 交通事故紛争処理センターは,嘱託弁護士が和解のあっせんを行ってくれる裁判外紛争解決機関(ADR機関)のひとつです。

 

 紛争処理センターの手続きは,裁判による解決とはまた異なるメリットがありますので,今回はそのメリット・デメリットを少しご説明させていただきたいと思います。

 

 

第1 紛争処理センターを利用するメリット

 

1 早期解決が期待できる

 裁判になった場合,通常6カ月程度,長期化した場合は1年以上解決までかかってしまうことも少なくありません。

 

 紛争処理センターを利用する場合,7割以上が3回の期日までに和解が成立しており,裁判と比べると早期解決が期待できます。

 

2 紛争処理センターの審査結果(裁定)は保険会社を拘束する

 紛争処理センターにおいては,基本的には和解による解決を目指しますが,当事者のどちらかが納得できず合意に至らない場合,被害者が審査を申し立てると,紛争処理センターに裁定案を下してもらうことができます。

 

 紛争処理センターと協定を結んでいる保険会社や共済組合は,この裁定案に拘束され,被害者が裁定案を受け入れれば,保険会社は裁定案に従って賠償する義務を負います。

 

 紛争処理センターと協定を結んでいるのは以下の保険会社,共済組合等になります。

  ①日本損害保険協会に加盟する保険会社

  ②外国損害保険協会に加盟する保険会社

  ③全国共済農業協同組合連合会(JA共済連)

  ④全国労働者共済生活協同組合連合会(全労済)

  ⑤全国トラック交通共済協同組合連合会(交協連)

  ⑥全国自動車共済協同組合連合会(全自共)

  ⑦全日本火災共済協同組合連合会(日火連)

 

3 治療費の認定が裁判所よりも緩やかな傾向にある

 近年では,交通事故患者の治療費について,裁判所は治療の必要性を厳格に判断する傾向が強くなっています。

 

 そのため,保険会社が医療機関にすでに支払った治療費の一部についても,本当は保険会社が支払う義務はなかったと判断することが増えています。

 

 この場合,支払う義務のなかった治療費は,保険会社の過払いという扱いとなり,最終的な賠償金額から過払い分を差し引くという,被害者にとって不利な取り扱いがなされます。

 

 一方,紛争処理センターは,治療費については裁判所と比べると緩やかに必要性を認める傾向にあります。

 

 そのため,治療費の必要性が争われることが予想されるケースでは,紛争処理センターに和解のあっせんを申したてる方が有利なことがあります。

 

 

第2 デメリット

 一方で,紛争処理センターの利用が効果的でないケースもあります。

 

1 遅延損害金等を認めてくれない

 裁判を行った場合,遅延損害金や弁護士費用は,損害の一部として賠償金額に含まれることになります。

 

 一方で,紛争処理センターでの解決の場合,遅延損害金や弁護士費用は,被害者側で譲歩すべきものという取り扱いが定着しています。

 

 損害額が大きく,遅延損害金等もそれに伴って大きくなることが予想されるケースでは,裁判による解決を目指した方がより大きな賠償額を得られる可能性があります。

 

2 相手方によっては裁定案の拘束力が及ばない場合がある

 紛争処理センターの出す裁定案の拘束力があるのは,上述の各保険会社や共済組合に限られます。

 

 それ以外の共済や加害者本人を相手にする場合,裁定案の拘束力が及ばないため,相手に和解を拒否されてしまうと解決することができなくなり,結局裁判を起こさないといけなくなることもあります。

 

3 自動車やバイクの絡む事故でないといけない

 自転車対歩行者の事故や自転車同士の事故では,紛争処理センターの手続きの対象とならないので注意が必要です。

 

 このように,交通事故の解決手段は裁判だけではなく,また,その方法によりメリットデメリットがございます。

 事案に応じて,最も有利な解決が期待できる手段は何かを戦略的に判断していくことが重要になります。

創立10周年&テレビCMの放送開始

 

 弁護士法人心東京駅法律事務所の伊藤です。

 

 寒い日が続きますがいかがお過ごしでしょうか。

 

 表題のとおり,平成30年12月1日をもちまして,弁護士法人心は創立から10周年を迎えました。

 

 弁護士業界におきましては,司法制度改革など大きな変化が続いた10年であります。

 

 弁護士の増加と競争の激化に伴い,法律事務所も成長を続ける事務所と縮小する事務所の2極化が進んでいるのが現状です。

 

 そんな中,弁護士法人心は多くの依頼者からのご愛顧もあり,弁護士の人数は46人,社員総数も150人を超える大きな法律事務所となり,事務所も名古屋を中心に9つの事務所を開設するまでに成長いたしました。

 

 これは,弁護士の人数では全国でも上位0.1%に入り,東海地区では最も大きい法律事務所となります。

 

 関東地区でも,東京駅法律事務所・柏駅法律事務所のほか,来年には池袋に新しく事務所を開設予定となっております。

 

 これからも,より多くの方々からご依頼・ご相談をいただければ幸いと思っております。

 

 

 また,12月5日からは,より多くの方々に弁護士法人心の取り組みや理念を知っていただきたく,テレビCMの放送を開始いたしました。

 

 CMは「担当分野篇」と「研修篇」の2種類があり,どちらも弁護士法人心の理念や弁護士業務に懸ける思いが良く表現されていると思います。

 

 CMはyoutubeや弁護士法人心のfacebookでも見ることができるので,是非そちらもチェックしていただきたいと思います。

 

 弁護士法人心のfacebookページはこちらをご覧ください。

 

 

 さて,世間は年の瀬,この1年を振り返っている方も多いかと思います。

 

 私もこの1年で交通事故を中心に200件以上のご相談を受け,そのうち実際にご依頼を受けた案件に限っても,常時100件近くの案件を取り扱わせていただきました。

 

 テレビCMでもご紹介させていただいていますが,弁護士法人心では,より高度なサービスを提供できるよう,弁護士ごとに担当分野を決めて,集中的に経験を積むことで,ハイスピード・ハイクオリティの実現を目指しています。

 

 たとえば,交通事故の分野でいうと,一般的な弁護士であれば1年で扱う交通事故の件数は多くても10件程度,まったく交通事故案件を取り扱わない弁護士もいます。

 

 ですので,単純計算ですが,私はこの1年で平均的な弁護士の10年分以上の経験を積んだことになります。

 

 来年もさらなる研鑽と依頼者のご満足を目指して邁進していければと思います。

 

 それではよいお年を。

主婦の休業損害

 こんにちは。

 東京の弁護士の伊藤です。

 

 前回は自営業者の休業損害についてお話ししましたが,今回も同じく休業損害で問題となることの多い,主婦の休業損害についてお話させていただきたいと思います。

 

1 主婦にも休業損害は発生する

 主婦が交通事故に遭ってしまった場合,家事ができなくなったとしても現実に金銭的な減収はないので,休業損害は発生しないと思われている方もいらっしゃいます。

 しかし,主婦の家事労働には,家族が外で働くことをサポートする「内助の功」があります。

 また,仮に主婦の家事を他人に依頼するのであれば相当の対価を要するはずです。

 そのため,主婦が交通事故に遭った場合,その影響でできなくなった家事労働には財産的価値があり,これを休業損害を請求することが可能です。

 

2 主婦の休業損害の計算方法

 主婦の休業損害は,日額と休業日数を掛け合わせて計算するのが基本となります。

 ただし,日額と休業日数の考え方は自賠責保険の基準と裁判所の基準とで考え方が異なっています。

 

⑴ 自賠責保険の基準

 自賠責保険の基準では,日額は1日当たり5700円で計算します。

 休業日数は,原則として通院した日数で計算します。

 

⑵ 裁判所の基準

 裁判所の基準では,女性の全年齢の平均賃金を365日で割ったものを日額とするのが一般的です。

 平成30年11月時点で公表されている最新の統計に基づくと,日額は1万0351円となります。

 休業した期間は,事故の大きさや症状の重さを考慮して認定されます。

 また,家事への支障は症状が回復するにしたがって減少していくと考えるのが自然ですので,その点も考慮されます。

 たとえば,事故直後1週間は100%の家事への支障があり,その後の1か月は50%,さらにその後の1か月は25%・・・と次第に影響は少なくなっていくと考えることがあります。

 金額の計算でもその割合に応じて認定することが多いです。

 

3 兼業主婦の場合

 最近では主婦として家事をしながら,外で仕事をして給与所得を得ている人も大勢いらっしゃいます。

 このような兼業主婦の場合でも,主婦としての休業損害を受け取ることは可能です。

 

 ただし,主婦としての休業損害と給与所得者としての休業損害を両方受け取るということはできないという取り扱いになっています。

 

 たとえば,福岡地裁平成26年2月13日判決は,

 

 「このような兼業主婦の場合,専業主婦についても,女性労働者の平均賃金額を基礎として,家事労働に従事できなかった期間について休業損害が認められることとの均衡等に鑑み,現実の収入額と女性労働者の平均賃金額のいずれか高い方を基礎収入とするのが相当であると解される。」

 

 と判断しています。

 

4 適切な賠償金を受け取るために

 主婦の休業損害は被害者の方がもらえると思っていないケースが多くあります。

 そして,相手の保険会社も被害者に対して何も伝えないまま,休業損害が計算に入っていない示談案を提案してくることが少なくありません。

 本来もらえるべき賠償金がもらえなくなってしまうということにならないよう,特に注意していただきたいと思います。

自営業者の休業損害

 こんにちは。

 東京の弁護士の伊藤です。

 

 今回は,交通事故で仕事をお休みされた場合の休業損害,とくにその中でも問題になることの多い自営業者の場合についてお話ししようと思います。

 

 交通事故の影響でお仕事をお休みされた場合,その分の収入が減ってしまった場合は,交通事故の影響で休業を余儀なくされたと認められる限りで,相手方保険会社に対して,賠償を請求することができます。

 

 一般的なサラリーマンの場合は,会社に「休業損害証明書」を発行してもらい,休んだ日数と事故前の収入状況を証明してもらえます。

 そのため,休業損害の請求比較的容易といえます。

 

 しかし,自営業者の場合,サラリーマンのように会社に休業損害証明書を発行してもらうことができないので,収入の減少を証明するのが難しいことが少なくありません。

 

 以下では自営業者の休業損害の計算方法について,実務上採用されることの多い考え方をいくつか紹介いたします。

 

1 事故前後の収入を比べて減収している金額を休業損害とみなす方法

 単純に事故前後の収入を比べて減収になった分を休業損害とする考え方です。

 一見すると,この方法が一番収入の減少を正確に表しているように思えます。

 しかし,実際は経営が順調で,休業したにもかかわらず事故前より収入が増加しているケースもあったりして,その場合は減収が数字の上ではないことになってしまいます。

 また,元々自営業は収入の上下があるもので,減収があったとしても交通事故による休業の影響なのか争われることも少なくありません。

 

2 事故前年度の確定申告上の所得を365日で割り,休業日数をかける方法

 経験上,実務では最も多く使われている計算方法であると思われます。

 この計算方法では,たとえば事故前年度の確定申告上の所得が365万円,休業した期間が30日だとすると,所得365万円÷365日×休業日数30日=30万円が休業損害として認められます。

 しかし,この方法は節税対策を行った結果所得が低く抑えている場合に,休業損害が実収入と比べて過少に評価されてしまう欠点があります。

 また,事故前年度の経営が不振でたまたまその年だけ所得が減少していた場合や,確定申告をしていない場合(申告漏れやサラリーマンから独立して間もない場合など)に不都合が生じることがあります。

 

 上記の不都合を回避するために,弁護士が交渉する場合は,いろいろな対策を講じます。

 たとえば,確定申告上所得が低く申告されているケースでは,経費のうち休業していても発生するもの(固定費)も損害に含めるよう交渉することがあります。

 また,事故前年度だけ収入が下がっている場合は,過去数年間の収入の平均所得をベースに計算するよう求めたり,確定申告が未了の場合はそれに代えて銀行口座の出入金記録を提出して所得を証明することが考えられます。

 

 自営業の休業損害は,理論上も交渉上も難しいポイントが多くありますので,交通事故に遭った自営業者でお仕事をお休みされた方は,まず一度弁護士に相談することをお勧めいたします。

交通事故の治療と「症状固定」

 こんにちは。 東京の弁護士の伊藤です。

 

 今回は,交通事故の治療や賠償に大きく関係してくる「症状固定」についてお話ししようと思います。

 

1 「症状固定」とは

 症状固定とは、交通事故による怪我の症状が変化しなくなった状態、言い換えれば、治療をしても症状が改善されなくなる状態をいいます。

 

 これには、治療を受けると一旦症状が緩和されるが、しばらくするとまた元の状態に戻ってしまうような一進一退の状況も含みます。

 

2 症状固定となった場合の交通事故治療への影響

 症状固定となった場合、それ以降の治療費や通院のための交通費、休業損害の賠償は、加害者側に請求することができなくなります。

 

 これは、治療費等は治療の必要性がある場合に相手に請求できるところ、治療を行っても症状が改善されない状態であるなら、治療を行っても行わなくても変わらないのであるから、その治療の必要性が認められない,と考えられるからです。

 

 症状固定となった以降でも、怪我の痛みを抑えるために通院することは妨げられるものではありませんが、その治療費はすべて自己負担になります。

 

 このように、症状固定の時期によって、治療費等を相手にどこまで請求できるかという範囲が変わってくるため、症状固定の時期がいつであるかは交通事故において非常に重要な問題となります。

 

3 症状固定の時期は誰が決めるのか

 症状固定の時期は、最終的には裁判官が判断するものではありますが、交渉段階では、交通事故の当事者が決めることができます。

 

 ただし、加害者側の保険会社は、前述のとおり症状固定の時期によって賠償しなければならない治療費等の金額が変わってくるため、できるだけ早い時期に症状固定とするよう働きかけてきます。

 

 場合によっては、まだ痛みが残っていて治療を続けたいのに、症状固定であるとして、手続きを進めようとしてくることもあります。

 

4 症状固定時期は医師の判断が尊重される  

 症状固定時期を判断するにあたっては、基本的には医学的な専門知識を有する医師の判断が尊重されます。

 

 症状固定時期をめぐって争いになっている場合は、まず医師の判断を確認して、まだ症状固定には至っていないと判断してもらうことが非常に重要です。

 

 そのためには、普段の診察から、医師に対してまだ痛みが残っていること、そして少しづつだが治療により改善していることをしっかり伝えて、医師に自分の症状を正確に把握してもらうよう努めることも大事になります。

 交通事故の症状固定についてはこちらもご覧ください。

信号無視に関する罰則や責任

 

 こんにちは。東京の弁護士の伊藤です。

 

 交通事故案件を取り扱っていると,信号無視で事故が発生したという案件も少なからず見受けられます。

 今回は信号無視に関する罰則や,民事上の責任に及ぼす影響などについてお話したいと思います。

 

1 信号無視に関する罰則

 信号無視に関する規制は道路交通法が定めています。

 道路交通法7条は,道路を通行する車両は、信号機の表示する信号に従わなければならないと規定しています。

 そして,赤信号の場合は,車両は停止位置を越えて進行してはならないとされています。

 また,黄色信号の場合でも,停止位置に近接していて止まることのできない場合を除いては,停車位置を越えて進行してはならないこととされています(道路交通法施行令第2条)。

 これに違反した場合は,故意に信号無視したときは3か月以下の懲役又は5万円以下の罰金に,過失で信号無視してしまったときは10万円以下の罰金に処せられる可能性があります(道路交通法第119条1項一の二及び同条2項)。

 

2 交通反則通告制度

 ただし,信号無視に対する罰則については交通反則通告制度が定められています。

 交通反則通告制度とは,比較的軽微な交通ルール違反については,反則金を支払い,免許の減点を受けることで,刑罰を免れることができる制度です。

 

3 信号無視の反則金と違反点数

 赤信号を無視した場合,反則金は普通車の場合は9000円,違反点数は2点となります。

 黄色信号(点滅信号)を無視した場合,反則金は普通車の場合は7000円,違反点数は2点となります。

 違反点数が蓄積した場合は,免許停止などの処分が下ることがあります。

 

4 信号無視して事故を起こしてしまった場合

  信号無視の結果事故を起こし,相手に怪我を負わせてしまった場合は,単なる信号無視では済まず,業務上過失致傷罪や,悪質な信号無視の場合は危険運転致傷罪が適用される可能性もあります。

 また,信号無視して交通事故を起こし相手に損害を与えてしまった場合は,罰金とは別に相手に与えた損害を賠償しなければなりません。

 その場合でも,信号を守って事故を起こしてしまった場合と比べると,当然ながらその責任や賠償すべき金額も大きくなってきます。

 たとえば,交差点で一方が青信号で進入し,もう一方が赤信号で進入して衝突したというケースでは,原則として赤信号で進入した車両が一方的に悪いと考えられ,相手に生じた損害のすべてを賠償しなければならず,また,自分に生じた損害もすべて自分の責任となり,相手に賠償を請求することはできないことになります。

 

5 このように,軽い気持ちで起こした信号無視でも,重大な結果を招くことは少なくありません。

  車を運転する方は交通ルールを守って運転する必要があります。

交通事故と過失割合

 東京の弁護士の伊藤です。

 

 本日は交通事故でしばしば問題となる過失割合についてお話したいと思います。

 

 1 過失割合とは

 過失割合とは、簡単にいえば、交通事故が起きてしまった原因について、どっちがどれだけ悪いかを決めるものです。

 過失割合に応じて、交通事故によって生じた損害を誰が負担すべきかも変わってきます。

 例えば、被害者に2割の過失が認められる場合は、ケガの治療費や車の修理費も2割については被害者自ら負担すべきということになりますし、逆に加害者側のケガの治療費や車の修理費も、2割分は被害者であっても支払わなければならないということになります。

 

 2 過失割合の決め方

 過失割合は、示談段階においては、当事者双方の話し合いで決定することとなります。

 そのため、この段階では当事者が納得しなければ過失割合を決めることはできません。

 逆に言えば、お互いが納得さえすれば、過失割合は自由に決めることができるとも言えます。

 また、話し合いで決まらず、裁判となってしまった場合は、裁判官が最終的に判断して決定されます。

 事故直後、現場検証などで警察官が過失割合について言及することがありますが、この警察官の判断で決まるわけではありません(もちろん、当事者が過失割合を決めるうえでのひとつの参考にはなり得ます。)

 

 3 過失割合の判断基準

 示談段階では、合意さえあれば過失割合は自由に決めることができるとはいえ、その判断基準がわからなければ、本当にその過失割合が正しいのか納得できないというケースは多いと思います。

 そこで、実務家の間では、別冊判例タイムズ38号(通称「緑の本」)という過去の裁判例をもとにした過失割合の目安集のようなものを参照して、適切な過失割合を検討するのが主流となっています。

 保険会社も、この基準を目安として過失割合を提案してくることが多い傾向にあります。

 

 4 過失割合を有利に変えるために

 もっとも、上述の目安というのはあくまで目安に過ぎません。

 実際の交通事故の態様は千差万別ですから、基準は参考にしつつも、具体的な事情を示したうえで、被害者が適切だと考える過失割合を主張していくことが重要となります。

 

 5 過失割合を争うための証拠となるもの

 過失割合を争う場合は、客観的な資料があれば、有力な交渉材料になり得ます。

 たとえば、ドライブレコーダーや、事故後に警察官が作成した実況見分調書、事故の車両の損傷状況などです。

 ただし、実況見分調書は弁護士でなければ取り寄せることは困難です。

 また、車両の損傷状況なども、間接的に事故状況を推測させるものなので、説得的に主張する必要があります。

 

 過失割合が問題となるケースは一度弁護士に相談して、相手方の提案する過失割合が適切かどうか、相手の主張をくつがえすだけの交渉材料を集められるかどうかを確認するとよいでしょう。交通事故の過失割合についてはこちらもご覧ください。

弁護士に依頼すると裁判になるのか?

1 弁護士のイメージ

 

 こんにちは。

 

 東京駅法律事務所の弁護士の伊藤です。

 

 突然ですが,みなさんは「弁護士」と聞いてどんなイメージを思い浮かべるでしょうか。

 

 多くの人は,弁護士=裁判所の法廷に立って熱弁をふるう姿をイメージされるかもしれません。

 

 ただ,そのイメージから,

 

「弁護士に何か依頼すると,大ごとになって裁判にまで発展してしまうのではないか?」

「穏便な解決のためには,むしろ弁護士に依頼しない方がいいのではないか?」

 

と考えてしまう方もいらっしゃるようです。

 

 しかし,弁護士の仕事,弁護士に依頼するメリットは,裁判だけではありません。

 

 以下では,私の注力分野のひとつである交通事故案件を例に,裁判以外の弁護士の活動を少しだけご紹介したいと思います。

 

2 交通事故発生直後~治療中

 交通事故が発生した直後は,被害者の方はまず治療に専念していただくことが第一です。

 

 では,治療するのはお医者さんだから,弁護士の出番はないかというと,そのようなことはありません。

 

 交通事故の治療は,多くの場合は保険会社が当初のうちは治療費を支払ってくれますが,一定期間たつと,その治療費の支払いを打ち切ってきます。

 

 このとき,弁護士は,打ち切りの延長を求めて保険会社と交渉することがあります。

 

 また,打ち切りされないように,保険会社が打ち切りしにくい通院の方法などを陰からサポート,アドバイスすることも多いです。

 

3 後遺障害の申請代行

 治療をしても怪我が完治せず症状が残ってしまった場合,後遺障害の等級認定を申請することが考えられます。

 

 この申請は,保険会社に任せることも可能ですが,保険会社は後遺障害が認定されてしまうと,支払うべき賠償金が増えてしまうため,認定が下りるよう積極的に活動してくれないことがほとんどです。

 

 適切な後遺障害等級の認定を受けるため,必要な証拠を収集し,申請を代行することは,交通事故における弁護士の重要な活動のひとつです。

 

4 示談交渉

 交通事故において,弁護士が最も活躍するといえる場面が,最終的な賠償額を決める示談交渉です。

 

 弁護士に依頼した場合、保険会社が提示する基準よりも高い、裁判所が判断する場合の金額を基準に交渉することが可能で、示談金の増額が期待できます。

 

 基本的には交渉ベースで話し合いが進み,お互いが納得できる金額を探ります。

 

 交渉を尽くしてそれでも折り合いが付かない場合に,はじめて裁判に踏み切るかどうかを検討することになります。

 

 もちろん,依頼者の意向を無視して勝手に弁護士が裁判を起こすことはありえません。

 

5 大げさに考えず,まずは相談を

 このように,弁護士の活動は裁判以外にも多岐にわたります。

 

 弁護士に依頼することを大げさなことと考えず,まずはお気軽に相談ください。

 

 お話をうかがって,相談者の希望に沿った解決方法を提案させていただきたいと思います。

 弁護士に東京で依頼をお考えの方はこちら

治療費の打ち切り後の通院について

こんにちは。

 

東京駅法律事務所の弁護士の伊藤です。

 

前回までは保険会社の治療費の打ち切りについてのお話をしてきました。

 

今回は治療費を打ち切られてしまった後のことについてお話したいと思います。

 

1 治療費の支払いが打ち切られた場合

 

保険会社から治療費の支払いを打ち切られてしまった場合、その後も通院を続ける場合は、治療費を自己負担で通院しなければならなくなります。

 

保険会社が治療費の支払いを打ち切った場合でも、治療の必要性が認められれば,事後的に打ち切り後の治療費も保険会社に請求することが可能です。

 

とはいえ、一旦は窓口で治療費を負担することになるので、その負担を嫌って治療をやめてしまう人もいるようです。

 

しかし、痛みが残っているのに治療をやめてしまうのは、お体を治すという観点ではやはりマイナスです。

 

また、慰謝料の計算や後遺障害が認定されるかどうかという関係でも、通院を長く続けているかは非常に重要です。

 

そのため、お医者さんの方で症状固定と判断されるまでは、しっかりと通院を続けていただくことをおすすめしています。

 

そして、その場合も、健康保険や労災保険などの各種社会保険を使えば、治療費の負担を軽減しながら通院することができます。

 

2 健康保険

 

交通事故では健康保険が使えないという話があるようですが、けしてそのようなことはなく、被害者の意思で使うか使わないかを決めることができます。

 

健康保険を使用した場合、1~3割の負担で通うことができます。

 

なお、労災保険が使える場合には健康保険を使うことはできず、間違って健康保険を使ってしまった場合は、健康保険組合が負担した部分を一度返還する必要が生じることがございますのでご注意ください。

 

3 労災保険

 

お仕事中の交通事故や、通勤途中に事故に遭った場合は、労災保険を使うことができます。

 

労災保険が使用できる場合、治療費の全額を労災がてん補してくれるという大きなメリットがあります。

 

労災保険の使用については、勤務先に書いてもらう書類もありますので、勤務先に問い合わせてみるのがいいでしょう。

 

 

4 第三者行為災害届

 

交通事故のための治療に健康保険や労災保険を使用する場合、健康保険組合や労働基準監督署などに「第三者行為届」を提出する必要があります。

 

これは、交通事故の治療費は本来事故の加害者がすべて支払うべきものであるところ、健康保険や労災が治療費を一部負担した場合は、加害者に代わって医療機関に支払ったということができ、その分は最終的に加害者に求償することになります。

 

そのために、求償すべき加害者がいることを届け出るのが第三者行為届です。

 

第三者行為届の提出手続が完了しなくても、健康保険や労災を使用して通院することはできます。

 

手続未了を理由に保険治療を受けさせてくれない医療機関があると聞きますが、その場合は現在手続中であること、医療機関は保険治療を拒否できないことを告げて治療を受けさせてもらってください。

 

5 社会保険制度を上手に使って、治療を続けてしっかりとお体を治しましょう!

保険会社による治療費の打ち切りについて②

 東京の弁護士の伊藤です。

 今回も,前回に引き続き,保険会社による治療費の打ち切りについてお話したいと思います。

 

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1 保険会社が治療費の支払いを打ち切る理由

 

 保険会社は,事故から3か月から6か月くらいで治療費の打ち切りを告げてくることが多いです。

 

 これは,交通事故による典型的な怪我であるムチウチなどは,統計上3~6か月くらいの期間で治るとされているため,これ以上の期間を超えて治療費の先払いを続けると,必要ない治療費まで払いすぎてしまう可能性があると考えるのが1つの理由です。

 

 また,通院が長引くと,当然ながら保険会社が支払うべき治療費が高額となります。

 

 さらに,交通事故の慰謝料は通院期間の長さに応じて金額を決めるのが一般的なため,通院が長引くことは,保険会社にとって支払うべき慰謝料も増えることも意味します。

 

 そのような事態を回避するため,治療費の支払いを打ち切ると同時に通院の終了を促すことで,支払わなければならない金額を抑えようと保険会社は考えるのです。

 

2 治療費の支払いを延長してもらうためには?  

 

⑴ 主治医の判断を確認して,治療が必要であることを伝える 

 

 保険会社は一括対応を打ち切った後でも,治療の必要性がある場合には,その治療費を後から支払う必要があります。

 

 治療の必要性があるかどうかは交通事故による怪我が「症状固定」に至っているかどうかで判断されます。

 

 「症状固定」とは,治療の効果がなくなり,症状が変化しなくなった状態をいいます。

 

 そして,症状固定の時期は,最終的には裁判所が判断することになるものですが,基本的には医師の判断を尊重するものとされています。

 

 そのため,保険会社も,主治医の症状固定の判断を重視していることが多く,主治医がまだ症状固定に至っていないと判断している場合には,保険会社は打ち切りを延長して治療費を支払ってくれることもあります。

 

 したがって,保険会社から不当に打ち切りを告げられた場合には,速やかに主治医の判断を確認し,保険会社に主治医の意見を伝えて打ち切りの延長を交渉することが考えられます。

 

⑵ 期限を区切る

 

 保険会社は治療費の先払いがいつまで続くかわからないのを非常に嫌がるので,たとえば「〇月までは一括対応を続けてほしい」と期限を区切って延長を求めれば,期間にもよりますが対応してくれる可能性があります。

 

⑶ 保険会社から通院の条件が付される場合がある

 

 一括対応の延長の交渉の中で,相手から延長の条件が出されることがあります。

 

 たとえば,治療する部位を減らすよう求められたり,自由診療ではなく健康保険の範囲で治療するよう求められたりすることがあります。

 

 治療方法が制限されることになるので,お体の回復具合なども勘案して応じるかどうかを判断する必要があります。

 

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 今回は,保険会社が治療費を打ち切る理由と打ち切りを延長するための手段の一例を紹介しました。

 

 それでも保険会社が一括対応の延長に応じない場合,以降の症状固定までの治療費は,一旦被害者自身が負担し,示談段階で保険会社に請求することになります。

 

 その場合の治療費の負担をどうやって抑えるかは,また次回のブログでご紹介したいと思います。

 保険会社による治療費の打ち切りにつきましては,こちらもご覧ください。

保険会社による治療費の打ち切りについて①

 東京の弁護士の伊藤です。  

 

 当事務所では,多くの交通事故案件のご相談を承っておりますが,ご相談の中でも,保険会社による治療費の打ち切りのお悩みは多く寄せられています。  

 

 今回は,この治療費の打ち切りについてお話させていただきたいと思います。

 

 交通事故に遭われた場合,その治療費は,多くの場合保険会社が医療機関に直接支払い,被害者は窓口負担なく通院できます。

 

 これを保険会社による「内払い」とか「一括対応」と呼ばれます。

 

 しかし,通院開始からしばらくたった後,保険会社から被害者に対し,「治療費の内払いは〇月×日までとさせていただきます。」というような話をしてきて,それ以降治療費の支払いを打ち切ってくることがあります。

 

 保険会社の治療費の支払いが打ち切られてしまうと,被害者は,通院した際は治療費を自分で病院に支払わなくてはならなくなります。

 

 このとき,「自分は被害者なのに,加害者側である保険会社が治療費の支払いを拒むなんて許されるの?」と疑問や憤りを覚える方も少なくないと思います。

 

 実は,法律的には,治療費は一旦被害者が病院に支払った後,それを事後的に損害の賠償として加害者側の保険会社に請求する,というのが原則の流れとなっています。

 

 ですので,保険会社による治療費の内払いは,法律の定めとは別の,いわば保険会社の自主的なサービスというべきものなのです。

 

 そのため,保険会社による治療費の内払いは,法律的に強制されるものではなく,保険会社の判断で打ち切ることも許されてしまいます。

 

 治療費の支払いが打ち切られてしまった場合は,法律の原則に戻り,被害者が一旦治療費を病院に支払い,後から保険会社に治療費分のお金を請求することとなります。

 

 誤解されている方も多いかもしれませんが,治療費の支払いが打ち切られたからといって,その後の治療費がすべて自己負担となり,まったく保険会社に請求できなくなるということではありません。

 

 もちろん,通院して治療を続けることが禁止されるわけでもありません。

 

 しかし,後から請求できるといっても,一旦は治療費を払わなければいけないのは,被害者にとって大きな負担となることが少なくありません。

 

 また,「どうせ後から請求を受けるなら,保険会社はなぜ途中で治療費の支払いをやめるの?」という疑問を持つ方もいると思います。

 

 なぜ保険会社は治療費の支払いを打ち切ってくるのか?

 打ち切りを回避するには,治療費の負担を減らすにはどうしたらいいか?  

 

 これらの疑問については,次回以降のブログでお話したいと思います。

ご挨拶

はじめまして。

 

弁護士の伊藤貴陽(いとうたかあき)と申します。

 

東京は八重洲にある,弁護士法人心東京駅法律事務所で勤務しております。

 

この度,ブログを開設させていただくこととなりました。

 

このブログでは,弁護士業務の中で感じたことや日常の出来事,一般の方々にも知っておいてもらいたい法律の知識などを発信していきたいと思います。

 

どうぞよろしくお願いいたします。

 

私の所属する弁護士法人心では,交通事故案件を多数扱っており,私自身,交通事故チームの一員として,多くの交通事故案件を扱っています。  

 

交通事故案件に関わる中で痛感させられることは,いかに被害者の気持ちに寄り添うことが大事であるかということです。

 

交通事故案件における弁護士の仕事とは,法律の知識を駆使し,依頼者に代わって加害者や保険会社と交渉することで,正当な賠償金を勝ち取ることが1つの最終的な目標ではあります。

 

しかし,交通事故の被害者が負う痛みや苦しみは,本来お金に代えられるものではありません。  

 

数十万,数百万の示談金を勝ち取ることもありますが,それだけが弁護士の仕事ではないと思います。

 

私たち弁護士法人心の弁護士は,被害者の「心」に寄り添うことを第一に考え,事故から通院,相手との交渉,示談の成立や裁判決着と至るまで,交通事故被害者のトータルサポートを行っています。

 

私もご相談いただいた依頼者の方々の気持ちに応えるため,一層の研鑽を積んでいきたい所存であります。  

 

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 

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