交通事故の慰謝料と通院日数の関係

 

交通事故に遭うと,過去に事故に遭ったことのある人から「交通事故に遭ったら通院すればするほど慰謝料がもらえる(通院しないと損する)」と言われることがあるようです。

 

保険会社は,慰謝料を支払う際,強制加入保険である自賠責保険の慰謝料の計算基準に従って計算することが多くあります。

 

自賠責保険の慰謝料の計算基準は,

① 事故日~治療終了までの通院期間×4300円

② 通院実日数×2×4300円

のいずれか安い方を慰謝料の金額とします。

 

たとえば,3カ月間で毎月5回,合計15日通院した場合は,

①90日×4300円=38万7000円

②15日×2×4300円=12万9000円

の安い方,つまり12万9000円が慰謝料となります。

 

こうしてみると,上記の計算基準では,通院回数が少ないとなんだか損しているように感じるかもしれません。

 

そのため,交通事故の被害者の中には,慰謝料で損したくないから,ムリして通院される方もいるようです。

 

ただ,上記の計算基準の関係でいえば,2日に1回以上のペースで通院しても,慰謝料がさらに増えるということはありません。

 

また,慰謝料目的で不必要な通院を繰り返した場合,慰謝料を計算する際の通院日数にカウントしてくれないばかりか,過剰な通院については治療費も支払ってもらえない可能性もあり得ます。

 

なかには,病院と共謀して通院していないのに通院したと申告するケースも後が絶ちませんが,完全な詐欺です。

 

通院は,あくまで医師と相談しながら適切な期間・頻度で通院していくことが求められます。

 

 

もっとも,通院日数の多い少ないで機械的に慰謝料を計算すると,実態に反して慰謝料が過小評価されてしまう場合もあります。

 

たとえば,事故に遭って骨折してしまい,骨がくっつくまではリハビリがスタートできないので,医師から自宅での安静を指示されているような場合などです。

 

骨折が伴うようなケースは大きな事故であることが多く,また,骨がつくまでの間は痛みが酷いことも多いはずで,平均的な交通事故のケースと比べても大きな慰謝料が認められるべきところです。

 

しかし,この場合だと,通院実日数×2×4300円で計算したわずかな慰謝料しかもらえないことになってしまいます。

 

このようなケースでは弁護士を通しての交渉が有効であることが多いです。

 

弁護士が交渉する場合,自賠責保険の基準ではなく,裁判所の認定基準にしたがって慰謝料を計算するよう交渉することができます。

 

裁判所の認定基準も通院実日数の影響はありますが,原則としては通院の期間の長短をベースに計算することとされており,多くの場合で慰謝料が増額となる可能性があります。

 

通院回数を理由に低額な慰謝料が保険会社から提案されてきた場合は,まず弁護士に相談してみることをおすすめいたします。

自動車損害賠償責任保障法(自賠法)の特殊な仕組み②

前回の続きとなります。

 

交差点での事故で当事者双方が青信号であると主張している場合,民法の大原則に従えば,双方ともに相手の過失を証明することが出来ないため,請求は双方とも否定されるはずであることを前回ご説明しました。

 

しかし,交通事故の場合,自動車の運転手等には,民法の規定とは別に,自動車損害賠償責任保障法(自賠法)の規定に基づいても,責任を負うことになります。

 

自賠法3条は以下のように定めています。

 

◎自動車損害賠償責任保障法3条

自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命または身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。

ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があったこと並びに自動車に構造上の欠陥または機能の障害がなかったことを証明したときは、この限りでない。

 

ざっくり言えば,交通事故で被害者にケガを負わせてしまった加害者が,被害者からの損害賠償請求を免れるためには,加害者の側で,自分には過失がないこと,今回の事例では自分に信号無視がなかったこと(被害者が信号無視したこと)を証明しなければいけないということに定めています。

 

したがって,どちらが青信号だったのか証明できないBは自分の無過失を証明できないため,Aに生じた損害を賠償する義務を免れることが出来ません。

 

一方,自賠法3条に基づいて賠償請求ができるのは,自賠責保険の加入対象となる車両(自動車やバイクなど)によってケガをした場合に限られます。

 

今回のケースだと,Aが乗っていたのは自賠責保険の加入対象外である自転車です。

 

そのため,Bは,ケガに対する損害の請求であっても,原則通り民法709条によって請求するほかありません。

 

その結果,どちらが信号無視かわからない場合は,Aの過失の証明ができないため,Bの請求は否定されることとなります。

 

また,自賠法3条は,自動車との事故で被害に遭った方の人的損害(ケガによる損害)についての請求についてのみ適用されます。

 

つまり,車の修理代など物的損害の請求については適用がなく,原則通り民法709条に基づいて請求するほかありません。

 

そのため,相手の過失を証明できなければ請求は否定されます。

 

【事例】のA・B双方の物的損害の請求が否定されるのは,このためです。

 

以上から,Aには人的損害の150万円の請求が認められ,一方Bは,人的損害・物的損害ともに請求は認められないことになります。

 

なお,上記の結論は,裁判所が審議を尽くしてもどっちが青信号かわからない場合です。

 

裁判所も,当事者双方の証言を聞いて,できる限りどちらの言っていることが正しいか見極めようとします。

 

信号無視に限らず,過失割合に争いあるときは,一度弁護士に相談してみるとよいでしょう。

自動車損害賠償責任保障法(自賠法)の特殊な仕組み①

 

自動車損害賠償責任保障法(自賠法)は,交通事故特有の法律です。

 

弁護士の中でも,交通事故を多く取り扱わないような弁護士なら,その仕組みや特殊な取り扱いなど,詳しく理解していないということも少なくありません。

 

今回は,その自賠法の特殊な仕組みについて,ひとつ取り上げたいと思います。

 

ただ,なかなかに説明が難しいので,少し趣向を変えて問題形式でお送りしたいと思います。

 

ゴールデンウィークでも東京はコロナウイルスで自粛要請中ですが,暇つぶしに?考えていただけば幸いです。

 

【事例】

 

Aは自転車で走行中,信号のある交差点を青信号だったので直進進入したところ,信号を無視して突っ込んできたB車に出合い頭で衝突して,ケガを負った。

 

Aは,自転車の修理代,着衣や携行品が壊れるなどの物的損害が10万円,ケガについても,治療費や休業補償,慰謝料等で200万円の損害を負った。

 

Aは合計210万円の損害をBに請求した。

 

ところが,Bは「自分は青信号で交差点に進入した。赤信号で進入したのはAだ」と主張し,逆にB車の修理代50万円と,Bも軽いケガを負ったとして,治療費等で20万円,合計70万円の損害を請求してきた。

 

交差点に目撃者や防犯カメラはなく,警察が捜査したが,どちらが信号無視したかはわからなかった。

 

この場合,A・B双方の請求はどちらが認められるのか?どちらも認められないのか?

 

 

本来,損害賠償請求の大原則を定める民法709条は,請求が認められる要件として,加害者に過失があることが必要としています。

 

そして,加害者に過失があったこと,今回のケースでは信号無視をしたかどうかを,被害者側で証明する必要があります。

 

すると,どちらが信号無視したのかわからない場合は,双方ともに相手に過失があることを証明できなかったことになり,双方の請求が否定されることになります。

 

しかし,交通事故においては,自賠法の規定が適用される結果,上記とは異なる結論が導き出されることになります。

 

結論から言うと,Aの請求は200万円認められる一方で,Bの請求は1円も認められないことになります。

 

 

・・・なぜこのような結論になるかは,次回のブログで詳しくご説明したいと思います。

自賠責保険の保険料が値下げとなります。

先日,自賠責保険の支払基準が改正されることをこのブログで取り上げましたが,この自賠責保険に加入するための保険料も,2020年の4月から変更となるようです。

 

2020年1月22日,金融庁の審議会の正式決定があり,自賠責保険の保険料は4月から平均で16・4%引き下げられることになりました。

 

沖縄県と離島を除く自家用乗用車の自賠責保険料は、2年契約の場合で,現在2万5830円だったのが2万1550円となり,4280円の値下げとなりました。軽自動車の場合は,同じく2年契約の場合で2万5070円から2万1140円となり,3930円の値下げとなりました。

 

自賠責保険は、徴収した保険料と支払われた保険金との収支を合わせるように保険料が設定されるようになっています。

 

近年,自動車の安全性が向上や自動ブレーキ装置の導入などのおかげで,交通事故の件数や保険金支払額が減っているため、それに応じて保険料も値下げとなるようです。

 

数字を見ても,2018年度の支払額は約7220億円と10年前に比べると10%以上減少しています。

 

とはいっても,弁護士のサポートが必要となるような大きな事故はまだまだ存在しているように思えます。

 

大きな事故の場合,自賠責保険の保険金上限額である120万円を上回る損害が発生することは少なくありません。

 

このときは,強制加入の自賠責保険だけではなく,任意で加入する自動車保険が頼りとなります。

 

自賠責保険料が値下げとなる一方で、任意加入の自動車保険の保険料は,今年の1月から値上げの傾向にあります。

 

東京海上や損保ジャパンといった大手保険会社の任意保険の保険料は,各社約3%前後の値上げとなっています。

 

これは,消費税が10%に引き上げられたこと、民法改正の影響により,保険金の計算方法が変わり,従来より支払う金額の増加が予想されることなどが理由とされています。

 

保険はもしもの時に備えるためのものですから,自賠責保険だけではなく,任意保険にも加入しておくことを強くオススメします。

交通事故を起こしてしまった場合の3つの責任

交通事故を起こしてしまった場合、加害者には,①民事上の責任、②行政上の責任、③刑事上の責任を負うこととなります。

 

1 民事上の責任

 

車の修理代、代車代やレッカー費用といった物的損害、ケガの治療費や休業損害、慰謝料などの人的損害など、相手が被った損害を賠償する責任をいいます。

 

前もって運転手が任意で損害賠償保険に加入していれば、多くの場合ですべての損害を保険で賄うことができます。

 

万が一任意保険に加入していない場合でも、強制加入の自賠責保険により、人的損害については120万円まで賄うことができます。

 

しかし、自賠責保険では物的損害はカバーできないため、修理代が高額になる場合でも自分で賠償しなければなりません。

 

また、大きな事故では人的損害が120万円を超えることも少なくありませんが、超えた場合は自己負担になります。

 

2 行政上の責任

 

免許の減点や、悪質な事故態様の場合は免許の停止、取消などの処分を受ける可能性があります。

 

行政上の処分は、人身事故として届け出が出された場合に処分が行われる可能性がありますが、物損事故扱いにとどまっている場合は、行政上の処分を受けずに済みます。

 

3 刑事上の責任

 

典型的なものとしては、交通事故により被害者を怪我させてしまった場合の自動車運転過失致死傷罪などが考えられます。

 

昨今では自動車事故に対しては厳罰化の傾向があり、上記の自動車運転過失致死傷罪は、懲役7年以下または罰金100万円以下と非常に重い内容となっています。

 

行政上の処分と同様、物損事故扱いにとどまる場合は、刑事上の処分は回避できます。

 

最近では、こういった刑事上の責任に関して、弁護士に刑事弁護を依頼する場合や、被害者との交渉を代行してもらう場合の費用を負担してもらう保険も、一部の保険会社から発売されています。

 

 

事故は起こさないことが一番ですが、注意して運転していたつもりでも起きてしまうのが事故でもあります。

 

万が一の場合に備えて、自動車保険にはしっかりと加入しておきましょう。

 

交通事故の治療中に再び事故に遭ってしまった場合

交通事故に遭い、まだ治療を続けている段階で、2度目の事故に遭ってしまうという方がたまにいらっしゃいます。

 

この場合、治療費はだれが支払うのか、慰謝料などの示談交渉はどうなるのかなど、複雑な問題が生じてくることがあります。

 

1 1回目と2回目とでケガをした場所が違う場合

 

たとえば、1回目の事故では、自転車に乗っているときに自動車とぶつかって腕を骨折し、腕の治療をしていたが、2回目の事故では、自動車に乗っているときに追突され、首や腰を痛めた場合です。

 

この場合、1事故目で発生した腕のケガについては、2事故目の加害者には責任はありませんし、逆に、2事故目で発生した首や腰のケガについては、1事故目の加害者には責任がありません。

 

ですので、1事故目の加害者の保険会社は腕の治療費を、2事故目の加害者の保険会社は首と腰の治療費を、それぞれ並行して支払うことになります。

 

2 1回目と2回目のケガが同じ場所の場合

 

たとえば、1事故目が追突事故で首を痛めて治療中のときに、また追突事故に遭い、だんだん良くなっていた首がまた悪化してしまった場合です。

 

この場合、首の症状は1事故目と2事故目の両方の影響があることになり、誰がその治療費を負担すべきなのか問題となります。

 

実務上は、2事故目の加害者の保険会社が引き継ぐような形で治療費の全額を負担することが多いです。

ただし、本来は1事故目の加害者にも割合的に責任があるので、2事故目の保険会社が負担した1事故目の保険会社が負担すべき治療費は、保険会社間で調整して求償することになります。

 

3 示談の際の注意点

 

2度目の事故に遭った場合、治療費等の対応が2度目の事故の保険会社に引き継がれたことで、1度目の事故の保険会社から示談をすすめられることがありますが、この際には注意が必要です。

 

後々、2度目の事故の保険会社にも損害賠償を請求した際、「損害のうちこの部分は2事故目の影響はなく、すべて1事故目が原因だから、うちは払えない」と損害の一部の支払いを拒否してくる場合があります。

 

この場合に、1事故目の保険会社に請求しようと思っても、その時点で1事故目の保険会社とすでに示談を取り交わしてしまっていた場合、解決済みであるとして、もう1事故目の保険会社に請求することは原則としてできません。

 

そのため、1事故目の保険会社と先行して示談する場合は、自分に不利益が生じないか慎重に検討する必要があります。

 

深く考えずに示談すると、取り返しのつかないことになってしまう場合がありますので、立て続けに事故に遭ってしまったというような厄介なケースでは、示談の前に弁護士に相談することをおすすめします。

後遺障害が複数認められる場合の等級認定の仕組み

交通事故に遭ってしまい、治療を続けても症状が残り完治しなかった場合、後遺障害が認定され、その等級に応じた賠償を受けることができる場合があります。

 

後遺障害はケガをした部位や症状ごとに認定されるため、ひとつの交通事故で複数の後遺障害が認定されることもあります。

 

その場合、ひとつの後遺障害が残る場合よりも、複数の後遺障害が残るほうがケガによる苦しみや日常生活の負担・不自由は大きいため、それに応じた賠償を認める必要があります。

 

そこで、後遺障害を認定する自賠責保険では、複数の後遺障害が認められる場合には一定のルールにしたがって「併合」という処理を行い、等級を繰り上げることで適切な賠償が確保されるような仕組みを設けています。

 

後遺障害が複数認められる場合の等級認定は、自動車損害賠償保障法施行令2条の3ロ~ホに定められています。

 

①第5級以上に該当する後遺障害が2つ以上ある場合

→最も重い等級から3つ繰り上げます。

 

②第8級以上に該当する後遺障害が2つ以上ある場合

→最も重い等級から2つ繰り上げます。

 

③第13級以上に該当する後遺障害が2つ以上ある場合

→最も重い等級から1つ繰り上げます。

 

④第14級の後遺障害が2つ以上ある場合

等級の繰り上げはなく、第14級のままとなります。

 

【具体例】

A、後遺障害等級4級と5級に認定した場合

→5級以上が2つ認められていることから,①のルールにより、4級から3つ繰り上がり、併合1級が認定されます。

 

B、後遺障害等級5級、8級、12級の3つが認定された場合

→8級以上が2つ認められていることから、②のルールにより、5級から2つ繰り上がり併合3級が認定されます。

ここから,3級と12級が認められているから③のルールが適用されて,さらに等級が繰り上がる…ということはありません。

 

C、後遺障害12級と14級が認められた場合

等級の繰り上がりはなく、12級のままです。

 

このほか、後遺障害の等級認定のルールはいくつか存在しており、複雑で専門的な内容のものもあります。

交通事故に遭い、複数の症状に苦しんでいる方は、後遺障害に詳しい弁護士にまずはご相談ください。

ライプニッツ係数とは

みなさんは「ライプニッツ係数」という用語をご存じでしょうか。

 

ライプニッツ係数とは、交通事故などの人身障害事件における損害賠償のなかで、長期に発生する将来の介護費用や就労機会喪失や減少による逸失利益など、時間と関係する賠償金を一時金に換算する計算方法です。

 

交通事故に遭った場合に相手に請求できる賠償内容は、すでに発生した損害だけに限られず、将来発生するであろう損害も請求できる場合があります。

 

代表的なものとしては、後遺障害が残ってしまった場合に、働く能力が下がってしまい、将来の収入が減少されることが見込まれる場合の、本来得られるはずだった収入(逸失利益)などがあります。

 

逸失利益が存在する場合に、たとえば1年間あたり100万円の減収が5年続くようなケースを想定すると、100万円×5年=500万円の賠償が請求できそうですが、裁判所はそのような考え方をとっていません。

 

なぜかというと、損害賠償請求が認められると、5年間かけて得られる500万円を前倒しでもらえることができるため、この500万円を資産運用するなどして増やすことができれば、事故に遭わなかった時と比べて、事故に遭ったことで5年後に逆に儲かってしまうという事態が生じ得ることになります。

 

裁判所は、そのような結果にならないよう、運用益も含めてトータルで500万円になるよう調整(「中間利息控除」といいます)を行うこととしており、その計算に用いるのがライプニッツ係数です。

 

ライプニッツ係数は法定利率を基準に設定されており、現在の日本の法定利率は5%なので、これを前提にライプニッツ係数は設定されています。

 

たとえば、5年のライプニッツ係数は4.3295であり、さきほどの例でいうと、100万円の減収が5年続く人の損害賠償額は、100万円×5年ではなく、100万円×4.3295=432万9500円であると裁判所は考えます。

 

私のような交通事故、特に後遺障害を数多く取り扱う弁護士だと、見慣れない人には数字の羅列にしか見えないライプニッツ係数も、3年だと2.7232、5年だと4.3295・・・という具合によく使う年数の値は暗記してしまっています。

 

ところで、2020年4月から民法改正により法定利率が変更され、法低利率に基づいて計算されるライプニッツ係数も、これに伴い一新されることとなります。

 

法定利率が下がるとライプニッツ係数は大きくなります。

 

たとえば5年のライプニッツ係数は法定利率が3%だと4.580となり、さきほどの例だと、賠償金額は432万9500円から458万円と20万以上増えることとなります。

 

従来の数字の暗記が全く役に立たなくなるのは残念ですが、交通事故被害者にとっては非常に有利な変更となっているので、新しいライプニッツ係数を武器に交通事故案件に取り組んでいきたいと思います。

自賠責保険の支払基準が改正されます。

1 自賠責保険の支払基準の変更

自賠責保険は、自動車を運転する場合に必ず加入する必要がある、強制加入の保険です。

 

交通事故に遭った場合、被害者は、この自賠責保険から、一定の支払基準に従って、慰謝料や休業補償などを受けることができます。

 

この自賠責保険の支払基準が、2020年4月1日から改正される予定です。

 

改正の理由は、2010年に行われた前回改定から10年が経ち、平均余命,物価・賃金水準,支払実態を反映する必要が生じたためです。

 

2 変更内容

支払基準の変更点は以下のとおりです。

 

①入通院慰謝料

1日4200円→4300円

 

②休業損害

1日5700円→6100円

 

③入通院中の看護料

1日4100円→4200円

 

④自宅看護料・通院看護料

1日2050円→2100円

 

また、後遺障害慰謝料の金額も13,14級を除いて増額となっています。

 

別表第1(要介護の場合)

第1級 1,600万円→1,650万円

(被扶養者がいる場合は1,800万円→1,850万円)

第2級 1,163万円→1,203万円

(被扶養者がいる場合は1,333万円→1,373万円)

 

別表第2

第1級 1,100万円→1,150万円

(被扶養者がいる場合は1,300万円→1,350万円)

第2級 958万円→998万円

(被扶養者がいる場合は1,128万円→1,168万円)

第3級 829万円→861万円

(被扶養者がいる場合は973万円→1,005万円)

第4級 712万円→737万円

第5級 599万円→618万円

第6級 498万円→512万円

第7級 409万円→419万円

第8級 324万円→331万円

第9級 245万円→249万円

第10級 187万円→190万円

第11級 135万円→136万円

第12級 93万円→94万円

 

支払基準が上方修正されたことで、手厚い保護を受けることが可能になりました。

 

ただし、自賠責保険には支払の上限額があり、傷害部分については120万円、後遺障害部分については等級に応じて金額が定められています。

 

今回の改正では上限額の変更はないので、大きな事故の場合は結局上限額に引っかかってしまい、賠償額が変わらないことがあります。

 

また、増額になったものの、弁護士基準(裁判所基準)と比べると、自賠責保険の支払基準は低額となっています。

 

そのため、保険会社が自賠責保険の基準で示談金を提案してくる場合は、弁護士が交渉すればさらに増額になる可能性がありますので、是非一度相談してみてはいかがでしょうか。

交通事故証明書の内容・入手方法

1 交通事故証明書とは

交通事故証明書とは、交通事故は発生したことを証明する公的な書類です。

 

交通事故が発生した場合、必ず警察に事故の発生を届け出なければいけません。

 

警察に届け出た後、警察による現場確認が行われ、事故の当事者や発生状況、免許証や自賠責保険の証書などが確認されます。

 

その内容を簡潔に記載したのが交通事故証明書です。

 

2 交通事故証明書の入手方法 

交通事故証明書は各都道府県にある自動車安全運転センターに申請することで入手できます。

 

ちなみに、事故を起こした場所のセンターでなくても申請を受け付けてもらうことができ、たとえば、東京にお住まいの方が地方で事故を起こした場合でも、東京のセンター宛に手続きを行うことができます。

 

申請のための書類は警察署や一部の交番にも置いてあります。

 

また、交通事故の被害者本人であれば、インターネットを通じてオンライン申請を行うこともできます。

 

そのほか、事故の当事者が任意自動車保険に加入している場合は、保険会社が事故直後に入手していることが多く、連絡すれば写しを交付してくれることもあります。

 

3 交通事故証明書の注意点

⑴ 人身事故と物件事故

交通事故証明書には、「人身事故」と「物件事故」の区別が記載されています。

 

物件事故のままだと、被害者は怪我を負っていないのではないか、あるいは怪我軽いのではないかと後々誤解されてしまうことがあります。

 

人身事故に切り替えるためには、医療機関発行の診断書を警察に提出することが必要です。

 

⑵ 当事者欄の「甲」と「乙」

交通事故証明書には事故の当事者がそれぞれ記載されていますが、加害者(過失が大きい人)が「甲」の欄に、被害者(過失が小さい人)が乙欄に記載される取り扱いになっています。

 

自分は被害者だと思っていたら、自分の名前が「甲」の欄に記載されているというような場合は注意が必要です。

 

また、同乗者は「〇の2」と記載され、複数の車両が絡む事故だと「丙」「丁」と増えていきます。

 

⑶ 証拠としての価値は必ずしも大きくない

交通事故証明書は公的な機関が作成したものであり、文書としての一定の信用性が認められます。

 

しかし、交通事故証明書の記載は極めて簡潔なもので、詳しい事故の状況や当事者の言い分、被害者の怪我の重さなどは交通事故証明書から判断することができません。

 

そのため、事故の相手と事故状況等を巡って争いになった場合は、交通事故証明書の記載だけに頼らず、様々な証拠を収集することが必要になります。

交通事故と保険金の不正請求の問題

 弁護士法人心は,突然の事故に遭ってしまった交通事故被害者の支援・救済のため,日々多くの交通事故案件を取り扱わせていただいております。

 

 しかし,ニュースや裁判例を見ると,「悪意ある被害者」というものも,どうやら一定数存在するようです。

 それが,交通事故の保険金の不正請求問題です。

 注意喚起の上でも今回のブログで取り上げたいと思います。

 

1 問題となっている不正請求の一例

 

① 通院日数の水増し

 保険金の不正請求で多く聞くケースが,通院日数の水増しです。

 保険会社が算定する交通事故の慰謝料は,通院日数を考慮して決定されています。

 そのため,被害者がもらう慰謝料を増やすために,整形外科や接骨院と結託して,通院日数を水増しして保険会社に請求するケースが存在します。

 これは,治療を行ったことにして治療代を保険会社に請求しようと考える整形外科や接骨院の方から水増しを持ちかけられるケースもあるようです。

 

② 詐病

 実際はもう回復しているのに,通院や休業を続けて補償を受け取ろうとするケースです。

 

③ 交通費の虚偽申告

 タクシー代を除き,交通費は領収書等を提出しなくても経路等を申告すれば請求することが可能です。

 これを悪用して,実際は自転車や自動車で通院したのに,公共交通機関を利用したとして運賃を請求するケースです。

 

④ 自作自演の事故

 これはかなり極端なケースではあります。

 たとえば,自損事故を起こした場合,運転手は事故を起こした本人なので,ケガをしても自賠責保険を使うことはできませんが,同乗者が怪我をした場合は,保険金の支払い対象となります。

 そこで,運転手と同乗者とで共謀して,同乗者が事故で怪我をしたことにして保険金を請求しようとするケースがあります。

 

2 不正請求の取り締まりは強化されている

 近年は,保険会社もこのような不正請求の取り締まりを強化しています。

 たとえば,①のケースでは,不審に思った保険会社が探偵に依頼して整形外科の前に張り込みさせ,通院していないのに通院したものとして請求していたことが発覚したというケースが報じられました。

 また,②のケースでは,体が痛くて仕事ができないと保険会社に話して休業補償をもらっていた被害者が,休日に元気にスポーツに興じているところをSNSに投稿して発覚したケースなどがありました。

 不正請求は驚くほど簡単に発覚してしまうものです。

 

3 不正請求は犯罪です!

 不正請求は,保険金を不正にだまし取ろうとするものであり,詐欺罪に該当します。最大で懲役10年という処罰が課せられることのある重大な犯罪です。

 不正請求が発覚した場合,上記のような刑事処罰に処される可能性があり,また,治療費含め,保険会社から受け取った一切の金銭の返還を求められることもあります。

 間違っても,不正請求に手を染めるようなことだけはしないでいただきたいと思います。

事故車両の評価損について

 東京も梅雨入りとなり,カラッとしない天気が続きますね。

 

 本日は,保険会社と揉めることも多い「評価損」についてお話したいと思います。

 

1 評価損とは

 交通事故によって車両が損傷してしまった場合,修理しても事故車扱いとなり,下取り価格が安くなるとディーラーから言われることは少なくありません。

 この車両の評価の低下という損害,いわゆる「評価損」について,加害者に賠償を求めることができる場合があります。

 

 車両を修理しても機能や外観が元通りにならなかった場合は,車両の価値が下がっていることは明らかなので,評価損は認めてもらいやすい傾向にあります。

 

 一方,修理した結果,元通りになったという場合,車両の客観的な価値は回復しているはずということになります(場合によっては,古い中古車の場合,部品を交換したらその部分は新品になるので,客観的な価値は上昇するのでは?とも考えられます)。

 すると,ディーラーの下取り価格が安いのは,ディーラーの査定が客観的な価値と比べて不当なだけで,加害者がその下落分の賠償を負うべきなのかという問題もあるかと思います。

 とはいえ,事故車扱いになった場合に中古市場価格が下がるのは社会通念化しているともいえ,裁判所や法律家は両者のバランス等も考え,主に次の3点を重視して,評価損を認めるかどうか判断する傾向にあります。

 

2 評価損の判断基準

① 修復歴がつく修理内容かどうか

 車両のフレーム等重要部分が損傷し修理した場合,修復歴が付くことになります。この「修復歴」は単なる「事故歴」とは別概念ということになります。

 単なる事故歴は表示する必要はないのに対し,修復歴の有無は,自動車業における表示に関する公正競争規約及び同中古車に関する施行規則15条に基づいて表示することになっており,この表示がある車両は,やはり中古市場においては取引価格が下がる傾向にあるので,評価損を認めてもらうための一つの材料となります。

 

② 新車購入後から交通事故に遭うまでの期間

 新車と中古車とで比べると,新車の方が評価損を認めてくれやすい傾向にあります。

 他方で,新車購入から1年以上たつと,評価損の認定率は下がる傾向にあります。

 

③ 車両の購入価格

 外国車や国産高級車など,購入金額が大きい方が評価損が認められやすい傾向にあります。

 

3 評価損として認められる金額

 評価損を金銭的に換算するのは困難なことが多く,裁判例では,修理代の10~30%程度の範疇で認める傾向が強いといえます。

 単純に下取り価格の減少分をそのまま認めることはほぼないといえます。

 

 

 評価損については,認められるかどうか,認められるとしてもいくらぐらいが妥当な金額なのかは難しい問題が多いので,一度弁護士に相談してみることをおすすめします。

交通事故に遭ったとき,警察には人身事故で届け出るべきか

 東京もだいぶ暑くなってきました。

 職業柄,クールビズといってもどこまで軽装で仕事してよいか,悩ましい季節です。

 私は,裁判所に出廷するときやお客様にお会いするときは,夏でもネクタイは締める派です。

 

 さて,今日は交通事故に遭った際,警察への届け出はどうすべきかについてお話したいと思います。

 

 交通事故に遭ったとき,警察官から人身事故として届け出るかどうか被害者に確認を求められることがあります。

 事故直後のバタバタしているときなので,深く考えないで警察にお任せしたり,必要な手続きを怠ったままにしてしまう場合は多くあります。

 ですが,交通事故に遭ってケガをした場合は,基本的には人身事故に切り替えることをおすすめさせていただいています。

 

1 人身事故扱いにするメリット

 

⑴ 実況見分調書が作成される

 人身事故扱いにした場合,警察では現場の実況見分を行い,事故の詳細を記録した実況見分調書を作成します。

 過失割合に争いがあるときなど,事故の態様が問題になったとき,実況見分調書の記載は有力な証拠となります。

 

⑵ ケガが軽く見られることを防止する

 物件事故扱いのままですと,軽い事故だと思われてしまい,長期の治療が必要な場合に疑いの目を向けられたりすることがあります。

 また,自賠責保険に治療費の請求をしたり,後遺障害の認定を求める際には,原則として警察で人身事故扱いになっていることが必要です。

 

2 人身事故扱いにするデメリット

 人身事故扱いにするデメリットとしては,自身にも過失がある場合です。

 この場合,被害者であっても,一定の運転義務違反があるとして,免許の点数の減点など不利益を被ってしまうことがあります。

 

3 人身事故への切り替え方法

 警察に人身事故として処理してもらうためには,事故によってケガをしたことを証明するために,医師の診断書を警察に提出する必要があります。

 

4 人身事故への切り替えることのできる期限

 事故直後に人身事故の届け出を出さなかった場合でも,後から診断書を提出することで人身事故に切り替えることは可能です。

 法律上,人身事故に切り替えることのできる期限というものはありません。

 ただ,あまりに時間が経過していると,警察も難色を示すことはあります。

 また,事故から時間がたって人身事故扱いとしたことで,実況見分の実施時期も事故から時間がたっている場合,実況見分調書の証拠としての価値も低く見積もらざるを得ないことがあります。

 ですので,人身事故の届け出は早めにするに越したことはありません。

 

 

 警察への届け出に限らず,交通事故においては初期対応が想像以上に大事になります。

 ですので,その対応については早期のうちに弁護士の無料相談をおすすめします。

 弁護士法人心東京駅法律事務所では交通事故に力を入れて取り組んでおります。

交通事故に関する交通費の取り扱い

 

 

今回は,交通事故の被害に派生して発生する,通院等にかかる交通費の取り扱いについてお話したいと思います。

 

 

交通事故によりケガを負った場合,病院や接骨院に通院して治療を続けることが必要不可欠となります。

近所の病院であればいいですが,自宅から少し離れたところに通院する場合,交通費がかかってしまうこともあります。

この場合でも,通院のために必要な交通費は,相手方保険会社に請求することが可能です。

 

ただし,相手方保険会社に請求できるのは,交通費を支出することが必要かつ相当であることが条件となります。

そのため,後述するタクシー代の要否や,遠回りになるようなルートで通院した場合,理由もなく遠隔地の病院に通院している場合(例えば,地方に住んでいるのに東京の病院に通う場合など)には, 必要性・相当性が疑われることがあるので注意が必要です。

 

 

①バスや電車などの公共交通機関を利用した場合

 

バスや電車などの公共交通機関を利用して通院した場合も,実費を請求することができます。

どのような経路で通院したかを申告すれば,通常は領収書の提出やICカードの履歴の提出まで求められることはありません。

 

②自家用車を利用した場合

 

自家用車で通院をした場合でも,ガソリン代として,1キロメートルあたり15円を請求することが可能です。

 

また,有料駐車場を利用し,駐車場代が発生する場合には,実費を請求することができます。

ただし,その場合は相手方保険会社から駐車場代の領収書の提出を求められるので,必ず領収書を保管しておく必要があります。

 

③タクシーを利用した場合

 

タクシーを利用して通院した場合も交通費として請求が可能ですが,タクシーを利用して通院する必要性・相当性がなければ,領収書があっても認めてくれないことがあります。

 

たとえば,足を骨折していてバスや電車の乗り降りができないようなケースなどは,比較的タクシー利用が認めてもらいやすいです。

 

一方,ケガが軽い場合や,腕を骨折してしまったがそ他は無事で歩行に支障がない場合,事故から長期間が立ってもうだいぶ身体が回復しているはずなのにタクシーを利用している場合などは,タクシー代の支払いは認められない可能性が高いといえます。

 

 

また,通院以外の交通費についても認めてられる可能性があります。

 

④通勤のための交通費

 

たとえば,普段は自転車で通勤していた人が,交通事故に遭ったことで体への負担が大きくなり,電車やバスでの通勤を余儀なくされる場合があります。

 

この場合,必要性・相当性のある交通費の支出であるとして,相手方保険会社に請求できる可能性があります。

 

⑤家族の通院費

 

ケガをした本人以外で,家族が通院に付き添うために交通費が発生することがあります。

 

家族が通院に付き添う必要がある場合,たとえば,ケガをした本人が児童や高齢者である場合やけがが重傷で付き添って身の回りの世話をする必要がある場合などは,家族の交通費が認められる可能性があります。

 

一方,単なるお見舞いのために病院を訪れるような場合には,なかなか認めてもらえない傾向にあります。

 

⑥警察署に行くための交通費

 

警察署で事情聴取に応じたり,事故に関する届出を出しに行く際などに交通費が発生することがあります。

 

確かに事故さえなければ被らなくて済むはずの支出ではありますが,これは交通事故の当事者に課せられた義務であるため,損害賠償の対象とはなりません。

 

 

保険会社は,公共交通機関の料金やガソリン代は比較的緩やかに交通費を認めてくれますが,タクシー代や通院以外にかかった交通費はなかなか認めてくれず,トラブルになることも少なくありません。

 

交通事故に関する交通費のことでお悩みやお困りになった場合は,一度弁護士に相談してみることをおすすめします。

交通事故治療の通院時の注意点

 

 こんにちは。東京の弁護士の伊藤です。

 

 今回は,交通事故に遭った際の通院時の注意点についてお話いたします。

 

 どうやら,交通事故に詳しくない弁護士事務所では,交通事故に遭った被害者に対して,「保険会社と医師の言う通りに通院しておけば大丈夫」という,いい加減なアドバイスをするところが少なくないようです。

 そして,言われるがままに漫然と通院した結果,十分な治療や賠償が受けられずに困っているという相談が結構な頻度で寄せられます。

 

 そのため,最低限の注意点をお伝えさせていただければと思います。

 

1 事故直後すぐに病院に行くこと

 まず,事故に遭った場合は,すぐに病院や整形外科に通うことが必要不可欠となります。

 事故から病院での初診が1週間以上空いてしまうと,そのケガが本当に交通事故によるものかわからなくなってしまい,ケガの補償がまったくもらえなくなってしまうこともあります。

 仮に交通事故によるケガであると認めてもらったとしても,「1週間病院に行かなくても我慢できるケガなんだ」と症状を軽く見られてしまうことは間違いありません。

 

2 医師にはしっかり症状を伝えること

 医師には,自分の症状を正確に伝え,診断書やカルテにしっかり記録してもらいましょう。

 交通事故のケガは,一般的には事故直後が症状が一番重いはずと考えられています。

 そのため,事故直後に訴えていなかった痛みをあとになって医師に伝えても,事故と関係なく発生したものだと判断されてしまうことがあります。

 また,痛みのある箇所を伝え忘れると,医師は完治したと思い,治療の必要はもうないと誤解してしまうおそれがあります。

 

3 通院先について

 基本的には,整形外科のほか,接骨院(整骨院)などに通院して治療を行うこととなります。

 これらは,国家資格である医師や柔道整復師による治療となるため,治療の必要性が認められる限り,原則として治療費の支払いの対象となります。

 一方,民間療法である整体やカイロプラクティックなどは,一部例外を除いて治療費の支払いの対象とならないことがほとんどなので,注意が必要です。

 

4 通院のペース

 整形外科の医師の診察は,最低でも月に1回,30日期間を空けないように受診することが非常に重要です。

 保険会社は,医師の書く診断書をもとに被害者の身体の状態を把握しています。

 医師の診断がないと,被害者のケガが治ったのか,今後も治療を続ける必要があるのかわからなくなってしまい,以降の治療費は,因果関係が不明であるとして支払いを拒まれてしまう危険が高まります。

 

5 精密検査の重要性

 多くの場合ではレントゲン程度は撮りますが,それに加えて,CTやMRIなどの精密検査をはやめに受けておくことをおすすめします。

 治療の方針を決めるうえでも役立ちますし,「医師が精密検査は必要ないと判断する程度の軽いケガだ」という誤解を招かないためにも重要となります。

 

 

 通院の際の注意点をしっかり押さえて通院した人と,そうでない人では,治療を受けられる期間や最終的にもらえる賠償金の金額が大きく変わってくることも少なくありません。

 

 そのため,早い段階から弁護士に相談して具体的なアドバイスを受けておくことが大事です。

交通事故紛争処理センターの利用

 

 今年もよろしくお願いいたします。

 東京の弁護士の伊藤です。

 

 今回は交通事故の賠償問題の解決方法についてお話させていただきたいと思います。

 

 交通事故の賠償問題は,保険会社と話し合い,和解によって解決するケースが最も多く,かつ,それが一番望ましいものではあります。

 

 ただ,どうしても当事者のどちらかが話し合いでは納得いかず,和解できないことがあります。

 

 その場合に,裁判を起こして,裁判所の判断を仰ぐことも一つの選択肢です。

 

 しかし,そのほかの有力な解決手段として,交通事故紛争処理センターに和解のあっせんを申し立てるという方法があります。

 

 交通事故紛争処理センターは,嘱託弁護士が和解のあっせんを行ってくれる裁判外紛争解決機関(ADR機関)のひとつです。

 

 紛争処理センターの手続きは,裁判による解決とはまた異なるメリットがありますので,今回はそのメリット・デメリットを少しご説明させていただきたいと思います。

 

 

第1 紛争処理センターを利用するメリット

 

1 早期解決が期待できる

 裁判になった場合,通常6カ月程度,長期化した場合は1年以上解決までかかってしまうことも少なくありません。

 

 紛争処理センターを利用する場合,7割以上が3回の期日までに和解が成立しており,裁判と比べると早期解決が期待できます。

 

2 紛争処理センターの審査結果(裁定)は保険会社を拘束する

 紛争処理センターにおいては,基本的には和解による解決を目指しますが,当事者のどちらかが納得できず合意に至らない場合,被害者が審査を申し立てると,紛争処理センターに裁定案を下してもらうことができます。

 

 紛争処理センターと協定を結んでいる保険会社や共済組合は,この裁定案に拘束され,被害者が裁定案を受け入れれば,保険会社は裁定案に従って賠償する義務を負います。

 

 紛争処理センターと協定を結んでいるのは以下の保険会社,共済組合等になります。

  ①日本損害保険協会に加盟する保険会社

  ②外国損害保険協会に加盟する保険会社

  ③全国共済農業協同組合連合会(JA共済連)

  ④全国労働者共済生活協同組合連合会(全労済)

  ⑤全国トラック交通共済協同組合連合会(交協連)

  ⑥全国自動車共済協同組合連合会(全自共)

  ⑦全日本火災共済協同組合連合会(日火連)

 

3 治療費の認定が裁判所よりも緩やかな傾向にある

 近年では,交通事故患者の治療費について,裁判所は治療の必要性を厳格に判断する傾向が強くなっています。

 

 そのため,保険会社が医療機関にすでに支払った治療費の一部についても,本当は保険会社が支払う義務はなかったと判断することが増えています。

 

 この場合,支払う義務のなかった治療費は,保険会社の過払いという扱いとなり,最終的な賠償金額から過払い分を差し引くという,被害者にとって不利な取り扱いがなされます。

 

 一方,紛争処理センターは,治療費については裁判所と比べると緩やかに必要性を認める傾向にあります。

 

 そのため,治療費の必要性が争われることが予想されるケースでは,紛争処理センターに和解のあっせんを申したてる方が有利なことがあります。

 

 

第2 デメリット

 一方で,紛争処理センターの利用が効果的でないケースもあります。

 

1 遅延損害金等を認めてくれない

 裁判を行った場合,遅延損害金や弁護士費用は,損害の一部として賠償金額に含まれることになります。

 

 一方で,紛争処理センターでの解決の場合,遅延損害金や弁護士費用は,被害者側で譲歩すべきものという取り扱いが定着しています。

 

 損害額が大きく,遅延損害金等もそれに伴って大きくなることが予想されるケースでは,裁判による解決を目指した方がより大きな賠償額を得られる可能性があります。

 

2 相手方によっては裁定案の拘束力が及ばない場合がある

 紛争処理センターの出す裁定案の拘束力があるのは,上述の各保険会社や共済組合に限られます。

 

 それ以外の共済や加害者本人を相手にする場合,裁定案の拘束力が及ばないため,相手に和解を拒否されてしまうと解決することができなくなり,結局裁判を起こさないといけなくなることもあります。

 

3 自動車やバイクの絡む事故でないといけない

 自転車対歩行者の事故や自転車同士の事故では,紛争処理センターの手続きの対象とならないので注意が必要です。

 

 このように,交通事故の解決手段は裁判だけではなく,また,その方法によりメリットデメリットがございます。

 事案に応じて,最も有利な解決が期待できる手段は何かを戦略的に判断していくことが重要になります。

主婦の休業損害

 こんにちは。

 東京の弁護士の伊藤です。

 

 前回は自営業者の休業損害についてお話ししましたが,今回も同じく休業損害で問題となることの多い,主婦の休業損害についてお話させていただきたいと思います。

 

1 主婦にも休業損害は発生する

 主婦が交通事故に遭ってしまった場合,家事ができなくなったとしても現実に金銭的な減収はないので,休業損害は発生しないと思われている方もいらっしゃいます。

 しかし,主婦の家事労働には,家族が外で働くことをサポートする「内助の功」があります。

 また,仮に主婦の家事を他人に依頼するのであれば相当の対価を要するはずです。

 そのため,主婦が交通事故に遭った場合,その影響でできなくなった家事労働には財産的価値があり,これを休業損害を請求することが可能です。

 

2 主婦の休業損害の計算方法

 主婦の休業損害は,日額と休業日数を掛け合わせて計算するのが基本となります。

 ただし,日額と休業日数の考え方は自賠責保険の基準と裁判所の基準とで考え方が異なっています。

 

⑴ 自賠責保険の基準

 自賠責保険の基準では,日額は1日当たり5700円で計算します。

 休業日数は,原則として通院した日数で計算します。

 

⑵ 裁判所の基準

 裁判所の基準では,女性の全年齢の平均賃金を365日で割ったものを日額とするのが一般的です。

 平成30年11月時点で公表されている最新の統計に基づくと,日額は1万0351円となります。

 休業した期間は,事故の大きさや症状の重さを考慮して認定されます。

 また,家事への支障は症状が回復するにしたがって減少していくと考えるのが自然ですので,その点も考慮されます。

 たとえば,事故直後1週間は100%の家事への支障があり,その後の1か月は50%,さらにその後の1か月は25%・・・と次第に影響は少なくなっていくと考えることがあります。

 金額の計算でもその割合に応じて認定することが多いです。

 

3 兼業主婦の場合

 最近では主婦として家事をしながら,外で仕事をして給与所得を得ている人も大勢いらっしゃいます。

 このような兼業主婦の場合でも,主婦としての休業損害を受け取ることは可能です。

 

 ただし,主婦としての休業損害と給与所得者としての休業損害を両方受け取るということはできないという取り扱いになっています。

 

 たとえば,福岡地裁平成26年2月13日判決は,

 

 「このような兼業主婦の場合,専業主婦についても,女性労働者の平均賃金額を基礎として,家事労働に従事できなかった期間について休業損害が認められることとの均衡等に鑑み,現実の収入額と女性労働者の平均賃金額のいずれか高い方を基礎収入とするのが相当であると解される。」

 

 と判断しています。

 

4 適切な賠償金を受け取るために

 主婦の休業損害は被害者の方がもらえると思っていないケースが多くあります。

 そして,相手の保険会社も被害者に対して何も伝えないまま,休業損害が計算に入っていない示談案を提案してくることが少なくありません。

 本来もらえるべき賠償金がもらえなくなってしまうということにならないよう,特に注意していただきたいと思います。

自営業者の休業損害

 こんにちは。

 東京の弁護士の伊藤です。

 

 今回は,交通事故で仕事をお休みされた場合の休業損害,とくにその中でも問題になることの多い自営業者の場合についてお話ししようと思います。

 

 交通事故の影響でお仕事をお休みされた場合,その分の収入が減ってしまった場合は,交通事故の影響で休業を余儀なくされたと認められる限りで,相手方保険会社に対して,賠償を請求することができます。

 

 一般的なサラリーマンの場合は,会社に「休業損害証明書」を発行してもらい,休んだ日数と事故前の収入状況を証明してもらえます。

 そのため,休業損害の請求比較的容易といえます。

 

 しかし,自営業者の場合,サラリーマンのように会社に休業損害証明書を発行してもらうことができないので,収入の減少を証明するのが難しいことが少なくありません。

 

 以下では自営業者の休業損害の計算方法について,実務上採用されることの多い考え方をいくつか紹介いたします。

 

1 事故前後の収入を比べて減収している金額を休業損害とみなす方法

 単純に事故前後の収入を比べて減収になった分を休業損害とする考え方です。

 一見すると,この方法が一番収入の減少を正確に表しているように思えます。

 しかし,実際は経営が順調で,休業したにもかかわらず事故前より収入が増加しているケースもあったりして,その場合は減収が数字の上ではないことになってしまいます。

 また,元々自営業は収入の上下があるもので,減収があったとしても交通事故による休業の影響なのか争われることも少なくありません。

 

2 事故前年度の確定申告上の所得を365日で割り,休業日数をかける方法

 経験上,実務では最も多く使われている計算方法であると思われます。

 この計算方法では,たとえば事故前年度の確定申告上の所得が365万円,休業した期間が30日だとすると,所得365万円÷365日×休業日数30日=30万円が休業損害として認められます。

 しかし,この方法は節税対策を行った結果所得が低く抑えている場合に,休業損害が実収入と比べて過少に評価されてしまう欠点があります。

 また,事故前年度の経営が不振でたまたまその年だけ所得が減少していた場合や,確定申告をしていない場合(申告漏れやサラリーマンから独立して間もない場合など)に不都合が生じることがあります。

 

 上記の不都合を回避するために,弁護士が交渉する場合は,いろいろな対策を講じます。

 たとえば,確定申告上所得が低く申告されているケースでは,経費のうち休業していても発生するもの(固定費)も損害に含めるよう交渉することがあります。

 また,事故前年度だけ収入が下がっている場合は,過去数年間の収入の平均所得をベースに計算するよう求めたり,確定申告が未了の場合はそれに代えて銀行口座の出入金記録を提出して所得を証明することが考えられます。

 

 自営業の休業損害は,理論上も交渉上も難しいポイントが多くありますので,交通事故に遭った自営業者でお仕事をお休みされた方は,まず一度弁護士に相談することをお勧めいたします。

交通事故の治療と「症状固定」

 こんにちは。 東京の弁護士の伊藤です。

 

 今回は,交通事故の治療や賠償に大きく関係してくる「症状固定」についてお話ししようと思います。

 

1 「症状固定」とは

 症状固定とは、交通事故による怪我の症状が変化しなくなった状態、言い換えれば、治療をしても症状が改善されなくなる状態をいいます。

 

 これには、治療を受けると一旦症状が緩和されるが、しばらくするとまた元の状態に戻ってしまうような一進一退の状況も含みます。

 

2 症状固定となった場合の交通事故治療への影響

 症状固定となった場合、それ以降の治療費や通院のための交通費、休業損害の賠償は、加害者側に請求することができなくなります。

 

 これは、治療費等は治療の必要性がある場合に相手に請求できるところ、治療を行っても症状が改善されない状態であるなら、治療を行っても行わなくても変わらないのであるから、その治療の必要性が認められない,と考えられるからです。

 

 症状固定となった以降でも、怪我の痛みを抑えるために通院することは妨げられるものではありませんが、その治療費はすべて自己負担になります。

 

 このように、症状固定の時期によって、治療費等を相手にどこまで請求できるかという範囲が変わってくるため、症状固定の時期がいつであるかは交通事故において非常に重要な問題となります。

 

3 症状固定の時期は誰が決めるのか

 症状固定の時期は、最終的には裁判官が判断するものではありますが、交渉段階では、交通事故の当事者が決めることができます。

 

 ただし、加害者側の保険会社は、前述のとおり症状固定の時期によって賠償しなければならない治療費等の金額が変わってくるため、できるだけ早い時期に症状固定とするよう働きかけてきます。

 

 場合によっては、まだ痛みが残っていて治療を続けたいのに、症状固定であるとして、手続きを進めようとしてくることもあります。

 

4 症状固定時期は医師の判断が尊重される  

 症状固定時期を判断するにあたっては、基本的には医学的な専門知識を有する医師の判断が尊重されます。

 

 症状固定時期をめぐって争いになっている場合は、まず医師の判断を確認して、まだ症状固定には至っていないと判断してもらうことが非常に重要です。

 

 そのためには、普段の診察から、医師に対してまだ痛みが残っていること、そして少しづつだが治療により改善していることをしっかり伝えて、医師に自分の症状を正確に把握してもらうよう努めることも大事になります。

 交通事故の症状固定についてはこちらもご覧ください。

交通事故と過失割合

 東京の弁護士の伊藤です。

 

 本日は交通事故でしばしば問題となる過失割合についてお話したいと思います。

 

 1 過失割合とは

 過失割合とは、簡単にいえば、交通事故が起きてしまった原因について、どっちがどれだけ悪いかを決めるものです。

 過失割合に応じて、交通事故によって生じた損害を誰が負担すべきかも変わってきます。

 例えば、被害者に2割の過失が認められる場合は、ケガの治療費や車の修理費も2割については被害者自ら負担すべきということになりますし、逆に加害者側のケガの治療費や車の修理費も、2割分は被害者であっても支払わなければならないということになります。

 

 2 過失割合の決め方

 過失割合は、示談段階においては、当事者双方の話し合いで決定することとなります。

 そのため、この段階では当事者が納得しなければ過失割合を決めることはできません。

 逆に言えば、お互いが納得さえすれば、過失割合は自由に決めることができるとも言えます。

 また、話し合いで決まらず、裁判となってしまった場合は、裁判官が最終的に判断して決定されます。

 事故直後、現場検証などで警察官が過失割合について言及することがありますが、この警察官の判断で決まるわけではありません(もちろん、当事者が過失割合を決めるうえでのひとつの参考にはなり得ます。)

 

 3 過失割合の判断基準

 示談段階では、合意さえあれば過失割合は自由に決めることができるとはいえ、その判断基準がわからなければ、本当にその過失割合が正しいのか納得できないというケースは多いと思います。

 そこで、実務家の間では、別冊判例タイムズ38号(通称「緑の本」)という過去の裁判例をもとにした過失割合の目安集のようなものを参照して、適切な過失割合を検討するのが主流となっています。

 保険会社も、この基準を目安として過失割合を提案してくることが多い傾向にあります。

 

 4 過失割合を有利に変えるために

 もっとも、上述の目安というのはあくまで目安に過ぎません。

 実際の交通事故の態様は千差万別ですから、基準は参考にしつつも、具体的な事情を示したうえで、被害者が適切だと考える過失割合を主張していくことが重要となります。

 

 5 過失割合を争うための証拠となるもの

 過失割合を争う場合は、客観的な資料があれば、有力な交渉材料になり得ます。

 たとえば、ドライブレコーダーや、事故後に警察官が作成した実況見分調書、事故の車両の損傷状況などです。

 ただし、実況見分調書は弁護士でなければ取り寄せることは困難です。

 また、車両の損傷状況なども、間接的に事故状況を推測させるものなので、説得的に主張する必要があります。

 

 過失割合が問題となるケースは一度弁護士に相談して、相手方の提案する過失割合が適切かどうか、相手の主張をくつがえすだけの交渉材料を集められるかどうかを確認するとよいでしょう。交通事故の過失割合についてはこちらもご覧ください。