交通事故治療の通院時の注意点

 

 こんにちは。東京の弁護士の伊藤です。

 

 今回は,交通事故に遭った際の通院時の注意点についてお話いたします。

 

 どうやら,交通事故に詳しくない弁護士事務所では,交通事故に遭った被害者に対して,「保険会社と医師の言う通りに通院しておけば大丈夫」という,いい加減なアドバイスをするところが少なくないようです。

 そして,言われるがままに漫然と通院した結果,十分な治療や賠償が受けられずに困っているという相談が結構な頻度で寄せられます。

 

 そのため,最低限の注意点をお伝えさせていただければと思います。

 

1 事故直後すぐに病院に行くこと

 まず,事故に遭った場合は,すぐに病院や整形外科に通うことが必要不可欠となります。

 事故から病院での初診が1週間以上空いてしまうと,そのケガが本当に交通事故によるものかわからなくなってしまい,ケガの補償がまったくもらえなくなってしまうこともあります。

 仮に交通事故によるケガであると認めてもらったとしても,「1週間病院に行かなくても我慢できるケガなんだ」と症状を軽く見られてしまうことは間違いありません。

 

2 医師にはしっかり症状を伝えること

 医師には,自分の症状を正確に伝え,診断書やカルテにしっかり記録してもらいましょう。

 交通事故のケガは,一般的には事故直後が症状が一番重いはずと考えられています。

 そのため,事故直後に訴えていなかった痛みをあとになって医師に伝えても,事故と関係なく発生したものだと判断されてしまうことがあります。

 また,痛みのある箇所を伝え忘れると,医師は完治したと思い,治療の必要はもうないと誤解してしまうおそれがあります。

 

3 通院先について

 基本的には,整形外科のほか,接骨院(整骨院)などに通院して治療を行うこととなります。

 これらは,国家資格である医師や柔道整復師による治療となるため,治療の必要性が認められる限り,原則として治療費の支払いの対象となります。

 一方,民間療法である整体やカイロプラクティックなどは,一部例外を除いて治療費の支払いの対象とならないことがほとんどなので,注意が必要です。

 

4 通院のペース

 整形外科の医師の診察は,最低でも月に1回,30日期間を空けないように受診することが非常に重要です。

 保険会社は,医師の書く診断書をもとに被害者の身体の状態を把握しています。

 医師の診断がないと,被害者のケガが治ったのか,今後も治療を続ける必要があるのかわからなくなってしまい,以降の治療費は,因果関係が不明であるとして支払いを拒まれてしまう危険が高まります。

 

5 精密検査の重要性

 多くの場合ではレントゲン程度は撮りますが,それに加えて,CTやMRIなどの精密検査をはやめに受けておくことをおすすめします。

 治療の方針を決めるうえでも役立ちますし,「医師が精密検査は必要ないと判断する程度の軽いケガだ」という誤解を招かないためにも重要となります。

 

 

 通院の際の注意点をしっかり押さえて通院した人と,そうでない人では,治療を受けられる期間や最終的にもらえる賠償金の金額が大きく変わってくることも少なくありません。

 

 そのため,早い段階から弁護士に相談して具体的なアドバイスを受けておくことが大事です。