詐欺破産罪


つい先日、ある破産者が「詐欺破産」の罪で逮捕されたというニュースが報道されました。



詐欺破産とは、債権者を害する目的で、財産を隠匿するなどして破産手続を取る行為で、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金という非常に重い犯罪です(破産法265条)。



本来、自己破産する場合には、破産者は一定の財産を除いては、所有する財産を清算して債権者に分配しないといけません。



しかし、ニュースの件では、破産者は破産直前に時価約600万円の暗号資産を海外の口座に移し、それを破産手続の際に申告しないで分配を免れようとしたようです。



自己破産の際には、裁判所から給与明細や源泉徴収票、保有している口座の通帳の写しなど、多くの資料の提出が求められます。



その目的のひとつが、裁判所が破産者のお金の流れを調査し、今回の件のような財産隠しをしていないかを確かめることにあります。



このニュースの件では、破産者が暗号資産の存在は隠したが、その他の資料を照合した結果、不自然なお金の動きを裁判所が見抜いたものと思われます。



破産の際に提出する資料はこのように大きな意味を持ちます。



そのため、資料に不足があったり、内容に不自然な点があってきちんと説明ができなかったりすると、詐欺破産を疑われるというレベルまでは行かないにしても、破産の可否に影響を及ぼす可能性もあります。



破産の申立を行う場合に、資料に不足はないか、不自然な点はないかのチェックは、弁護士が最も多くの時間と労力を費やすところのひとつといえます。


会社代表者の破産


コロナの影響でしょうか、最近、会社を経営していた方からの破産の相談がちらほら寄せられています。



会社といっても、多くのケースは個人事業主が事業を法人化した一人会社というケースが多いです(従業員を何十人も雇っている会社は多くが顧問弁護士をつけているでしょうから、そういった会社はその顧問弁護士に破産手続も頼むのでしょう)。



千葉を含む多くの裁判所は、このような会社代表者個人が破産するケースでは、小規模な会社であっても、同時に破産を申し立てるよう要請されることが通常です。



形式的には、会社と個人は別人格ではあります。



ただ、もし会社代表者が破産してしまうと、法律上、破産開始決定により、会社代表者の地位を失うことになります。



そうすると、会社が動いているケースはもちろん、動いていない場合であっても代表者不在の法人の清算や管理は誰がするのかという問題が生じてしまいます。



そのため、会社と代表者は同時に破産を申し立てる必要があります。



破産申し立てをする場合、破産者の住所地の管轄の裁判所に申し立てる必要がありますが、個人の住所と会社の住所とが異なっている場合でも、同じ地方裁判所に申し立てることができます。



また、会社の破産が絡む場合は、原則として管財事件となり、そのための予納金を裁判所に納める必要がありますが、同時に申し立てることで予納金は1件分で済みます。



会社破産(法人破産)は個人の破産と比べて手続や用意すべき資料などが一層複雑になるため、弁護士に相談することをおすすめします。


時効の援用と信用情報

新規でローンを組もうと思ったり,クレジットカードを作ろうと思ったら審査が下りず,信用情報を調べたら,過去の借金の滞納の記録が残っていたという相談を受けることがあります。


さらに,滞納は5年以上前で,「5年で時効となり消えないのか」とか「信用情報の保有期間は5年と聞いたが,なぜまだ残っているのか」といった質問を受けることがあります。


そこで今回は時効の援用と信用情報についてお話ししたいと思います。


まず,時効の援用についてですが,借金は最終取引から5年を経過することで時効となります。


ただし,5年経過すれば自動的に消滅するのではなく,債務者から債権者に対して時効により消滅させるという主張を通知する必要があります。


一方,信用情報についてですが,信用情報機関によって保有期間は異なるものの,短いところだと1年程度,長いところだと5年程度記録を残すという運用となっています。


この保有期間については,借金が完済された場合や,消費者金融から債権回収業者に譲渡された場合の情報は,上記の保有期間で削除されることになります。


しかし,返済を継続している場合や,返済しないまま滞納になっている場合は,保有期間のカウントが開始することなく記録は残り続けることとなります。


つまり,借金の処理をしない限り,具体的には時効の援用をしない限りは,たとえ5年以上前の借金であっても,信用情報には残り続けることとなります。


時効の援用を行った場合,正確には信用情報から直ちに削除されるのではなく,信用情報の記載が「異動(滞納)」から「完了」に訂正・変更されます。


この時点で,滞納扱いから完済と変わらない状態に変更されることが一般的です。


その後,完了になってから保有期間が経過されれば,信用情報は完全に削除されることとなります。


過去の借金についての清算を考えている方は,弁護士に相談してみるとよいでしょう。