交通事故の治療中に再び事故に遭ってしまった場合

交通事故に遭い、まだ治療を続けている段階で、2度目の事故に遭ってしまうという方がたまにいらっしゃいます。

 

この場合、治療費はだれが支払うのか、慰謝料などの示談交渉はどうなるのかなど、複雑な問題が生じてくることがあります。

 

1 1回目と2回目とでケガをした場所が違う場合

 

たとえば、1回目の事故では、自転車に乗っているときに自動車とぶつかって腕を骨折し、腕の治療をしていたが、2回目の事故では、自動車に乗っているときに追突され、首や腰を痛めた場合です。

 

この場合、1事故目で発生した腕のケガについては、2事故目の加害者には責任はありませんし、逆に、2事故目で発生した首や腰のケガについては、1事故目の加害者には責任がありません。

 

ですので、1事故目の加害者の保険会社は腕の治療費を、2事故目の加害者の保険会社は首と腰の治療費を、それぞれ並行して支払うことになります。

 

2 1回目と2回目のケガが同じ場所の場合

 

たとえば、1事故目が追突事故で首を痛めて治療中のときに、また追突事故に遭い、だんだん良くなっていた首がまた悪化してしまった場合です。

 

この場合、首の症状は1事故目と2事故目の両方の影響があることになり、誰がその治療費を負担すべきなのか問題となります。

 

実務上は、2事故目の加害者の保険会社が引き継ぐような形で治療費の全額を負担することが多いです。

ただし、本来は1事故目の加害者にも割合的に責任があるので、2事故目の保険会社が負担した1事故目の保険会社が負担すべき治療費は、保険会社間で調整して求償することになります。

 

3 示談の際の注意点

 

2度目の事故に遭った場合、治療費等の対応が2度目の事故の保険会社に引き継がれたことで、1度目の事故の保険会社から示談をすすめられることがありますが、この際には注意が必要です。

 

後々、2度目の事故の保険会社にも損害賠償を請求した際、「損害のうちこの部分は2事故目の影響はなく、すべて1事故目が原因だから、うちは払えない」と損害の一部の支払いを拒否してくる場合があります。

 

この場合に、1事故目の保険会社に請求しようと思っても、その時点で1事故目の保険会社とすでに示談を取り交わしてしまっていた場合、解決済みであるとして、もう1事故目の保険会社に請求することは原則としてできません。

 

そのため、1事故目の保険会社と先行して示談する場合は、自分に不利益が生じないか慎重に検討する必要があります。

 

深く考えずに示談すると、取り返しのつかないことになってしまう場合がありますので、立て続けに事故に遭ってしまったというような厄介なケースでは、示談の前に弁護士に相談することをおすすめします。