確定申告を過少申告している場合の休業損害・逸失利益

今年の確定申告は4月15日まで延長されていますが、みなさんは確定申告はもう済んでいるでしょうか。

 

確定申告の内容は、交通事故の損害賠償請求においても関係してくることがあります。

 

自営業者の場合、交通事故により被った休業損害や後遺障害による逸失利益を計算するにあたっては、確定申告の所得金額をベースに日額や年額を計算することが一般的な実務の取り扱いとなっています。

 

当然ながら、所得が大きいほど賠償されるべき損害額も大きくなるのが通常です。

 

しかし、中には、節税(脱税?)を行った結果、確定申告の所得を低く抑えているケースがあります。

 

その場合、確定申告上の所得で計算すると、現実に被った損害と比べて低い金額でしか計算されないことになります。

 

このような場合に、「本当はもっと所得があったんだ!(=だから休業による損害はもっと大きいんだ!)」と主張することは、主張自体が許されないとまではいわれませんが、その認定に当たっては非常に厳しくジャッジされることになります。

 

交通事故を専門的・集中的に扱う東京地方裁判所民事第27部の裁判官は、確定申告外の所得があるという被害者の主張について、以下のように指摘しています。

 

まず、確定申告書に一定額の所得を記載したということは、自らの所得が申告所得額に限られるということをほかならぬ被害者自身が表明していたことになります。

 

これを損害賠償請求の場面になったら自ら有利になるように主張を都合よく変えるということは、自己矛盾の主張であるとして、被害者の主張全体が疑わしいという評価を受けることになります。

 

そのため、売上及び経費の全体を客観的な裏付けのある証拠で立証したうえ、ここから確定申告書に記載した売上及び経費を控除して計算した結果、申告外所得が残ることまでを裏付けをもって立証する必要があるとされています。

 

具体的には、会計帳簿や伝票類、日記帳、レジの控え、契約書、納品書、請求書、領収書、預金通帳等を網羅的に用いて、現実の売上と経費を裏付けしていく必要があります。

 

なお、確定申告額が過小である場合には修正申告をすることができます。

 

修正申告を行うことは、修正申告で申告した所得があることを基礎づける事情の一つとは考えられていますが、これだけで修正申告での所得額が認定されるわけではなく、上述した会計帳簿等の証拠によって当該修正申告の内容が裏付けられなければなりません。

 

 

・・・節税対策もいいことばかりではないということですかね。

 

ちなみに、当事務所では弁護士法人のほか、連携する税理士法人もございますので、税金についてのご相談もお気軽にお問合せいただければと思います。

交通事故で保険料が上がっても自分の保険を使った方がいいケース

交通事故で自分の保険を使う場合、等級が下がり、保険料が上がってしまうことになります。  

そのため、相手が保険に入っている場合はできるだけ相手の保険で対応してもらうことが好ましいです

もっとも,ケースによっては、自分の保険を利用した方がいい場合もあります。

 

1 自分の過失が大きい場合

 

自分にも過失がある場合、相手の損害を過失分に応じて支払う必要があります。

また、相手が支払ってくれる賠償金も過失割合に応じて減額されることになります。   

この場合、保険料が上がっても自分の保険を利用した方がいいことが少なくありません。

 

たとえば、双方の過失が50:50で、双方の車両の修理代がともに50万円の場合、自分の保険を使わない場合だと

①修理代でマイナス50万円

②そのうち、50%の25万円は払ってもらえる(プラス25万円)

③しかし、相手の修理代の50%25万円を払わないといけない(マイナス25万円)

→結果、マイナス50万円の出費となります。

 

一方、自分の車両保険と対物保険を使った場合は、

①修理代のマイナス50万円は自分の車両保険から全額補填してもらえる(プラスマイナス0)。

②相手への支払いも対物保険から全額支払ってもらえる

→マイナスは保険料の増額分のみとなります。

 

このように、相手の保険を使わない方が得するケースもあるので、自身の保険会社担当者に使った場合のシミュレーションをお願いしておくといいでしょう。

 

3 相手に請求できないようなものも補償してくれる場合

 

たとえば、事故車両が全損になってしまったが、新車特約に加入している場合などです。

事故車両が全損になってしまった場合は、新車の購入価格ではなく、事故当時の時価額の限度でしか相手には請求することができません。

しかし、新車特約に入っている場合、契約時の設定価格までは自分の保険から賠償してもらうことができ、相手に請求するよりも自分の保険を使った方が得になるケースが少なくありません。

 

4 使っても保険料が上がらない特約を利用している場合

 

保険の内容によっては、保険を利用しても保険料が上がらないものもあるので、そういったサービスは利用しない手はありません(むしろ、特約に加入するために保険料を追加されているはずなので、使えるのに使わないのは逆に損しているとも言えます)。

 

たとえば、人身傷害保険特約やレンタカー特約などは、使っても保険料が上がらない契約になっていることが多いようです。

また、弁護士費用特約も、保険料が上がらない契約になっているのがほとんどです。

特約に加入しているなら相談だけでも利用すると良いでしょう。

少し特殊な後遺障害の異議申し立て②

前回のブログの続きとなります。

 

最終的な等級が変わらないのに、なぜ異議の申し立てをする必要があったのでしょうか。

 

これには、被害者の逸失利益を計算する際に用いる「労働能力喪失率」が大きく関わってきます。

 

労働能力喪失率は、等級に応じてある程度の目安が決まっており、等級が高いほど重篤な症状であるとして、労働能力喪失率の目安も高くなります。

 

たとえば、8級相当だと45%、9級だと35%、一番低い14級だと5%・・・という具合です。

 

ただ、あくまでこれは目安なので、残存した後遺障害の内容や特性に応じて、具体的に判断しないといけません。

 

今回労働能力喪失率の関係で注目しないといけないのは、顔面の醜状障害です。

 

醜状障害は、傷こそ残るものの、何か身体が動かせなくなるわけではないので、容貌が重視されるような職業(たとえばモデルや俳優など)でない場合には、労働能力には影響がないと判断されてしまう可能性があります。

 

そのため、異議前のままだと、認定された等級は8級相当でも、労働能力に影響があるのは実質的には左手関節の可動域制限(12級相当)だけで、喪失率は14%程度だろうという反論を相手に許すことになります。

 

一方、異議申し立て後は、外貌醜状を抜きにしても左親指と左手関節の可動域制限で9級相当の後遺障害が残っていると評価することができます。

 

そのため、仮に外貌醜状を加えた8級相当の労働能力喪失率が認められないとしても、少なくとも9級相当(35%)の労働能力喪失率が認められるべきとの再反論が可能となります。

 

12級(14%)と9級(35%)では労働能力喪失率に2倍以上の差が生じることになり、得られる賠償金額も大きく変わっていくことになります。

 

今回は、異議申し立てにより追加で左親指の後遺障害が認められ、外貌醜状を抜きにしても9級相当という狙い通りの結果を得ることができました。

 

交通事故に精通していない弁護士だと、このような労働能力喪失率の違いを見落とし、同じ8級だからと異議の申し立てを怠った結果、少ない賠償金しか獲得できないという事態も起こり得ます。

 

交通事故に被害に遭われ、すでに後遺障害の認定も終わっているという方も、交通事故に精通する弁護士に相談することをおすすめします。

少し特殊な後遺障害の異議申し立て

弁護士法人心では、交通事故の後遺障害の等級獲得に特に力を入れております。

 

治療段階から申請まで1からサポートさせていただく場合や、すでに結果が出てしまっている後遺障害の認定が妥当でない場合の異議申し立てなど、適切な後遺障害等級が認定されるよう、弁護士・スタッフが総力を挙げて取り組ませていただいております。

 

さて、今回は、私が数多く取り扱っている後遺障害の異議申し立ての中でも、少し珍しい申立てのケースをご紹介したいと思います。

 

多くの場合、後遺障害の異議申し立ては、非該当だった場合に等級獲得を目指すケースや、低い等級を上位の等級に引き上げる目的で行います。

 

しかし、今回私が取り扱ったケースは、異議申し立てを行っても、認定内容(認定の理由)は変わる可能性があるが、最終的な後遺障害等級自体は変わらないことが予想されるケースでした。

 

最終的な等級が変わらないと、自賠責保険からもらえる保険金の金額も変わりません。

 

しかし、今回のケースでは、最終的な等級は変わらなくても、異議申し立てをすることの意味があるケースだったので、チャンレンジすることにしました。

 

問題のケースでは、バイクで運転中事故に遭い、複数箇所の骨折など全身にけがを負ったものとなります。

 

主な残存症状は、①顔面の醜状損害、②その他各所の手術痕・傷痕、③左橈骨遠位端骨折に伴う左手関節の可動域制限、④鎖骨骨折に伴う鎖骨付近の可動時の違和感、異音、⑤鎖骨骨折後の拘縮に伴う左肩可動域制限、⑥右橈骨遠位端骨折に伴う左手関節の可動域制限、⑦左手親指の脱臼後の可動域制限の7つでした。

 

これらの症状に対して、最初の申請結果は、

① 顔面の醜状損害

→★9級16号

② その他各所の手術痕・傷痕

→基準値に至らず非該当

③ 左橈骨遠位端骨折に伴う左手関節の可動域制限

→★12級16号

④ 鎖骨骨折に伴う鎖骨付近の可動時の違和感、異音

→基準値に至らず非該当

⑤ 鎖骨骨折後の拘縮に伴う左肩可動域制限

→基準値に至らず非該当

⑥ 右橈骨遠位端骨折に伴う左手関節の可動域制限

→基準値に至らず非該当

⑦ 左手親指の脱臼後の可動域制限

  →事故時の受傷か断定できないため、因果関係不明のため非該当

と認定されました。

 

複数の後遺障害等級が認められると「併合」という等級調整の処理が行われます。

このケースだと、①と②が併合処理され、高い方の等級である9級が1つ繰り上がり、最終的な等級は8級であるとの判断がされました。

 

この認定に対して、私が異議申し立てのターゲットに絞ったのが、⑦の左手親指の脱臼後の可動域制限です。

 

もし事故との因果関係が認められれば、単独では10級7号が認められる可能性がありました。

 

しかし、この場合、仮に異議が成功しても、最終的な後遺障害等級は変わりません。

 

まず、②の12級と⑦の10級は同一の系列の障害として取り扱われ、併合の方法に準じて高い方の等級である10級が1つ繰り上がり9級相当と認定されます。

 

その後、さらにそれが①の9級16号と併合処理され、9級がまた1つ繰り上がり8級と認定されるのですが、これでは最終的な後遺障害等級は、異議前と変わりません。

 

しかし、同じ8級でも、異議前と異議後では、大きな違いがあります。

 

・・・長くなったので、次回にその理由をご説明させていただきたいと思います。

ひき逃げとその責任

先日,若手俳優が自動車を運転中にひき逃げをして逮捕された事件が話題になりました。

 

この「ひき逃げ」という言葉はよくニュースで耳にしますが,法律上は,道路交通法72条が定める救護義務・報告義務を果たさないことを言います。

 

道路交通法72条は,

 

「交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。」

 

と定めています。

 

これに違反した場合,救護義務違反については5年以下の懲役又は50万円以下の罰金、報告義務違反については3月以下の懲役又は5万以下の罰金が科せられる可能性があります。

 

これに加えて,被害者がケガをしている場合は,自動車運転過失致死傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律の5条)が成立し,7年以下の懲役若しくは禁固又は100万円以下の罰金を科せられる可能性があります。

 

私は弁護士になる前の修習期間中,検察庁交通部という,検察官が交通事故を集中して扱う部署にて修習したことがあります。

 

そのときに検察官から聞いたのですが,交通事故を起こしてしまっても,被害者のケガが軽い場合は不起訴になることも少なくないのですが,ひき逃げの場合は別で,原則としてケガが軽くても起訴する運用にしているとのことでした。

それだけひき逃げの罪を重く見ているということです。

 

ひき逃げをしてしまうと非常に重い処分が予想されます。

万が一事故を起こしてしまった場合は,間違っても逃げるようなことはせず,誠実に対応することが求められます。

ドライブレコーダー

みなさんの車には,ドライブレコーダーは搭載されているでしょうか?

 

ドライブレコーダーの記録映像は,交通事故に遭い過失割合が問題になったときに,大きな証拠になる場合があります。

 

よくあるケースでは,進路変更車が前に割り込んできて衝突してしまった場合に,進路変更車両のウインカーの有無が問題になるようなケースが典型的なものといえます。

 

通常,このようなケースでは,進路変更車両70:後続直進車両30の過失割合が基本となります。

 

しかし,進路変更車両がウインカーを出していない場合は20%程度の修正が入り,90:10になることが多いです。

 

ですが,往々にして,進路変更車両は「自分は適法にウインカーを出してから進路変更した」と主張してくることが少なくありません。

 

相手が非を認めない場合,こちらが客観的な証拠を提出してウインカー点灯の有無を証明しないといけません。

 

このようなケースで,ドライブレコーダーの映像が残っていれば,動かぬ証拠となります。

 

逆にドライブレコーダーがないと,多くのケースで双方の主張は水掛け論になってしまい,被害者が泣き寝入りしないといけなくなることも少なくありません。私自身,交通事故を扱う弁護士として歯がゆい思いをすることが多々ありました。

 

交通事故に備えるため,また,近年多くみられる煽り運転の対策のため,ドライブレコーダーを搭載する車両は増えています。

 

国土交通省が2019年11月に行ったアンケート調査(https://www.mlit.go.jp/monitor/R1-kadai01/24.pdf)によると,自家用車を保有している45.9%の人が,ドライブレコーダーを搭載していると答えています。

 

そして,67.3%の人が,ドライブレコーダーの効果について,「おおむね期待通り」もしくは「期待以上」の効果があったと答えています(残りのうち,28.3%は事故等に遭遇していないので「わからない」と回答しており,期待外れだと答えたのは全体の1.9%にとどまります)。

 

最近では,ドライブレコーダーも安価にありつつあり,また,ドライブレコーダー特約付きの保険も登場しています。

 

まだドライブレコーダーを搭載していないという方は,万が一に備えて,導入を検討されてはいかがでしょうか。

後遺障害の逸失利益と定期金賠償

令和2年7月9日に,最高裁判所にて,今後の交通事故の訴訟に大きく影響を与えるであろう注目すべき判決が示されました。

 

かなり専門的な話になるのですが,要約すると,後遺障害の逸失利益のような将来発生する損害について,一括払いではなく,将来にわたってその都度支払いを受けること(「定期金賠償」といいます。)を認めた判決になります。

 

最高裁の判決の全文は,以下のページで見ることができます。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89571

 

交通事故の裁判においては,後遺障害により働く能力が下がった結果将来見込まれる減収(逸失利益)について,従来ですと,裁判終了後に一括で支払うものとされてきました。

 

この場合,将来受け取るはずの収入を前倒しで受け取る形となるのですが,仮に,この前倒しで受け取った賠償金を運用して増やすことができれば,その運用益分だけ,逆に被害者が事故に遭わなかったときと比べて利得を得ることになります。

 

そのため,裁判所は,この見込まれる運用益を賠償金から控除して調整を図る(「中間利息控除」といいます。)という取り扱いが確立しています。

 

この点は,過去に私のブログでも取り上げていますのでご参照いただければと思います。

 

たとえば,月30万円,労働能力喪失率100%,20年間の逸失利益の賠償が必要な場合,これを一括支払いで受け取るときは,月30万円×12カ月×14.8775(20年に対応するライプニッツ係数)=5335万9000円を受け取る計算になります。

 

しかし,今回の最高裁判決のように,定期金賠償の方法によれば,運用益の控除を受けることなく,毎月30万円×12カ月×20年=合計7200万円の賠償を受けることができる計算となります。

 

実に1800万円以上の差がつくことになります。

 

そのため,今回の最高裁判決は,トータルでより多くの賠償金を得られる可能性がある点で,交通事故の被害者側に有利な判決であるといえます。

 

ただし,定期金賠償は,一度判決が出た後でも,その後の事情の変更に応じて,支払う金額の変更を求める訴えが可能とされています。

 

そのため,何年か経った後に,相手からその変更を求めて裁判を提起され,また争いごとに巻き込まれる可能性もあります。

 

加えて,仮に定期金を支払う加害者側(特に保険会社)が将来破産すれば,将来の賠償金は支払い不能になってしまうというリスクも考えられます。

 

また,判決文を読む限りでは,あらゆる交通事故において,逸失利益の請求をこの定期金賠償の方法が選択可能であると判断しているわけではなく,「(不法行為に基づく損害賠償制度の)目的及び理念に照らして相当と認められるとき」に,定期金による賠償の対象となり得ると判断していることに注意が必要です。

 

そのため,どのようなケースで定期金賠償による請求が可能なのかは,今後の裁判例の蓄積が待たれるところです。

 

交通事故を取り扱う弁護士にとっては,一層の調査検討が必要な判例であるといえます。

交通事故の慰謝料と通院日数の関係

 

交通事故に遭うと,過去に事故に遭ったことのある人から「交通事故に遭ったら通院すればするほど慰謝料がもらえる(通院しないと損する)」と言われることがあるようです。

 

保険会社は,慰謝料を支払う際,強制加入保険である自賠責保険の慰謝料の計算基準に従って計算することが多くあります。

 

自賠責保険の慰謝料の計算基準は,

① 事故日~治療終了までの通院期間×4300円

② 通院実日数×2×4300円

のいずれか安い方を慰謝料の金額とします。

 

たとえば,3カ月間で毎月5回,合計15日通院した場合は,

①90日×4300円=38万7000円

②15日×2×4300円=12万9000円

の安い方,つまり12万9000円が慰謝料となります。

 

こうしてみると,上記の計算基準では,通院回数が少ないとなんだか損しているように感じるかもしれません。

 

そのため,交通事故の被害者の中には,慰謝料で損したくないから,ムリして通院される方もいるようです。

 

ただ,上記の計算基準の関係でいえば,2日に1回以上のペースで通院しても,慰謝料がさらに増えるということはありません。

 

また,慰謝料目的で不必要な通院を繰り返した場合,慰謝料を計算する際の通院日数にカウントしてくれないばかりか,過剰な通院については治療費も支払ってもらえない可能性もあり得ます。

 

なかには,病院と共謀して通院していないのに通院したと申告するケースも後が絶ちませんが,完全な詐欺です。

 

通院は,あくまで医師と相談しながら適切な期間・頻度で通院していくことが求められます。

 

 

もっとも,通院日数の多い少ないで機械的に慰謝料を計算すると,実態に反して慰謝料が過小評価されてしまう場合もあります。

 

たとえば,事故に遭って骨折してしまい,骨がくっつくまではリハビリがスタートできないので,医師から自宅での安静を指示されているような場合などです。

 

骨折が伴うようなケースは大きな事故であることが多く,また,骨がつくまでの間は痛みが酷いことも多いはずで,平均的な交通事故のケースと比べても大きな慰謝料が認められるべきところです。

 

しかし,この場合だと,通院実日数×2×4300円で計算したわずかな慰謝料しかもらえないことになってしまいます。

 

このようなケースでは弁護士を通しての交渉が有効であることが多いです。

 

弁護士が交渉する場合,自賠責保険の基準ではなく,裁判所の認定基準にしたがって慰謝料を計算するよう交渉することができます。

 

裁判所の認定基準も通院実日数の影響はありますが,原則としては通院の期間の長短をベースに計算することとされており,多くの場合で慰謝料が増額となる可能性があります。

 

通院回数を理由に低額な慰謝料が保険会社から提案されてきた場合は,まず弁護士に相談してみることをおすすめいたします。

自動車損害賠償責任保障法(自賠法)の特殊な仕組み②

前回の続きとなります。

 

交差点での事故で当事者双方が青信号であると主張している場合,民法の大原則に従えば,双方ともに相手の過失を証明することが出来ないため,請求は双方とも否定されるはずであることを前回ご説明しました。

 

しかし,交通事故の場合,自動車の運転手等には,民法の規定とは別に,自動車損害賠償責任保障法(自賠法)の規定に基づいても,責任を負うことになります。

 

自賠法3条は以下のように定めています。

 

◎自動車損害賠償責任保障法3条

自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命または身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。

ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があったこと並びに自動車に構造上の欠陥または機能の障害がなかったことを証明したときは、この限りでない。

 

ざっくり言えば,交通事故で被害者にケガを負わせてしまった加害者が,被害者からの損害賠償請求を免れるためには,加害者の側で,自分には過失がないこと,今回の事例では自分に信号無視がなかったこと(被害者が信号無視したこと)を証明しなければいけないということに定めています。

 

したがって,どちらが青信号だったのか証明できないBは自分の無過失を証明できないため,Aに生じた損害を賠償する義務を免れることが出来ません。

 

一方,自賠法3条に基づいて賠償請求ができるのは,自賠責保険の加入対象となる車両(自動車やバイクなど)によってケガをした場合に限られます。

 

今回のケースだと,Aが乗っていたのは自賠責保険の加入対象外である自転車です。

 

そのため,Bは,ケガに対する損害の請求であっても,原則通り民法709条によって請求するほかありません。

 

その結果,どちらが信号無視かわからない場合は,Aの過失の証明ができないため,Bの請求は否定されることとなります。

 

また,自賠法3条は,自動車との事故で被害に遭った方の人的損害(ケガによる損害)についての請求についてのみ適用されます。

 

つまり,車の修理代など物的損害の請求については適用がなく,原則通り民法709条に基づいて請求するほかありません。

 

そのため,相手の過失を証明できなければ請求は否定されます。

 

【事例】のA・B双方の物的損害の請求が否定されるのは,このためです。

 

以上から,Aには人的損害の150万円の請求が認められ,一方Bは,人的損害・物的損害ともに請求は認められないことになります。

 

なお,上記の結論は,裁判所が審議を尽くしてもどっちが青信号かわからない場合です。

 

裁判所も,当事者双方の証言を聞いて,できる限りどちらの言っていることが正しいか見極めようとします。

 

信号無視に限らず,過失割合に争いあるときは,一度弁護士に相談してみるとよいでしょう。

自動車損害賠償責任保障法(自賠法)の特殊な仕組み①

 

自動車損害賠償責任保障法(自賠法)は,交通事故特有の法律です。

 

弁護士の中でも,交通事故を多く取り扱わないような弁護士なら,その仕組みや特殊な取り扱いなど,詳しく理解していないということも少なくありません。

 

今回は,その自賠法の特殊な仕組みについて,ひとつ取り上げたいと思います。

 

ただ,なかなかに説明が難しいので,少し趣向を変えて問題形式でお送りしたいと思います。

 

ゴールデンウィークでも東京はコロナウイルスで自粛要請中ですが,暇つぶしに?考えていただけば幸いです。

 

【事例】

 

Aは自転車で走行中,信号のある交差点を青信号だったので直進進入したところ,信号を無視して突っ込んできたB車に出合い頭で衝突して,ケガを負った。

 

Aは,自転車の修理代,着衣や携行品が壊れるなどの物的損害が10万円,ケガについても,治療費や休業補償,慰謝料等で200万円の損害を負った。

 

Aは合計210万円の損害をBに請求した。

 

ところが,Bは「自分は青信号で交差点に進入した。赤信号で進入したのはAだ」と主張し,逆にB車の修理代50万円と,Bも軽いケガを負ったとして,治療費等で20万円,合計70万円の損害を請求してきた。

 

交差点に目撃者や防犯カメラはなく,警察が捜査したが,どちらが信号無視したかはわからなかった。

 

この場合,A・B双方の請求はどちらが認められるのか?どちらも認められないのか?

 

 

本来,損害賠償請求の大原則を定める民法709条は,請求が認められる要件として,加害者に過失があることが必要としています。

 

そして,加害者に過失があったこと,今回のケースでは信号無視をしたかどうかを,被害者側で証明する必要があります。

 

すると,どちらが信号無視したのかわからない場合は,双方ともに相手に過失があることを証明できなかったことになり,双方の請求が否定されることになります。

 

しかし,交通事故においては,自賠法の規定が適用される結果,上記とは異なる結論が導き出されることになります。

 

結論から言うと,Aの請求は200万円認められる一方で,Bの請求は1円も認められないことになります。

 

 

・・・なぜこのような結論になるかは,次回のブログで詳しくご説明したいと思います。

自賠責保険の保険料が値下げとなります。

先日,自賠責保険の支払基準が改正されることをこのブログで取り上げましたが,この自賠責保険に加入するための保険料も,2020年の4月から変更となるようです。

 

2020年1月22日,金融庁の審議会の正式決定があり,自賠責保険の保険料は4月から平均で16・4%引き下げられることになりました。

 

沖縄県と離島を除く自家用乗用車の自賠責保険料は、2年契約の場合で,現在2万5830円だったのが2万1550円となり,4280円の値下げとなりました。軽自動車の場合は,同じく2年契約の場合で2万5070円から2万1140円となり,3930円の値下げとなりました。

 

自賠責保険は、徴収した保険料と支払われた保険金との収支を合わせるように保険料が設定されるようになっています。

 

近年,自動車の安全性が向上や自動ブレーキ装置の導入などのおかげで,交通事故の件数や保険金支払額が減っているため、それに応じて保険料も値下げとなるようです。

 

数字を見ても,2018年度の支払額は約7220億円と10年前に比べると10%以上減少しています。

 

とはいっても,弁護士のサポートが必要となるような大きな事故はまだまだ存在しているように思えます。

 

大きな事故の場合,自賠責保険の保険金上限額である120万円を上回る損害が発生することは少なくありません。

 

このときは,強制加入の自賠責保険だけではなく,任意で加入する自動車保険が頼りとなります。

 

自賠責保険料が値下げとなる一方で、任意加入の自動車保険の保険料は,今年の1月から値上げの傾向にあります。

 

東京海上や損保ジャパンといった大手保険会社の任意保険の保険料は,各社約3%前後の値上げとなっています。

 

これは,消費税が10%に引き上げられたこと、民法改正の影響により,保険金の計算方法が変わり,従来より支払う金額の増加が予想されることなどが理由とされています。

 

保険はもしもの時に備えるためのものですから,自賠責保険だけではなく,任意保険にも加入しておくことを強くオススメします。

交通事故を起こしてしまった場合の3つの責任

交通事故を起こしてしまった場合、加害者には,①民事上の責任、②行政上の責任、③刑事上の責任を負うこととなります。

 

1 民事上の責任

 

車の修理代、代車代やレッカー費用といった物的損害、ケガの治療費や休業損害、慰謝料などの人的損害など、相手が被った損害を賠償する責任をいいます。

 

前もって運転手が任意で損害賠償保険に加入していれば、多くの場合ですべての損害を保険で賄うことができます。

 

万が一任意保険に加入していない場合でも、強制加入の自賠責保険により、人的損害については120万円まで賄うことができます。

 

しかし、自賠責保険では物的損害はカバーできないため、修理代が高額になる場合でも自分で賠償しなければなりません。

 

また、大きな事故では人的損害が120万円を超えることも少なくありませんが、超えた場合は自己負担になります。

 

2 行政上の責任

 

免許の減点や、悪質な事故態様の場合は免許の停止、取消などの処分を受ける可能性があります。

 

行政上の処分は、人身事故として届け出が出された場合に処分が行われる可能性がありますが、物損事故扱いにとどまっている場合は、行政上の処分を受けずに済みます。

 

3 刑事上の責任

 

典型的なものとしては、交通事故により被害者を怪我させてしまった場合の自動車運転過失致死傷罪などが考えられます。

 

昨今では自動車事故に対しては厳罰化の傾向があり、上記の自動車運転過失致死傷罪は、懲役7年以下または罰金100万円以下と非常に重い内容となっています。

 

行政上の処分と同様、物損事故扱いにとどまる場合は、刑事上の処分は回避できます。

 

最近では、こういった刑事上の責任に関して、弁護士に刑事弁護を依頼する場合や、被害者との交渉を代行してもらう場合の費用を負担してもらう保険も、一部の保険会社から発売されています。

 

 

事故は起こさないことが一番ですが、注意して運転していたつもりでも起きてしまうのが事故でもあります。

 

万が一の場合に備えて、自動車保険にはしっかりと加入しておきましょう。

 

交通事故の治療中に再び事故に遭ってしまった場合

交通事故に遭い、まだ治療を続けている段階で、2度目の事故に遭ってしまうという方がたまにいらっしゃいます。

 

この場合、治療費はだれが支払うのか、慰謝料などの示談交渉はどうなるのかなど、複雑な問題が生じてくることがあります。

 

1 1回目と2回目とでケガをした場所が違う場合

 

たとえば、1回目の事故では、自転車に乗っているときに自動車とぶつかって腕を骨折し、腕の治療をしていたが、2回目の事故では、自動車に乗っているときに追突され、首や腰を痛めた場合です。

 

この場合、1事故目で発生した腕のケガについては、2事故目の加害者には責任はありませんし、逆に、2事故目で発生した首や腰のケガについては、1事故目の加害者には責任がありません。

 

ですので、1事故目の加害者の保険会社は腕の治療費を、2事故目の加害者の保険会社は首と腰の治療費を、それぞれ並行して支払うことになります。

 

2 1回目と2回目のケガが同じ場所の場合

 

たとえば、1事故目が追突事故で首を痛めて治療中のときに、また追突事故に遭い、だんだん良くなっていた首がまた悪化してしまった場合です。

 

この場合、首の症状は1事故目と2事故目の両方の影響があることになり、誰がその治療費を負担すべきなのか問題となります。

 

実務上は、2事故目の加害者の保険会社が引き継ぐような形で治療費の全額を負担することが多いです。

ただし、本来は1事故目の加害者にも割合的に責任があるので、2事故目の保険会社が負担した1事故目の保険会社が負担すべき治療費は、保険会社間で調整して求償することになります。

 

3 示談の際の注意点

 

2度目の事故に遭った場合、治療費等の対応が2度目の事故の保険会社に引き継がれたことで、1度目の事故の保険会社から示談をすすめられることがありますが、この際には注意が必要です。

 

後々、2度目の事故の保険会社にも損害賠償を請求した際、「損害のうちこの部分は2事故目の影響はなく、すべて1事故目が原因だから、うちは払えない」と損害の一部の支払いを拒否してくる場合があります。

 

この場合に、1事故目の保険会社に請求しようと思っても、その時点で1事故目の保険会社とすでに示談を取り交わしてしまっていた場合、解決済みであるとして、もう1事故目の保険会社に請求することは原則としてできません。

 

そのため、1事故目の保険会社と先行して示談する場合は、自分に不利益が生じないか慎重に検討する必要があります。

 

深く考えずに示談すると、取り返しのつかないことになってしまう場合がありますので、立て続けに事故に遭ってしまったというような厄介なケースでは、示談の前に弁護士に相談することをおすすめします。

後遺障害が複数認められる場合の等級認定の仕組み

交通事故に遭ってしまい、治療を続けても症状が残り完治しなかった場合、後遺障害が認定され、その等級に応じた賠償を受けることができる場合があります。

 

後遺障害はケガをした部位や症状ごとに認定されるため、ひとつの交通事故で複数の後遺障害が認定されることもあります。

 

その場合、ひとつの後遺障害が残る場合よりも、複数の後遺障害が残るほうがケガによる苦しみや日常生活の負担・不自由は大きいため、それに応じた賠償を認める必要があります。

 

そこで、後遺障害を認定する自賠責保険では、複数の後遺障害が認められる場合には一定のルールにしたがって「併合」という処理を行い、等級を繰り上げることで適切な賠償が確保されるような仕組みを設けています。

 

後遺障害が複数認められる場合の等級認定は、自動車損害賠償保障法施行令2条の3ロ~ホに定められています。

 

①第5級以上に該当する後遺障害が2つ以上ある場合

→最も重い等級から3つ繰り上げます。

 

②第8級以上に該当する後遺障害が2つ以上ある場合

→最も重い等級から2つ繰り上げます。

 

③第13級以上に該当する後遺障害が2つ以上ある場合

→最も重い等級から1つ繰り上げます。

 

④第14級の後遺障害が2つ以上ある場合

等級の繰り上げはなく、第14級のままとなります。

 

【具体例】

A、後遺障害等級4級と5級に認定した場合

→5級以上が2つ認められていることから,①のルールにより、4級から3つ繰り上がり、併合1級が認定されます。

 

B、後遺障害等級5級、8級、12級の3つが認定された場合

→8級以上が2つ認められていることから、②のルールにより、5級から2つ繰り上がり併合3級が認定されます。

ここから,3級と12級が認められているから③のルールが適用されて,さらに等級が繰り上がる…ということはありません。

 

C、後遺障害12級と14級が認められた場合

等級の繰り上がりはなく、12級のままです。

 

このほか、後遺障害の等級認定のルールはいくつか存在しており、複雑で専門的な内容のものもあります。

交通事故に遭い、複数の症状に苦しんでいる方は、後遺障害に詳しい弁護士にまずはご相談ください。

ライプニッツ係数とは

みなさんは「ライプニッツ係数」という用語をご存じでしょうか。

 

ライプニッツ係数とは、交通事故などの人身障害事件における損害賠償のなかで、長期に発生する将来の介護費用や就労機会喪失や減少による逸失利益など、時間と関係する賠償金を一時金に換算する計算方法です。

 

交通事故に遭った場合に相手に請求できる賠償内容は、すでに発生した損害だけに限られず、将来発生するであろう損害も請求できる場合があります。

 

代表的なものとしては、後遺障害が残ってしまった場合に、働く能力が下がってしまい、将来の収入が減少されることが見込まれる場合の、本来得られるはずだった収入(逸失利益)などがあります。

 

逸失利益が存在する場合に、たとえば1年間あたり100万円の減収が5年続くようなケースを想定すると、100万円×5年=500万円の賠償が請求できそうですが、裁判所はそのような考え方をとっていません。

 

なぜかというと、損害賠償請求が認められると、5年間かけて得られる500万円を前倒しでもらえることができるため、この500万円を資産運用するなどして増やすことができれば、事故に遭わなかった時と比べて、事故に遭ったことで5年後に逆に儲かってしまうという事態が生じ得ることになります。

 

裁判所は、そのような結果にならないよう、運用益も含めてトータルで500万円になるよう調整(「中間利息控除」といいます)を行うこととしており、その計算に用いるのがライプニッツ係数です。

 

ライプニッツ係数は法定利率を基準に設定されており、現在の日本の法定利率は5%なので、これを前提にライプニッツ係数は設定されています。

 

たとえば、5年のライプニッツ係数は4.3295であり、さきほどの例でいうと、100万円の減収が5年続く人の損害賠償額は、100万円×5年ではなく、100万円×4.3295=432万9500円であると裁判所は考えます。

 

私のような交通事故、特に後遺障害を数多く取り扱う弁護士だと、見慣れない人には数字の羅列にしか見えないライプニッツ係数も、3年だと2.7232、5年だと4.3295・・・という具合によく使う年数の値は暗記してしまっています。

 

ところで、2020年4月から民法改正により法定利率が変更され、法低利率に基づいて計算されるライプニッツ係数も、これに伴い一新されることとなります。

 

法定利率が下がるとライプニッツ係数は大きくなります。

 

たとえば5年のライプニッツ係数は法定利率が3%だと4.580となり、さきほどの例だと、賠償金額は432万9500円から458万円と20万以上増えることとなります。

 

従来の数字の暗記が全く役に立たなくなるのは残念ですが、交通事故被害者にとっては非常に有利な変更となっているので、新しいライプニッツ係数を武器に交通事故案件に取り組んでいきたいと思います。

自賠責保険の支払基準が改正されます。

1 自賠責保険の支払基準の変更

自賠責保険は、自動車を運転する場合に必ず加入する必要がある、強制加入の保険です。

 

交通事故に遭った場合、被害者は、この自賠責保険から、一定の支払基準に従って、慰謝料や休業補償などを受けることができます。

 

この自賠責保険の支払基準が、2020年4月1日から改正される予定です。

 

改正の理由は、2010年に行われた前回改定から10年が経ち、平均余命,物価・賃金水準,支払実態を反映する必要が生じたためです。

 

2 変更内容

支払基準の変更点は以下のとおりです。

 

①入通院慰謝料

1日4200円→4300円

 

②休業損害

1日5700円→6100円

 

③入通院中の看護料

1日4100円→4200円

 

④自宅看護料・通院看護料

1日2050円→2100円

 

また、後遺障害慰謝料の金額も13,14級を除いて増額となっています。

 

別表第1(要介護の場合)

第1級 1,600万円→1,650万円

(被扶養者がいる場合は1,800万円→1,850万円)

第2級 1,163万円→1,203万円

(被扶養者がいる場合は1,333万円→1,373万円)

 

別表第2

第1級 1,100万円→1,150万円

(被扶養者がいる場合は1,300万円→1,350万円)

第2級 958万円→998万円

(被扶養者がいる場合は1,128万円→1,168万円)

第3級 829万円→861万円

(被扶養者がいる場合は973万円→1,005万円)

第4級 712万円→737万円

第5級 599万円→618万円

第6級 498万円→512万円

第7級 409万円→419万円

第8級 324万円→331万円

第9級 245万円→249万円

第10級 187万円→190万円

第11級 135万円→136万円

第12級 93万円→94万円

 

支払基準が上方修正されたことで、手厚い保護を受けることが可能になりました。

 

ただし、自賠責保険には支払の上限額があり、傷害部分については120万円、後遺障害部分については等級に応じて金額が定められています。

 

今回の改正では上限額の変更はないので、大きな事故の場合は結局上限額に引っかかってしまい、賠償額が変わらないことがあります。

 

また、増額になったものの、弁護士基準(裁判所基準)と比べると、自賠責保険の支払基準は低額となっています。

 

そのため、保険会社が自賠責保険の基準で示談金を提案してくる場合は、弁護士が交渉すればさらに増額になる可能性がありますので、是非一度相談してみてはいかがでしょうか。

交通事故証明書の内容・入手方法

1 交通事故証明書とは

交通事故証明書とは、交通事故は発生したことを証明する公的な書類です。

 

交通事故が発生した場合、必ず警察に事故の発生を届け出なければいけません。

 

警察に届け出た後、警察による現場確認が行われ、事故の当事者や発生状況、免許証や自賠責保険の証書などが確認されます。

 

その内容を簡潔に記載したのが交通事故証明書です。

 

2 交通事故証明書の入手方法 

交通事故証明書は各都道府県にある自動車安全運転センターに申請することで入手できます。

 

ちなみに、事故を起こした場所のセンターでなくても申請を受け付けてもらうことができ、たとえば、東京にお住まいの方が地方で事故を起こした場合でも、東京のセンター宛に手続きを行うことができます。

 

申請のための書類は警察署や一部の交番にも置いてあります。

 

また、交通事故の被害者本人であれば、インターネットを通じてオンライン申請を行うこともできます。

 

そのほか、事故の当事者が任意自動車保険に加入している場合は、保険会社が事故直後に入手していることが多く、連絡すれば写しを交付してくれることもあります。

 

3 交通事故証明書の注意点

⑴ 人身事故と物件事故

交通事故証明書には、「人身事故」と「物件事故」の区別が記載されています。

 

物件事故のままだと、被害者は怪我を負っていないのではないか、あるいは怪我軽いのではないかと後々誤解されてしまうことがあります。

 

人身事故に切り替えるためには、医療機関発行の診断書を警察に提出することが必要です。

 

⑵ 当事者欄の「甲」と「乙」

交通事故証明書には事故の当事者がそれぞれ記載されていますが、加害者(過失が大きい人)が「甲」の欄に、被害者(過失が小さい人)が乙欄に記載される取り扱いになっています。

 

自分は被害者だと思っていたら、自分の名前が「甲」の欄に記載されているというような場合は注意が必要です。

 

また、同乗者は「〇の2」と記載され、複数の車両が絡む事故だと「丙」「丁」と増えていきます。

 

⑶ 証拠としての価値は必ずしも大きくない

交通事故証明書は公的な機関が作成したものであり、文書としての一定の信用性が認められます。

 

しかし、交通事故証明書の記載は極めて簡潔なもので、詳しい事故の状況や当事者の言い分、被害者の怪我の重さなどは交通事故証明書から判断することができません。

 

そのため、事故の相手と事故状況等を巡って争いになった場合は、交通事故証明書の記載だけに頼らず、様々な証拠を収集することが必要になります。

交通事故と保険金の不正請求の問題

 弁護士法人心は,突然の事故に遭ってしまった交通事故被害者の支援・救済のため,日々多くの交通事故案件を取り扱わせていただいております。

 

 しかし,ニュースや裁判例を見ると,「悪意ある被害者」というものも,どうやら一定数存在するようです。

 それが,交通事故の保険金の不正請求問題です。

 注意喚起の上でも今回のブログで取り上げたいと思います。

 

1 問題となっている不正請求の一例

 

① 通院日数の水増し

 保険金の不正請求で多く聞くケースが,通院日数の水増しです。

 保険会社が算定する交通事故の慰謝料は,通院日数を考慮して決定されています。

 そのため,被害者がもらう慰謝料を増やすために,整形外科や接骨院と結託して,通院日数を水増しして保険会社に請求するケースが存在します。

 これは,治療を行ったことにして治療代を保険会社に請求しようと考える整形外科や接骨院の方から水増しを持ちかけられるケースもあるようです。

 

② 詐病

 実際はもう回復しているのに,通院や休業を続けて補償を受け取ろうとするケースです。

 

③ 交通費の虚偽申告

 タクシー代を除き,交通費は領収書等を提出しなくても経路等を申告すれば請求することが可能です。

 これを悪用して,実際は自転車や自動車で通院したのに,公共交通機関を利用したとして運賃を請求するケースです。

 

④ 自作自演の事故

 これはかなり極端なケースではあります。

 たとえば,自損事故を起こした場合,運転手は事故を起こした本人なので,ケガをしても自賠責保険を使うことはできませんが,同乗者が怪我をした場合は,保険金の支払い対象となります。

 そこで,運転手と同乗者とで共謀して,同乗者が事故で怪我をしたことにして保険金を請求しようとするケースがあります。

 

2 不正請求の取り締まりは強化されている

 近年は,保険会社もこのような不正請求の取り締まりを強化しています。

 たとえば,①のケースでは,不審に思った保険会社が探偵に依頼して整形外科の前に張り込みさせ,通院していないのに通院したものとして請求していたことが発覚したというケースが報じられました。

 また,②のケースでは,体が痛くて仕事ができないと保険会社に話して休業補償をもらっていた被害者が,休日に元気にスポーツに興じているところをSNSに投稿して発覚したケースなどがありました。

 不正請求は驚くほど簡単に発覚してしまうものです。

 

3 不正請求は犯罪です!

 不正請求は,保険金を不正にだまし取ろうとするものであり,詐欺罪に該当します。最大で懲役10年という処罰が課せられることのある重大な犯罪です。

 不正請求が発覚した場合,上記のような刑事処罰に処される可能性があり,また,治療費含め,保険会社から受け取った一切の金銭の返還を求められることもあります。

 間違っても,不正請求に手を染めるようなことだけはしないでいただきたいと思います。

事故車両の評価損について

 東京も梅雨入りとなり,カラッとしない天気が続きますね。

 

 本日は,保険会社と揉めることも多い「評価損」についてお話したいと思います。

 

1 評価損とは

 交通事故によって車両が損傷してしまった場合,修理しても事故車扱いとなり,下取り価格が安くなるとディーラーから言われることは少なくありません。

 この車両の評価の低下という損害,いわゆる「評価損」について,加害者に賠償を求めることができる場合があります。

 

 車両を修理しても機能や外観が元通りにならなかった場合は,車両の価値が下がっていることは明らかなので,評価損は認めてもらいやすい傾向にあります。

 

 一方,修理した結果,元通りになったという場合,車両の客観的な価値は回復しているはずということになります(場合によっては,古い中古車の場合,部品を交換したらその部分は新品になるので,客観的な価値は上昇するのでは?とも考えられます)。

 すると,ディーラーの下取り価格が安いのは,ディーラーの査定が客観的な価値と比べて不当なだけで,加害者がその下落分の賠償を負うべきなのかという問題もあるかと思います。

 とはいえ,事故車扱いになった場合に中古市場価格が下がるのは社会通念化しているともいえ,裁判所や法律家は両者のバランス等も考え,主に次の3点を重視して,評価損を認めるかどうか判断する傾向にあります。

 

2 評価損の判断基準

① 修復歴がつく修理内容かどうか

 車両のフレーム等重要部分が損傷し修理した場合,修復歴が付くことになります。この「修復歴」は単なる「事故歴」とは別概念ということになります。

 単なる事故歴は表示する必要はないのに対し,修復歴の有無は,自動車業における表示に関する公正競争規約及び同中古車に関する施行規則15条に基づいて表示することになっており,この表示がある車両は,やはり中古市場においては取引価格が下がる傾向にあるので,評価損を認めてもらうための一つの材料となります。

 

② 新車購入後から交通事故に遭うまでの期間

 新車と中古車とで比べると,新車の方が評価損を認めてくれやすい傾向にあります。

 他方で,新車購入から1年以上たつと,評価損の認定率は下がる傾向にあります。

 

③ 車両の購入価格

 外国車や国産高級車など,購入金額が大きい方が評価損が認められやすい傾向にあります。

 

3 評価損として認められる金額

 評価損を金銭的に換算するのは困難なことが多く,裁判例では,修理代の10~30%程度の範疇で認める傾向が強いといえます。

 単純に下取り価格の減少分をそのまま認めることはほぼないといえます。

 

 

 評価損については,認められるかどうか,認められるとしてもいくらぐらいが妥当な金額なのかは難しい問題が多いので,一度弁護士に相談してみることをおすすめします。

交通事故に遭ったとき,警察には人身事故で届け出るべきか

 東京もだいぶ暑くなってきました。

 職業柄,クールビズといってもどこまで軽装で仕事してよいか,悩ましい季節です。

 私は,裁判所に出廷するときやお客様にお会いするときは,夏でもネクタイは締める派です。

 

 さて,今日は交通事故に遭った際,警察への届け出はどうすべきかについてお話したいと思います。

 

 交通事故に遭ったとき,警察官から人身事故として届け出るかどうか被害者に確認を求められることがあります。

 事故直後のバタバタしているときなので,深く考えないで警察にお任せしたり,必要な手続きを怠ったままにしてしまう場合は多くあります。

 ですが,交通事故に遭ってケガをした場合は,基本的には人身事故に切り替えることをおすすめさせていただいています。

 

1 人身事故扱いにするメリット

 

⑴ 実況見分調書が作成される

 人身事故扱いにした場合,警察では現場の実況見分を行い,事故の詳細を記録した実況見分調書を作成します。

 過失割合に争いがあるときなど,事故の態様が問題になったとき,実況見分調書の記載は有力な証拠となります。

 

⑵ ケガが軽く見られることを防止する

 物件事故扱いのままですと,軽い事故だと思われてしまい,長期の治療が必要な場合に疑いの目を向けられたりすることがあります。

 また,自賠責保険に治療費の請求をしたり,後遺障害の認定を求める際には,原則として警察で人身事故扱いになっていることが必要です。

 

2 人身事故扱いにするデメリット

 人身事故扱いにするデメリットとしては,自身にも過失がある場合です。

 この場合,被害者であっても,一定の運転義務違反があるとして,免許の点数の減点など不利益を被ってしまうことがあります。

 

3 人身事故への切り替え方法

 警察に人身事故として処理してもらうためには,事故によってケガをしたことを証明するために,医師の診断書を警察に提出する必要があります。

 

4 人身事故への切り替えることのできる期限

 事故直後に人身事故の届け出を出さなかった場合でも,後から診断書を提出することで人身事故に切り替えることは可能です。

 法律上,人身事故に切り替えることのできる期限というものはありません。

 ただ,あまりに時間が経過していると,警察も難色を示すことはあります。

 また,事故から時間がたって人身事故扱いとしたことで,実況見分の実施時期も事故から時間がたっている場合,実況見分調書の証拠としての価値も低く見積もらざるを得ないことがあります。

 ですので,人身事故の届け出は早めにするに越したことはありません。

 

 

 警察への届け出に限らず,交通事故においては初期対応が想像以上に大事になります。

 ですので,その対応については早期のうちに弁護士の無料相談をおすすめします。

 弁護士法人心東京駅法律事務所では交通事故に力を入れて取り組んでおります。