自賠責保険の保険料が値下げとなります。

先日,自賠責保険の支払基準が改正されることをこのブログで取り上げましたが,この自賠責保険に加入するための保険料も,2020年の4月から変更となるようです。

 

2020年1月22日,金融庁の審議会の正式決定があり,自賠責保険の保険料は4月から平均で16・4%引き下げられることになりました。

 

沖縄県と離島を除く自家用乗用車の自賠責保険料は、2年契約の場合で,現在2万5830円だったのが2万1550円となり,4280円の値下げとなりました。軽自動車の場合は,同じく2年契約の場合で2万5070円から2万1140円となり,3930円の値下げとなりました。

 

自賠責保険は、徴収した保険料と支払われた保険金との収支を合わせるように保険料が設定されるようになっています。

 

近年,自動車の安全性が向上や自動ブレーキ装置の導入などのおかげで,交通事故の件数や保険金支払額が減っているため、それに応じて保険料も値下げとなるようです。

 

数字を見ても,2018年度の支払額は約7220億円と10年前に比べると10%以上減少しています。

 

とはいっても,弁護士のサポートが必要となるような大きな事故はまだまだ存在しているように思えます。

 

大きな事故の場合,自賠責保険の保険金上限額である120万円を上回る損害が発生することは少なくありません。

 

このときは,強制加入の自賠責保険だけではなく,任意で加入する自動車保険が頼りとなります。

 

自賠責保険料が値下げとなる一方で、任意加入の自動車保険の保険料は,今年の1月から値上げの傾向にあります。

 

東京海上や損保ジャパンといった大手保険会社の任意保険の保険料は,各社約3%前後の値上げとなっています。

 

これは,消費税が10%に引き上げられたこと、民法改正の影響により,保険金の計算方法が変わり,従来より支払う金額の増加が予想されることなどが理由とされています。

 

保険はもしもの時に備えるためのものですから,自賠責保険だけではなく,任意保険にも加入しておくことを強くオススメします。

交通事故を起こしてしまった場合の3つの責任

交通事故を起こしてしまった場合、加害者には,①民事上の責任、②行政上の責任、③刑事上の責任を負うこととなります。

 

1 民事上の責任

 

車の修理代、代車代やレッカー費用といった物的損害、ケガの治療費や休業損害、慰謝料などの人的損害など、相手が被った損害を賠償する責任をいいます。

 

前もって運転手が任意で損害賠償保険に加入していれば、多くの場合ですべての損害を保険で賄うことができます。

 

万が一任意保険に加入していない場合でも、強制加入の自賠責保険により、人的損害については120万円まで賄うことができます。

 

しかし、自賠責保険では物的損害はカバーできないため、修理代が高額になる場合でも自分で賠償しなければなりません。

 

また、大きな事故では人的損害が120万円を超えることも少なくありませんが、超えた場合は自己負担になります。

 

2 行政上の責任

 

免許の減点や、悪質な事故態様の場合は免許の停止、取消などの処分を受ける可能性があります。

 

行政上の処分は、人身事故として届け出が出された場合に処分が行われる可能性がありますが、物損事故扱いにとどまっている場合は、行政上の処分を受けずに済みます。

 

3 刑事上の責任

 

典型的なものとしては、交通事故により被害者を怪我させてしまった場合の自動車運転過失致死傷罪などが考えられます。

 

昨今では自動車事故に対しては厳罰化の傾向があり、上記の自動車運転過失致死傷罪は、懲役7年以下または罰金100万円以下と非常に重い内容となっています。

 

行政上の処分と同様、物損事故扱いにとどまる場合は、刑事上の処分は回避できます。

 

最近では、こういった刑事上の責任に関して、弁護士に刑事弁護を依頼する場合や、被害者との交渉を代行してもらう場合の費用を負担してもらう保険も、一部の保険会社から発売されています。

 

 

事故は起こさないことが一番ですが、注意して運転していたつもりでも起きてしまうのが事故でもあります。

 

万が一の場合に備えて、自動車保険にはしっかりと加入しておきましょう。

 

交通事故の治療中に再び事故に遭ってしまった場合

交通事故に遭い、まだ治療を続けている段階で、2度目の事故に遭ってしまうという方がたまにいらっしゃいます。

 

この場合、治療費はだれが支払うのか、慰謝料などの示談交渉はどうなるのかなど、複雑な問題が生じてくることがあります。

 

1 1回目と2回目とでケガをした場所が違う場合

 

たとえば、1回目の事故では、自転車に乗っているときに自動車とぶつかって腕を骨折し、腕の治療をしていたが、2回目の事故では、自動車に乗っているときに追突され、首や腰を痛めた場合です。

 

この場合、1事故目で発生した腕のケガについては、2事故目の加害者には責任はありませんし、逆に、2事故目で発生した首や腰のケガについては、1事故目の加害者には責任がありません。

 

ですので、1事故目の加害者の保険会社は腕の治療費を、2事故目の加害者の保険会社は首と腰の治療費を、それぞれ並行して支払うことになります。

 

2 1回目と2回目のケガが同じ場所の場合

 

たとえば、1事故目が追突事故で首を痛めて治療中のときに、また追突事故に遭い、だんだん良くなっていた首がまた悪化してしまった場合です。

 

この場合、首の症状は1事故目と2事故目の両方の影響があることになり、誰がその治療費を負担すべきなのか問題となります。

 

実務上は、2事故目の加害者の保険会社が引き継ぐような形で治療費の全額を負担することが多いです。

ただし、本来は1事故目の加害者にも割合的に責任があるので、2事故目の保険会社が負担した1事故目の保険会社が負担すべき治療費は、保険会社間で調整して求償することになります。

 

3 示談の際の注意点

 

2度目の事故に遭った場合、治療費等の対応が2度目の事故の保険会社に引き継がれたことで、1度目の事故の保険会社から示談をすすめられることがありますが、この際には注意が必要です。

 

後々、2度目の事故の保険会社にも損害賠償を請求した際、「損害のうちこの部分は2事故目の影響はなく、すべて1事故目が原因だから、うちは払えない」と損害の一部の支払いを拒否してくる場合があります。

 

この場合に、1事故目の保険会社に請求しようと思っても、その時点で1事故目の保険会社とすでに示談を取り交わしてしまっていた場合、解決済みであるとして、もう1事故目の保険会社に請求することは原則としてできません。

 

そのため、1事故目の保険会社と先行して示談する場合は、自分に不利益が生じないか慎重に検討する必要があります。

 

深く考えずに示談すると、取り返しのつかないことになってしまう場合がありますので、立て続けに事故に遭ってしまったというような厄介なケースでは、示談の前に弁護士に相談することをおすすめします。

あけましておめでとうございます。

1月も既に半分が過ぎてしまいましたが,あけましておめでとうございます。

東京は池袋の弁護士,伊藤です。

今年も何卒よろしくお願いいたします。

 

年末年始はインフルエンザにかかってしまい,不本意にも寝正月となってしまいました。

 

今年1年の厄が払われたと思い,心機一転前向きに頑張っていきたいところです。

 

さて,年末年始のイベントと言えば,私にとっては何と言っても箱根駅伝です。

 

私自身は陸上をやるわけではないのですが,私の母校が最近はちょくちょく出場するものですから,どうしても気になって見てしまいます。

 

スタート地点でありゴール地点である東京・日本橋のすぐ近くには,弁護士法人心東京駅法律事務所があります。

 

そのため,東京駅事務所にて勤務していた昨年までは,沿道でゴール目前の選手を見届けてから休日出勤しておりました。

 

今年の箱根駅伝では,ナイキ社が開発したシューズ「ヴェイパーフライ」を使用した選手が軒並み好タイムをたたき出し,多くの区間で区間新記録が更新されたことで,大いに注目を浴びていますね。

 

あまりの影響力に,陸上連盟にて,このヴェイパーフライを禁止すべきではないかという議論がすでに起こっているようです。

 

しかし,このヴェイパーフライ,現行の規制には全く違反していませんでした。

 

ナイキ社も,現行の規制の中でより良いシューズをつくろうとして生まれたものであり,当然ながら決して安くない開発費用がかかっていると思われます

 

それなのに,後から「強すぎる」という理由で禁止にされてしまうことは,ナイキ社にとっては大きな打撃になってしまいそうですが,陸上連盟がそのような決定をすることは,法律的には問題ないのでしょうか。

 

この点,競技のルールや使用できる道具をどう決めるかについては,陸上連盟の大きな裁量が委ねられています。

 

そのため,規制変更によりヴェイパーフライが使えなくなっても,その決定は原則的には違法ということにはならないと考えられます。

 

もっとも,安易な規制はスポーツ工学の発展を妨げることにもなりかねません。

 

過去には,義足の走り幅跳び選手であるマルクス・レームが,健常者の世界記録を超える記録を出したにもかかわらず,義足が有利に働いているとして,オリンピックに出られなかったことも議論を呼びました。

 

技術の発展とそれに対する規制は,違法か適法かというだけではなく,他覚的な視点から詩論したうえで結論を出すべき問題だと思います。